自己完結して来なかったことが日本企業の弱みになる
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一昨日のファッションセミナーでの小島健輔先生の講演の中で、私が共感したのは・・・日本のアパレル業界は、今後、QR(クイックレスポンス)やOEM・ODMといった、安易なモノづくり、業者任せなやり方を改めて、「自己完結型ビジネス」に取り組まないと、海外市場では勝ち目はないよ、という話でした。
ユニクロのファッション感性に対しては極めて辛口の小島先生ですが・・・同社の「自己完結型ビジネスモデル」は、日本では稀なグローバルスタンダードとして、高く評価されていらっしゃるようですね(笑)。
日本のアパレル業界では、SPA(製造小売)企業と名乗っていても、実態は、商品調達に関しては商社やOEM・ODMメーカー(=業者)に頼る、それらの業者も更に、国内外の商社やブローカーに振って(経由で)、海外工場に注文しているケースがほとんど。
海外企業に比べて、中間業者が多い、自己完結していない、責任があいまい、であり、それが日本のアパレルビジネスの特徴と言ってよいのではないでしょうか。「(日本式?)垂直統合型」って言えば聞こえはいいかもしれませんが・・・
気をつけないと、商品の同質化、コスト高、納期遅れ、品質コントロールの難しさがデメリットとして現れます。特に、業者に無理強いし、コストを叩けば、その分、業者がありあわせの流通素材を使わざるを得ず、同質化するとともに、安く作ってくれる新規取引工場に発注すれば、品質も落ちる可能性が高まるというわけです。
これに対して、ユニクロでは、ご存じかと思いますが、輸入決済代行や商品が国内に入ってからの店頭投入・在庫調整では大手商社を経由、上手に商社金融機能を活用していますが、基本的に、原料から店頭販売まで、すべて自社で責任をもってコントロールしている自己完結型と言えます。
かつては、量販メーカーからの仕入が中心だった同社も、90年代の後半にメーカーを飛ばし、その後、商社も骨抜きにしています。
最近では、あまりにも原料開発など仕込みに入り込んでいるので、商品調達が従来の半年から、一年がかりが常識になってしまっているのが悩みのタネのようですが・・・
一方、海外では、自社工場は持たなくても、商社も経由せず、自社で企画して、自社で生産管理して、自前店舗での販売、つまり自己完結型がスタンダードなんですよね。H&Mしかり、ZARAしかり、GAPしかり・・・
海外企業と日本企業の違いは、どうして起こったのか?ここらへんが、ガラパゴスと言われるゆえんかもしれませんが・・・
私は、それは、日本人の外国語に対する苦手意識と、日本人が、自ら汗をかかなくなった、開拓者精神がなくなって業者に任せて、自分たちは、目の前の役割を粛々と果たしておけばいいや、と考えていることが大きな理由ではないかと見ています。
今、業界を見渡すと、大手ですら、ローリーズファーム(ポイント社)やセシルマクビー、はたまたフォーエバー21の成功、勢いに刺激を受けて、手軽で効率のよい、デザインも業者任せのODM方式に切り替えているのが昨今のビジネストレンドのようです。
これまで、日本国内では、みんながそうだから、それでよかったのかもしれませんが、今、グローバルスタンダードを当然とするH&M、ZARAら外資強豪SPAが上陸、拡大する中で、価格と品質とファッション感性の常識が変わり始めました。
そして、今後、海外での成長を目論むのであれば、中国を中心にアジアで、グローバルスタンダードを常識とする、韓国、中国のアジア企業も含むグローバル企業と競争をして行かなければなりません。
そんな情勢の中、日経新聞や繊研新聞などによると、ポイント社が三菱商事繊維事業部出身の方を本部長に、生産本部を設置したようです。
これまで、ODM方式を採り、身軽さとスピードを強みとしていたポイント社としては、自己完結型への第一歩を踏み出したことになりますね。
元商社マンであり、小売現場経験者の私が言うのもなんですが、インターナショナルな総合商社とて、自己完結することは、本来の仕事ではありません。それどころか、普通だったら、流通の隙間で、リスクヘッジをすることばかり考えていますから・・・ともに手を取って、自己完結型を目指すのであれば、相互の現場への理解と、汗をかきながら、そうとうな努力が必要になるだろうな、と思いますが・・・チャレンジ見守りたいと思います。
今日は、ちょっと長くなってしまいましたが、最後に、以前、ハーバードビジネスレビューで読んだ、世界でもっとも自己完結型のファッションビジネスモデルを取る企業のひとつ、縫製工場出身SPA(製造小売)企業、ZARA(Inditexグループ)の総帥、アマンシオ・オルテガ氏が、小売ビジネスに進出して以来、教訓にしている言葉を紹介して締めくくりたいと思います。
”you need to have five fingers touching the factory and five touching the customer”
直訳すると、「片手は工場に、もう一方の手は顧客に触れていなければならない」となりますが、
「顧客が実際に購入するまで、(自らが作った)その商品から目を離してはいけない」
と解釈するようです。世界一の自己完結型ファッション企業から学ぶことは沢山あります。
関連エントリー-OEM生産とODM生産
関連エントリー-日本人の開拓者精神、ハングリー精神
関連エントリー-「ポイントモデル」とグローバルSPAとの競合
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Comments
不況下の、アメリカでは、この、「バリュウー」といった、概念から、「ワース」といった、概念が生まれてますネ。以前は、メキシカンとか、移民対応型の、どでかいモールがあり、差別化してました。それを、真似た、日本・「イオン」とかです。他にも・・ですネ。ですから、やはり、この「ワース」たる、概念も、日本に、流れ込みます。が、はたして、成功するか?なんです。真似は、もーダメですから。比べることも!競争ではなく、独自・・の、時代・とおもってます。
Posted by: 高津 きみお | September 06, 2010 10:56 AM
ジョン・メイナド・ケインズ卿の、経済学とは、ザットですが、まずは、税金を下げる・内需の拡大・公務員の数を減らす・そして、大胆な、財政出動です。
Posted by: 高津 きみお | September 06, 2010 11:04 AM
高津さん
日本人も、「バリュウー」だけでなく、「ワース」を享受できる余裕が欲しいものです。
Posted by: taka | September 06, 2010 12:30 PM