転換期を迎えた中国アパレル生産
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9月15日の繊研新聞にも大きく取り上げられていましたが、今、アパレル、ファッション業界の最大関心事のひとつが、日本のアパレルマーケットの流通量の約8割を占めるに至った中国製商品の労働力不足、工場の日本離れによる、納期遅れ及びコスト高問題です。
コスト高は昨今の円高によりカバーされている感はありますが(円安に振れればちょっと大変な事態になりそう…)、納期遅れについては2月の旧正月以来問題が顕在化し、秋冬に深刻化しています。
この問題はここのところ毎日のように繊研新聞、日本繊維新聞などの業界紙で何らかの形で取り上げられ、実際、商社や、アパレルの生産担当者がこの問題を少しでも改善しようと頻繁に中国に出かけている話を耳にします。
9月13日の日本繊維新聞の一面に商社関係者のインタビューをベースにその要因のいくつかをまとめた記事が掲載されていたので、まずはこちらの方をまとめて引用させて頂きます。
なぜ日本向けアパレル生産現場の人手が不足しているのか?…
1 労働集約型である繊維(産業向け)が敬遠されている
2 中国政府による内地優遇策により繊維以外の仕事に人が流れている
3 短納期・小ロット・高品質・安い工賃の対日は避けられ、回復し始めた欧米のオーダーを精力的に取るようになっている
4 労働人口が大きく伸びていないにもかかわらず、経済成長に伴い多くの産業が生まれている
5 出稼ぎ労働という考えが薄れ、残業や土日出勤を嫌い自分のためにお金を使い始めている
中国の経済成長により、労働力が、より楽で賃金の高い仕事に流れているから、という記事や話をよく見聞きしますが、確かにそれはマクロ要因ではありますが、上記3、すなわち要求の高い割には、儲けさせてくれない?日本向けオーダーを避け始めた、という業界各紙の指摘に耳を塞いではいけないでしょう。
実際、2005年以降、輸入クオタ制(国別輸入制限枠)が廃止され、世界の工場である中国で制限なく生産できるようになったアメリカやEUからのオーダーは急増し・・・
そのため統計的には、直近数ヵ月の中国からのアパレル輸出量は減っていない、すなわち、中国の生産キャパシティは減っていないという話や、一方で、縫製工賃を日本企業の倍払うという、成長中の中国内需向け企業のオーダーに向かっているという話が、繊研新聞に何度かに分けて掲載されていたのが気になります。
日本のアパレル業界は、これまで、結構、フリーハンドで、都合よく中国の生産背景を利用出来ていた、というところは否めないところ。そこに、欧米のビッグオーダー、中国内需という競合が現れ、日本企業の取り組みや発注の姿勢の改善が迫られているわけです。
ということで、1990年台後半から2000年台の、日本式SPA(製造小売)の特技、QR(クイックレスポンス=短サイクル生産)、ファストファッションオペレーションも転換期を迎えたと言えそうです。
その対応策として話題に上るのは・・・
1)もっと企画開発期間を長くして、早めに余裕をもって発注をする?
2)ベトナム、バングラデシュ、カンボジア、インドなど、中国以外の東南アジア、南西アジアに生産地を分散する?
3)いやいやネクストチャイナは中国しかない、さらに奥地を開拓する?
しかし、それだけでは、根本的な解決になるとは思えませんね。むしろ調達期間が長くなるだけで、逆に退化してしまいそうな・・・
グローバルSPAによる世界戦争の最中、進化のスピードを緩めることなく、いよいよ、小売企業側がリスクを取って、サプライチェーン全体にリーダーシップと責任を果たすことを考えなければならない時が来たと感じます。
これまでは、「製品買い」よろしく、注文すれば、ベンダー(アパレルメーカーや商社)が、欲しい商品を欲しい価格で、欲しいだけ、欲しいタイミングに持って来てくれたでしょうが、中国がこんな状況になった今、リスクヘッジ、責任のなすりつけ合いでは始まりません。中間業者が介在するかどうかは別にして、場合によっては、工場ラインの操業保障を含めて、小売がサプライチェーンに責任を負う時代です。(悪いけど、そのリスクを商社や中間業者に期待してはいけません)
まずは生産現場に入って、自分たちの商品がどんなところでどんな風に作られているのか?を確認して、そして、どうしたら、工場が気持ちよく、安定的に商品供給できるのか?を考えてみるところから始めてみるといいのではないでしょうか?
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