海外生産におけるCSR(企業の社会的責任)問題
先週の記事になりますが、1月1日の繊研新聞に、今年あたりはそろそろ関心が高まるのではないかと思われる、企業が海外生産する際の委託工場に対するCSR(企業の社会的責任)問題に関する専門家の方のインタビュー記事が掲載されていました。
ここ数年、食の安全は日本でも大きな関心となりましたが、安くて高付加価値のファッション商品がいったい、どんなところで、どんな風に作られているのか、少なくとも、児童労働や、不法移民、違法な低賃金や長時間労働といった過酷で人権無視の労働条件の上に成り立ってはいないか?
日本より小売業のグローバルなソーシング(商品調達)活動が進んでいて、人権問題にシビアな欧米では極めて関心の高い問題であります。
10年も前に商社で海外生産に携わっていた際、アジアやアメリカの縫製工場に行くと、欧米ファッションチェーンから視察員が来ている、という話をよく聞かされました。
また、海外のファッションビジネス系のニュースを読んでいると、古くはリーバイス、ナイキ、GAPあたりが、最近では、H&M、TOPSHOP、PRIMARKなどの発展途上国でローコストで生産しているファストファッション系企業がメディアや消費者団体から疑いをかけられたり、突き上げをくらっていたり、それに対して防御策を強化しているなんて話をよく目にするものです。いわゆるSWEATSHOP(スウェットショップ=強制労働工場)問題というやつですね。
日本の場合は、最近でこそ、フェアトレードという言葉が静かに話題に上り始めましたが、まだまだ、小売業を筆頭に、販売商品の責任は仕入業者任せ、商社任せという体質なのではないかなと思います。原産国やカシミヤ混紡率の偽装の問題、並行輸入とニセモノの区別がつかない問題も根っこは同じようなところにある気がしますね。
ちなみに、それらの判例の多くは、確かに仕入れ業者も悪いですが、半分はそれを調べもせず、販売して生活者に迷惑をかけた小売業の責任として、小売業も裁かれているのが現実です。小売業にとっては裁かれるうんぬんより、生活者の信頼を失うことの方がダメージが大きいです。
前説が長くなりましたが、記事によると、世界のCSRは
第1段階 取締を徹底して、年齢偽装や不正を摘発する
第2段階 発注する企業が一緒になってなって生産性向上に取り組みサプライヤーを育てる
第3段階 生産性向上により従業員の待遇を改善し、人材獲得、品質維持・向上を目指す
というステップがあるようですが、この専門家の方は、日本企業はようやく第1段階の認識を始めたばかりではないかとのことでした。
そのきっかけも、08年くらいから欧米のクライアントが日本企業の発注工場に監査員を入れることを求め始めたからだそうで、09年はその傾向がますます強まりそう、と、これもまた、日本の体質を変えるきっかけは「黒船」なんだなぁと感じたものです。
海外の委託工場に対して、パートナーシップをもって末長く安定供給を望むのなら、やはり第3段階を目指したいところですよね。
それこそグローバル企業の真の競争力だと思います。
いつもお読み頂きありがとうございます。
毎日1回、クリックで応援お願いします。
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
>>>人気blogランキング に参加しています。
【第8位】↑up (09.01.06現在)
関連エントリー-アパレル生産でも今後避けては通れない?人権問題
関連エントリー-社会的責任投資(SRI)が拡大
| Permalink | 0
Comments
いつも拝見しています。
今回は特に興味深い記事でした。
子供が過酷な労働をしている工場を放置しているようでは
この先うまくいくはずがありません。
国内でも、働く働かせるという中身が問われていると思います。
これからも、そうした記事をアップしてください。
Posted by: タッシー | January 09, 2009 03:01 PM
タッシーさん
コメントありがとうございました。
世界の中での日本企業の役割も問われる時代、目をむけなければならないことも多くなると思います。
今年もよろしくお願いします。
Posted by: taka | January 10, 2009 05:18 PM