「イッセイミヤケのルール」を読んで
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川島蓉子さんが書かれたイッセイミヤケのルール(日経新聞社)を読みました。
読んだきっかけは、川島さんが書かれた、日本を代表するデザイナーブランドについての本、ということにもありましたが、10年以上前、IFIビジネススクールで私にファッションビジネスの基本を体系的に教えてくださった太田伸之さんが、現在、社長を務めていらっしゃる会社というところに、背中を押されたためだと思います。
イッセイミヤケ社が、クリエーションとビジネスのバランスに長け、カリスマデザイナーに頼らないデザイナーブランドビジネスを展開されていることは、企業としての継続性と、デザイナーを交代できるしくみ、その後、独立されて成功されているデザイナーも少なくないことから、明らかで、人材登用にあたって、使い捨てではなく、インキュベーション的な発想を併せ持っていることでも有名です。
本を読んで一貫して感じたことは、この本には、日ごろ私が、ブランド系、メーカー系企業で直営店をもって小売展開をされている多くの会社の方々とお話をしていて、共通して、ああ、もっとこういうことをしたら売れるのになぁと感じていることに対する多くの解決法が書かれている、ということです。
それは、簡単に言うと、
○デザイナーブランドでありながら、小売業であるという自覚
であり、
○商売人を育成しようとする姿勢
であると思います。
多くのメーカー系の小売業さんは、えてして、自身のクリエーションや商品開発を過信するあまり、店頭現場の力を軽視しているように思うことが多いです。
いいものを作れば売れる、というお気持ちはわかりますが、情報武装、教育の機会を十分に与えず、販売員(FA)さんにノルマだけを課して、売れない責任を現場に求める話を聞いて残念に思うことがあります。
これに対して、イッセイミヤケ社では、現場にブランドとしての方針を伝え、しっかり教育を施した上で、発注権限と責任を持たせたり、個別店舗ごとの客層の違いに対応する「応用問題」を現場で解く訓練をしているところが一味違うところ、というか、それが、ファッションリテイラーのあるべき姿ではないかと思います。
言い方は悪いですが、この業界は、人材の使い捨て的な発想の強い企業が少なくありません。
「どこに行っても通用する人材」の育成をしている企業は極めて少ないと思いますが、本を読んでいて、同社には、そんな人材を育成しようとする姿勢を強く感じることができました。
それから、個人売り(個人の販売ノルマ)制度を取らず、店舗予算を取るためのチーム接客を重視しているところにも共感しましたね。
ちょうど、先日、お手伝いをしたセレクトショップさんの接客マインド研修でも、個人ではなく、チームで売上を取る、「フォロー接客」の話題で一番盛り上がったのが印象的でした(ちなみに、この会社さんも個人ノルマ制を否定しています)。
特に、直営店をお持ちのブランドメーカー、メーカー出身SPAの方々にお奨めしたい本です。
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Comments
いつも楽しく拝見しております。
こういった話(ノルマうんぬん、売上至上主義の否定)を私も現場で話す場面があるのですが、大前提を見失い何のためにやっているのかが分からなくなっている場合があります。最終的には「売上を上げる」「売上をとる」ことができなければ、結局笑い話になってしまいます。売上の取れていないブランド、ショップは、逆に売上至上主義の否定から入り、自分たちのなかの販売、店舗運営に対して疑問を呈さない矛盾があったりします。
SPAファストファッションの流れのなかで、今後販売員の存在価値はどうなるのでしょうか。接客販売の現場では、古い考えですが私の経験上、2:8の法則(売上は売れすぎ2割の品番で8割の売上)は販売員の個人売上にも同じことがいえ、店の売上は2割のスタッフで、全体の8割をとると言えます。(ちょっと極端ですかね?)
フォロー接客というと、売上のいいスタッフが悪いスタッフに・・・と捕らえがちですが、実は逆が一番重要だったりします。売上の取れるスタッフの顧客の来店が重なってしまった場合に店としてどう対応できるか、店の力がためされます。
毎度のことながら何を言いたいのかわからなくなってきましたが、現場(販売、運営・・・)本部(営業、マーケティング、MD・・・)がそれぞれの役割を果たしているか。果たす前に他を否定していないかということですね。
駄文失礼しました。
Posted by: 親父の親父 | June 14, 2009 12:44 AM
親父の親父さん
いつも現場がわかる方ならではの本質的なコメント頂き、感謝しています。
同感です。
結果を出す(予算達成)のは大前提ですが、企業として継続性のあるやり方(=本来の本部と現場の役割分担と実行)で実現したいですね、という話です。
フォロー接客は、おっしゃるように、一部の個人のためではなく、顧客の気持ちよさ(CS)と人財育成(ES)が前提だと思います。
(2:8は最近はそれほど極端な例は少ないですが、2割が2/3くらいを占めていることは多いですね。)
接客とセルフの上手な使い分け(顧客側も企業側も)は今後も進むと思いますので、いずれも、顧客の立場に立って、いかに磨きをかけるかが問われることになるでしょうね。
これからもよろしくお願いいたします。
Posted by: taka | June 14, 2009 08:00 AM