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September 22, 2010

パルグループの多ブランド成長戦略

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 9月20日の日経MJ一面に、都心部ファッションビルを中心に、チャオパニック、ミスティック、ガリャルダガランテなどを展開する東証一部上場ファッション流通企業、パルグループの特集記事が掲載されていました。

 読まれた方はお気づきかと思いますが・・・私のコメントも記事の最後にちょこっと取り上げられています。

 パルグループは、関東では後発で、業界外の方には、あまりピンとこない方もいらっしゃるかもしれませんが(むしろ子会社化したナイスクラップの方が知られているかも)、創業が紳士服洋品店、その後カジュアルセレクト専門店に転進して、等身大MDを強みとする多ブランド戦略を取り、東証一部上場に登りつめた勝ち組ファッション企業という共通点から、しばしば、ローリーズファームでおなじみのポイント社と東のP(ポイント)、西のP(パル)などと呼ばれて比較されて来たように思います。

 年商規模ではポイント980億円、パル700億円(ともに2010年2月期決算)と、年商1000億円が射程に入った業界大手の両社ですが、その生きかた、ブランド成長戦略には違いがあります。

 ポイントが、200億円、100億円規模の柱となるブランドを中心に十数ブランドで堅実に売上を積み上げる「集中型」なのに対し、パルグループは、個性の違う数十億円規模の中小ブランドを40以上展開し、「分散型」でファッションマーケットのトレンドの変化に対応しているのが特徴と言えます。

 単一業態で成長したユニクロ、しまむらや、集中型のポイントの方が「王道」で、業界外の方や投資家の方々にはわかりやすいかと思いますが・・・業界内から見ると、パルの40もの服好きブランド長がプロデュースする個性ブランドの分散型ポートフォリオが、どんなファッショントレンド変化にも対応する(その時々のトレンドにマッチしたブランドの好業績が、ダウントレンドのブランドのマイナス分をカバーする)という理屈も、ファッション企業の生き方のひとつとして、十分ありだと思います。

 そして、好きだからこそ、やらされている感がなく、ブランドリーダーのモチベーションが維持されているからこそ、チャレンジし、工夫をし、人とともに、ブランドが成長する。その成長の波に乗って会社が成長するというパワーを経営者の方は、よく理解されていると思います。

 そんな同社のブランド投資は、ビジネスインキュベーション的なところも感じますしね。

 私は、成長ファッション企業の人材育成を生業にしている関係で、ファッション企業の組織論を研究していますが、「一三(いちさん)の法則」というのがあって、組織あるいは店舗が拡大してゆく時、1と3がつく所でやり方を変える必要があるという理論を結構経験的に信じています。

① 1店舗 創業
② 3店舗 事業検証、イケてれば人海戦術でバンバン繁盛店づくり
③ 10店舗~ ここからチェーンストア、ただし、まだ属人的でOK
④ 30店舗~ 組織・役割分担、しくみ、本格的在庫コントロールが必要

 その後、50店舗を経て100店舗へ、「人を育てることができる人材」を何人も育成しながら安定成長してゆく必要があると思いますが・・・

 パルの強みであり、一方、今後の課題だと思われるのは、③の店舗数のブランドの集合体である点でしょうかね。

 つまり、ファッションブランドで大切な、

 1)希少性の維持 と
 2)ひとりのリーダーの神通力が利き、目がある程度、隅々まで行き届く範囲

 の折り合いがつくチェーンの規模が10店舗~30店舗のところにあるのではないか、ということです。ただ、上場企業よろしく、管理部門が、効率を高めようと無理にしくみ化みしようとすると、モチベーションが削がれてうまくいかないケースも多いというのもファッションビジネスのよくある風景かもしれません(笑)。

 そんな、ある意味、おいしいところをスクラップアンドビルトしながら各ブランドにどう磨きをかけるのか?

 昨今のSPA化、多店化時代は、ある意味、効率、同質化、マス、大味への道でもあります。外資大手に対するライバル心がそれにますます拍車をかけるかもしれません。

 個性のブランド集合体でアメーバ―のように成長を図る、パルのチャレンジ、ビジネスモデルは、その対極にあると思います。大味に向かうマスマーケットの中で、同質化を嫌うファッション中級者以上に支持され、成長するビジネスモデルのひとつとして、パルグループの動向を楽しみにしたいと思います。

関連エントリー-パルの「拝啓社長殿」
関連エントリー-一三(いちさん)の法則
関連エントリー-「ポイントモデル」とグローバルSPAとの競合
 
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Comments

立て続けに質問、申し訳ありません。勉強中の者です

いわゆる製品のライフサイクルでは、成長期以降は急激に製品単価が下落するという理屈では有りませんが、
ことアパレルに限っては「感度ヒエラルキー」がきつい為、
ライフサイクルが進むにつれて、コストメリット以上に価格の下落が止まらないため、他の業界に比べて、マスでの利益獲得が難しいのではないか…、と考えるのですが、
これはアパレルブランドの感度にあてはめて考えるべきではないのでしょうか。

単純にターゲット層と価格設定を考えると、
パルのように、比較的感度の高い層を細かく取り込んでいく方が効率的であるように感じました。

Posted by: aya | September 24, 2010 03:35 PM

これは、なかなか難しいところですね。

ビジネスの正解はひとつではないと思いますが・・・

「効率」を求めるとやはり規模が必要になるのではないかと思います。

規模を拡大しつつ、マーチャンダイジングミックス、SCM、QR、在庫コントロールなどを駆使してリスク分散するファッション企業が力をつけてきていますね。

その代表例がH&MやZARAあたりではないでしょうか。

Posted by: taka | September 27, 2010 02:36 AM

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