「絞り込み」の功罪
最近、業界新聞を読んでいると、多くのアパレル企業のトップの方が厳しい市況の中、「商品型数の絞り込み」を口にされているのを目にします。型数を絞り込めば、確かに品番あたりの発注ロットが大きくなり、値入もよくなるし、在庫管理もしやすくなり、売れない時代に、いかに効率を高めて、少なくとも利益だけは確保しようという意図は理解できますが、指示を受けた現場が上手に運用しないと少々危険な感じがしてしまいます。
経験的に、ファッションリテイルビジネスにおいて、不振事業(ブランド)、恒常的不振(赤字)店の絞り込み(リストラ)は当然だと思いますが、店頭の品揃えにおいては、絞り込み=「引き算」をした時、すなわち何かを切り捨てる一方で、別の何かを増やさない限り、客数、売上は必然的に減るものと思っています。ゆえに、品揃えは維持、または増やしながら、いかに上手に管理、コントロールするかの腕を磨くべきだと考えます。それが同質化時代の生き方ではないかと・・・。
昨年12月のユニクロの既存店売上前年対比は、またもや業界他社が軒並み9がけの中、ひとり二桁増を上げ、今期売上予測の上方修正を発表しましたが、同社の店頭を見ていると、実に他社の数倍「明るい」ですね。
とびきりカラー数が豊富なのは皆さんお気づきだと思いますが、業務的に言うと、多くのアパレル企業が型数絞り込みの掛け声のもと、SKU数(カラー、サイズ別といった最小管理単位)を減らしているのに対し、ユニクロは、カラー数増加によりSKU数は大幅に増えているのですよね。
しかも業界他社がコンサバなダークカラー中心で、在庫リスクを嫌って、さし色(さほど売れなくても目を引くためにつけるシーズン流行色)を最小限にとどめているのに対し、ユニクロの流行をおさえての鮮やかで豊富なカラー展開はとても対照的といわざるを得ません。(残念ながら、売れ筋の中心サイズ抜けを放置している様はまだ改善されていないようですが・・・)
もともとユニクロは、SKU数が少ないですから、いまでも他のアパレルチェーンの方がまだまだSKU数は多いかもしれません。 しかし、顧客から見た時
○ ユニクロ・・・以前より品ぞろえが豊富になったなぁ
○ 多くのアパレル企業・・・以前より物足りなくなって、つまらなくなったなぁ
と見られてしまうのではないか、そんなところにも敏感なお客さんがユニクロに流れる要因があるのではないかなと思いながら店頭を歩いて回りました。
話は逸れますが、先日、すっかり話題に上らなくなった、ユニクロの廉価版、g.u(ジーユー)の店頭を久し振りに、見て来ました。
ユニクロ同様、とてもカラフルで、デザインはユニクロより少し凝っていて、なおかつ安い(ユニクロが1990円くらいのものは1490円)。面(ツラ)も以前のように安っぽくありませんね。おっ、これいいなぁと手にとってしまう商品もちらほらあって・・・
ただ個人的には、アクリルやポリエステルやTC(ポリエステルの混率が高い綿混)の素材が肌に合わないもので、すっかり大人サイズになった小5の娘用に、数点試し買いをしながら、g.u(ジーユー)は、しばらく見ないうちにだいぶ進化したなぁと感じたものです。芸能人、高橋ジョージ、三船美佳夫妻を起用したプロモーションも始めてますね。
当初、知名度も低く、量販系のいわゆる「1000円玉メーカー」から調達したのではないかと思うような品揃え、結果、ひどい業績だったので、最近ではメディアではほとんど取り上げられていませんでしたが、こちらも努力、改善、進化の跡がしっかり見られます。なんか、商品の見せ方とかプロモーションの工夫で、浮上の芽も見えてきたような気がしました。きっと、今後もユニクロでうまく行った成功事例を応用させて行くことでしょう。
話を戻しますが、アパレル各社が、事情により、もし、品揃えを絞り込む(引き算する)としたら、一方で、それを上回る、いままでになかったどんな価値を生活者に提供(足し算)できるのか?そのあたりをしっかり突き詰めて実行に移していただきたいと思います。
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