アメリカ企業の海外市場戦略、Jクル―はネット通販で世界107カ国・地域を開拓
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5月14日の日経MJに、米J.CREW(Jクルー)のミラード・ドレクスラー会長のインタビュー記事が掲載されていましたので興味深く読ませていただきました。
業界の方はよくご存知かと思いますが、ドレクスラー氏は1987年~2002年の米GAPの全盛期に、社長として、CEOとして、売上を4億ドルから140億ドルに拡大して、同社を成長に導いた中興の祖。
その後、低迷したGAPの立て直しができず、創業者のドナルドフィッシャー氏に解任されてしまうものの・・・
2003年からは新境地、ライバル企業であるJクルーのトップとしてリーダーシップを発揮。GAPの顧客も奪いながら、8年間に売上を倍の18.5億ドル(約1500億円)とし、同社の黒字化はもちろん、営業利益率10%台を上げる優良企業に育てあげた手腕はお見事です。
90年代アメリカ出張時、ドレクスラー氏率いるGAPのファンだった方は多いと思いますが・・・その後、2000年代後半から今に至るまで、アメリカに出張されるバイヤー、MD関係者のJクルーに対する評価は非常に高いものがありますね。
これは、ドレクスラー会長のファッションビジネスセンス、魔力が今でもアメリカマーケットの中で、健在であることの表れでしょう。
米有力チェーンの一角として注目を浴びるJクルー。気になるのは、今後の海外成長戦略や日本再進出(1993年レナウンと組んで日本進出、2008年撤退)です。
記事によれば、昨年初の海外直営店を出したカナダでは出店を進めるものの、それ以外の国への出店は非常に慎重であるとのこと。
まずは、今年3月に、DHLと組んでスタートさせた、世界107カ国・地域をカバーするインターネット通販での市場の拡大にフォーカスし、その後有力と思われるマーケットについては焦らず、じっくり検討に入る模様です。
アメリカ国内で市場飽和、業績頭打ちになって、ここ最近ようやくアジアなど海外進出を始めた、GAPグループ、アバクロ、アメリカンイーグルなどに対して、そんなのんびりなことを言っていられるのか?との見方もあるかもしれません。
しかし、私は、地味かもしれませんが、このネット通販による海外市場拡大戦略、Jクルーのようなアメリカ企業に結構向いていて、手堅い戦略のひとつだと思っています。
なぜならば、
まず、アメリカは広い国土で、通販ビジネスが普及している上に、Jクルーは、もともとカタログ通販出身の会社であるというDNAを持っています。 ネット通販はお手の物でしょう(現在の同社の通販売上比率は約30%)。
一方で、アメリカ企業が日本や東アジアに進出する時のビジネスのネックのひとつに高い家賃があります。
アメリカのファッションチェーンの財務諸表に目を通していると気づくこと。
多くのアメリカ企業が世界の同業企業と比べて、次のようなビジネスモデル上の違いがあります。
・ それほど高くない良心的な粗利率水準=30%台~せいぜい40%前後まで (アバクロだけは、60%台と他社に比べると少々暴利?)
・ 低い販売効率=月坪換算 10万円台前半
・ 低い家賃および家賃比率 売上比率 5%程度、ほとんどが10%未満
ということで、バリューのある(原価率の高い)商品を、低い販売効率でも、安い家賃に支えられて成り立っているビジネス。というパターンが多いです。
アメリカは国土が広いので、都心の一等地は別ですが家賃が安いのでしょうね。
そんなビジネスモデルの企業が、日本の都心部のような狭い国土で、高い家賃の都市で生き残るには・・・
1.GAPのように高い家賃を賄うために、粗利率を高く=値段を本国よりも高めに設定するか?
2.フォーエバー21のように、価格設定、ビジネスモデルはそのままに、低家賃でも入居してくれという家主からの誘致を待つか?
いずれにしても、本国と比べると、出店機会が限られますから。アメリカのファッション小売業がとにかく海外に出店すればよいというものではないようです。
そんな意味で、Jクルーのような通販を切り口にしたアメリカ企業の取り組み、ちょっと興味深く見守っております。
同社の通販サイト、一度、チェックしてみて下さい。5月30日まで送料無料&免税キャンペーンやってますよ。
それにしても、日米内外価格差の1.57倍が米中1.35倍、米英1.33倍に比べて大きいのはどうしてでしょうか?
また、Jクルーの詳しい業績をお知りになりたい方は・・・昨年ファンドに身売りして非公開化はしたものの、今でもIR情報をリリースしていますので、こちらをご覧になってみてください。
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