OEM生産とODM生産
アパレル業界がファストファッション化あるいは対抗策?を志向する流れの中で、ここのところ、時流にあわせて、繊研新聞や日本繊維新聞にアパレルSPA(製造小売)企業あるいは専門店が活用するOEM生産とODM生産に関する記事が数多く掲載され、興味深く読ませていただいております。
業界でいうところの、SPA(=Speciality store retailers of Private label Apparel の略)は、一般に「製造小売業」と訳されますが、英語の直訳の通り、「自社ブランドのラベルがついた商品を販売するアパレル専門店、ブランド直営店」というのが実際のところで、グローバルSPA大手のGAP、H&M、日本のユニクロ、無印良品、ポイントの各業態、マルキュー系しかり、生産に関しては、商社、生産代行業者経由かダイレクトかは別にして、協力工場に委託、つまり分業しているケースがほとんどです。
自社工場またはグループ工場で多くの生産をバーティカル(垂直的)にコントロールしているのは、思いつくところでは、ZARAのインディテックスグループくらいでしょうか。
その取り組みの中で、OEM(Original Equipment Manufacturing)生産とODM(Original Design Manufacturing)生産の違いを、簡単に言うと、
・OEMは発注する小売側が商品企画を行い、製造仕様書を発行し、サンプルチェックも自己責任で行う
のに対し、
・ODMは商品企画までも仕入先業者に任せ、製品の形になった提案サンプルを見て、買うか買わないかを即断する
ものです。
日本上陸後、たった1店舗で大旋風を巻き起こしている、米フォーエバー21がその手法を取ることで特に話題になっているODM生産は確かに手軽、その利点は
1 企画が外部の複数のソースということで情報ソースが豊富(ある意味無限大)
2 製品サンプルになるまでのプロセスが省け、バイイング、つまり買うか買わないかの判断に徹することができる
3 デザイナー、パタンナーなどの企画開発担当者や生産担当などを社内に置かなくて済む(人件費削減)
4 仕様書作成や社内確認作業がなくなりスピードアップ(ファスト化)する
と言ったところでしょうか。
そんなわけで、多くのSPAが、ODM生産に注目しますが、同じSPAでも、専門店出身SPAとアパレル(卸)出身SPAでは、活用する上での事情が違いますので、どういうことになるか、しっかり理解しておく必要があると思います。
共に生活者から見れば同じ小売業の体をなしていますが、それぞれの強みの違いは
○専門店出身SPA・・・店頭起点で、しくみか背中を見ろかは別にして店頭で商売人、人材育成の文化がある、売り切る力がある
○アパレル出身SPA・・・本部を中心に、体系的な商品企画、もの作りの文化、よりいいものを生活者に届けよう、商品の完成度を追求するこだわりがある
ところでしょう。逆にそれぞれの弱みは逆方の強みと言ってもよいと思います。
最近の関連記事を読んでいると、前者の専門店出身SPAがODM業者を活用するのはいいと思いますが、後者のアパレル出身SPAが自社企画をして、OEM代行メーカーと取り組むのではなく、スピードと手軽さを理由にODMメーカーを活用して、強みであるはずの商品企画をも任せているようなところがあるようですね。そんな話を聞くとちょっと心配になってしまいます。
すなわち、無防備で、ビジネスモデルだけを真似てカンタンに「強み」を放棄するのは、いかがなものかと・・・
現実的にはリスクを取りづらい商社(OEM中心)から⇒生地を機動的に動かすことができ、独自に企画提案機能を持った生地コンバーターの製品部隊(ODM)にビジネスのウエイトが移って行っているという図式かもしれませんが
いずれにせよ、アパレル出身SPAさんが、ODMを活用する場合は、専門店出身SPAの強みをしっかりベンチマークして、小売勝ち組企業の文化、体質を取り入れながら、取り組んだ方がいいと思うんですけどね~、と考える今日この頃です。
関連エントリー-日本人の開拓者精神、ハングリー精神
執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
いつもお読み頂きありがとうございます。
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Comments
日本のODMマーケットに興味の高い韓国の韓国人です。
韓国のデザインを日本に紹介したいので、
いろいろ模索している最中です。
いい情報をありがとうございます。
Posted by: 正一 | November 16, 2010 12:56 PM
正一さん
韓国のデザイン、生産フットワーク、
あらためてこれから日本でチャンスあると思いますよ
Posted by: taka | November 16, 2010 09:14 PM