必要十分な品質
2月12日の日経新聞の一面、「大転換」という連載記事を読んで・・・
これまで先進国を中心に売上を伸ばして来た日本企業が、今後主力となる新興国市場に対応するための日本企業が取り組む「ダウンサイジング」が取り上げられていました。
その中に、世界のファスナーシェアの4割を占めるおなじみ日本のYKK(吉田工業)が、品質基準を見直して価格が半分の第2のブランド「ARC」という廉価版のファスナーを立ち上げ、多くの中国企業が採用しているという話が掲載されており、興味深く感じました。
YKK社は、年間生産74億本の7割を新興国に出荷しており、それまでの「YKK」ブランドの1万回の上げ下しに耐えうるファスナーの「過剰品質」が新興国で必要か?という自問自答から生まれてきたのが「ARC」だったようです。
YKKファスナーと言えばアパレル生産に携わっておられる多くの方がお世話になっていることでしょう。私も、冬のアウターウエアーやスポーツブランドの生産を担当していたころは、絶対安心品質のYKKのファスナーがほとんどの日本の大手アパレルメーカーご指名だったもので、その長い納期が、製品そのものの発注時期と生産リードタイムを決め、悩みのタネだったことを思い出します。
「日本企業の多くはモデルチェンジのたびに価格を上げる経営に慣れ、割り高なコスト構造を引きずる。(記事からの引用)」
我々の業界も耳の痛い話ですね。百貨店や量販店向けにアパレル製品を納めていると、時に過剰とも思われる品質基準をクリア―するために、生産業務の半分以上の時間と労力を品質管理室とのやりとりに費やしていたころを思い出します。一度どこかで品質クレームが起こると、その都度、厳しくなる品質基準。そんな労力、保険、リスクヘッジのためのコスト・・・しわ寄せは積みあがって、結果、顧客が払う価格に転嫁されるのは言うまでもありません。
今、ファッションマーケットの中で、そんな日本の伝統的なALWAYSベスト(BEST)クオリティに対し、アンチテーゼかのように、ファストファッションの、顧客が求める商品の賞味期限を前提とした必要十分な品質=イナフ(ENOUGH)クオリティの挑戦状がつきつけられているような気がします。
品質や感性ってものは、一度ベターなものを知ってしまうと、たとえ金回りが悪くなっても、易々クオリティを落としたくない、センスを落としたくない、と考える不可逆的なところもあると思います。しかし、一方で、何でもかんでもベストクオリティだから高いというのは通用しなくなりそうですね。今後、ますます、一定以上の品質や感性をクリア―した低価格商品が台頭し、それを後押しするわけですから。
これだけ選択肢が増え、豊かになったマーケットで、目を肥やし、必要十分な品質を見極める生活者。そして、それに対応する企業も生活者の立場で柔軟でなければならない時代なのですね。
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