11月24日の日経MJの一面に、良品計画が展開する「無印良品」の次世代に向けた社内改革に関する記事が掲載されており、興味深く読ませていただきました。
根強いファンを着々と確立し、近年のしまむら流業務改革も功を奏し、09年2月期に売上高1724億円、純利益104億円の過去最高を見込む「無印良品」。
創業当時のキャッチフレーズであった 「わけあって、安い」 は業種別カテゴリーキラーであるニトリ(家具)やユニクロ(アパレル)の躍進によって死語になりつつあり、いまとなっては 「ずっと良い値。」 で定番品の価格を両社の価格並みに維持しながら、「機能」「デザイン」に磨きをかけている真っ最中です。
以下、記事にある同社の取り組みを簡単にまとめてみます。
○同社の商品機能改善力の強みのひとつは、生活者の部屋を実際に訪問し、実際の生活の中での商品の使い勝手を観察した上で開発をする、「オブザベーション」(※1)にありますが、最近では、それにネット会員190万人を対象にしたアンケートでその仮説を再確認した上で、商品化をすることによって開発精度を高めているとのこと。
○かつては、すべて外部委託していた商品のデザイン。04年から中途採用を始めた社内デザイナーが成果を出すようになり、一目で無印と分かる新製品をタイムリーに店頭に投入できるようになった。
○価格だけでなく、質の高い商品が受け入れられるかどうかを新業態「MUJI」で実験中。「無印良品」の3倍の値段になるが、オリジナルの半値以下となるトーネット社と共同開発した4万円前後のイスなども取り扱う。
この中で、最近、私が業界で関心を持っている動向の一つに、2番目にあるような、経験のあるデザイナーを中途採用し、社内に抱え、本格的に提案型商品のデザインをしようというファッションSPA(製造小売業)が増えていることがあります。
この話、業界外の方には意外かもしれませんが、日本のファッション、特に小売企業は、デザイン機能を外部に委託しているケースが少なくありません。本来、ファッション企業ってものはデザインが肝のはずなのに、デザイナーは実際、一年中、デザインを描いているわけではないので、悲しいかな、その人件費を固定経費にしたくなかった、あるいは、デザインソフトは商品仕入れ値に込みにして買えばよい、というのが多くの企業の考え方にあったのではないかと思います。
今、ようやく、そういった社内デザイナー本格採用の動きが出ている背景、刺激になっていることの最大要因には、IKEA、H&M、ZARAのようなグローバル企業が日本に進出、拡大していることに対する日本企業の危機感があると思います。
それらのグローバル企業は、外部にもデザイン委託する場合もありますが、社内に100人超のデザイナーを抱え、上層トレンドマーケットのコピー商品やトレードオフ商品(最低限の機能に絞って安く作られた商品)にとどまらず、一方で、トレンドマーケットに遅れることなく、同じタイミング、プロセスでデザイン活動を行うことによって、低価格でデザイン性の高い商品をタイムリーにマーケットに送り出す、世界的流通革命を起こしており、今、その波が日本にも押し寄せて来たというわけです。
今回のエントリーのタイトル、「価格をデザインせよ」は、かつて読んで感銘を受けたIKEA(イケア)について書かれた本 「IKEA超巨大小売業成功の秘訣」(リューガー・ユングブルート著;日本経済新聞出版社) にあった
成功の秘訣1-価格 「まず値段をデザインしろ」 からつけさせてもらったものです。
この本によると、IKEAでは、商品の開発にあたり、まず、生活者に支持される、あるいは業界がびっくりするような販売価格を決め、その後、実際のデザインにとりかかるのが常識になっているそうです。
デザイナー自身が、その価格を実現するためには、どんな素材を使って、どんなデザインで、どこでどうやって作るかを考えるところから始める、というわけです。
どこにでもありそうな値段でいいものを作ることはどこの企業でもできるわけで、デザイナー自身が、単に妥協して魅力のない安物を作るのではなく、コストマインドをしっかり持ち、極限まで「価格をデザインして」商品化するというのは強いなぁと思います。
日本では、結構、分業が進み過ぎていて、デザインする人とコストを考える人が違う場合が多いので、思い通りの商品が出来上がらなかったり、思い通りになったけど、高くなりすぎて、売れなかったり、という耳の痛い話が多いですからね。
そんなグローバル企業との競争は、これまでの切った貼ったの小手先のテクニックだけではなく、腰を据えた取組が必要なのだな、と痛感させられる次第です。
※この本は、IKEAだけに限らず、H&M、ZARAのようなグローバルファッションSPA企業の発想、戦略を知る上でお勧めします。
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