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7月12日に、米GAP社の低価格業態、OLD NAVY(オールドネイビー)がお台場ダイバーシティに日本1号店を開業しました。
とても楽しみにしていましたので、先週末にさっそくお店を覗いてきました(感想は後半部分で)。
オールドネイビーは、各メディアが報道されているように、GAP社の中では、GAP業態を売り上げで上回り、米国最大のカジュアル衣料専門チェーンということになりますが・・・
ランジェリー、ホームファッションを含めたファッション専門店の売上ランキングでは、LIMITED BRANDS社のVictoria's Secretが米国最大、OLD NAVYは2位となります。
業態名 店舗数 米国内年商(2012.1期末$=¥76.7換算)
Victoria's Secret 1,017 約4,600億円(※)
OLD NAVY 1,016 3,564億円
GAP 1,043 2,478億円
※ VSは、カナダ込みの公表売上高からカナダの推定売上高を差し引いたもの
最近、複数のTV局の方からオールドネイビー日本上陸に関してお問い合わせを頂きました。
その際、お話ししたことを含めて、今回のオールドネイビー上陸の背景をみなさんと少し整理、共有しておきたいと思います。
業界には今更という方もいらっしゃいますが・・・私は今回の上陸、それなりに意味があると思っています。
まず、オールドネイビーがこのタイミングで日本に上陸したのにはいくつかのGAP社自身の事情があります。
ひとつはアメリカのGAP社が米国内で成熟期からリストラ局面に入っており(只今進行中)、数年間連続で店舗数減、売上高前年割れの状態。ついては同社最大業態であるオールドネイビーの国際展開が必要とされていたこと。
もうひとつは、GAP社が国際事業で最もうまくいっていると言ってもよい、日本市場において、GAP業態の出店が頭打ちになったことによって、日本市場深耕にあたり、バナナリパブリックに続いて、オールドネイビーの投入が必要であったこと。
あたりが挙げられます。
GAPの出店が日本で約130店舗あたりで頭打ちになった理由は、みなさんもお感じかと思いますが、同業態の日本でのポジショニング戦略にあります。
GAPは日本上陸時、百貨店出身の方々が水先案内人であったり、
当時の舶来ブランドの常套手段である、希少性を出しながら(上から)よいイメージのブランディングを行う目的があったり、
はたまた、実際に事業が持続できる損益モデル作りをしなければならない観点から
アメリカよりも値段の高めの少し高級感のあるブランドとしてポジショニングをした、あるいはせざるをえなかったいきさつがあります。
ちなみに
GAPのアメリカでのプライスポイント(最多価格帯)は$39.95 日本では6990円あたりでしょうか
そうすると、内外価格差は、$=¥100で簡易計算して、1.75倍ということになります。
全品20%OFFセール時に内外価格差は1.4倍内に収まり、半額セールになってようやく内外価格差がなくなります。
アメリカのGAPでお買いものされていた経験のある方の多くは、贈答用はともかく、ご自宅用には、私も含めて値下げを待ってお買いものをするのが常になっているのではないでしょうか?
もっとも、3割くらいは日本オリジナルといいますから、すべてにおいて内外価格差があるというわけではありません。ある意味日本にあわせたライセンスブランドと考えたら、そう目くじらたてることもないのかもしれません。
GAPが日本での価格を高めに設定せざるを得なかった理由のひとつに、アメリカの家賃の相場と日本の家賃の相場の大きな差があると思います。
GAPの財務諸表(FORM10K)に目を通すと、同社の粗利率は40%またはそれ以下、販売管理費率は26%-28%になり、そのうち、家賃比率は8%になります。
GAP業態の米国での一店舗あたりの平均売場面積約289坪に対して、平均月坪売上高は76千円(一店舗あたり平均年商263百万円)、家賃比率8%とすると、月坪あたり、6千円程度しか家賃負担がないことになります。
売上家賃歩合8%、月坪家賃6千円の物件・・・なかなか日本の好立地にはありませんね。
GAPが日本の価格を高めに設定せざるを得ない理由は日本の家賃の高さにあるわけです。
これは、アバクロのように粗利率を60%以上もとっているファッションチェーンは例外として、
粗利率の相場は、40%前後またはそれ以下で、アメリカ国民に「バリュー」を提供するアメリカのチェーンストアの使命、常識からすれば、この日本の家賃問題はアメリカからの日本上陸組、F21、アメリカンイーグル含めて多くの企業にあてはまる話です。
今回上陸したオールドネイビーの内外価格差を試算してみたところ
アメリカのプライスポイントは$19.95に対し、日本のプライスポイントは1990円あたりにありそうです。
$=¥100で簡易計算すると、内外価格差はほぼゼロ、
インターネットのおかげで、世界がフラット化する今、H&MやF21などグローバルファッションチェーンが世界共通価格で日本に上陸するご時勢柄、当然かもしれませんし、一方で、よくがんばっていただいたと評価したいと思います。
しかしながら、GAP同様に、損益モデルの中の家賃の問題はつきまといますので、価格がリーズナブルな半面、出店機会は限られてしまうかもしれないという懸念があります。
要は、館(ショッピングセンター)が、集客装置のアンカー(核テナント)店舗として認め、売上歩合ひと桁台、あるいは、日本では坪効率が高まることを考えて、高くてもせめて10%までで握手してくれるところ、ということになるでしょうか。
さて、本題のダイバーシティの店を見ての感想ですが・・・
オールドネイビーのアメリカでの標準フォーマットは500坪(月坪効率75千円;一店舗あたり平均年商450百万円)、日本1号店は280坪と小ぶりです(標準の半分くらい)。
標準より小さめの店舗ということで、メンズの売場が少々犠牲になり?通路幅が狭いようで、本来の空間を利用したオールドネイビーの実力が発揮されているとは思えませんが・・・
GAP社が、上陸前に念入りに事前リサーチをされたというだけあって、しっかり小さい子供のいるママ、ファミリーにフォーカスされた売り場になっていると思います。
私は新店を見るとき、入店のための行列がどれだけ並んでいるかということより、
実際レジが回っているか?
スイッチが入ってお買いものオーラを出しまくっている人がどれだけいるか?
を人気のバロメーターとして見ていますが・・・
私が店舗にいた限られた時間内の話ですが、
12台のレジがしっかり稼働していたり、キッズコーナー中心に、オーラーを出しながら、楽しそうに買い物バッグに商品を次々に入れているママ、パパの姿を目の当たりにして、オールドネイビーの日本での拡大のポテンシャルを感じました。
あとは、ファストファッション時代に、GAPやユニクロと同じ、第一世代のSPAであるオールドネイビーがどのくらいの頻度で新しい商品を売場に投入してくるか?(ウィークリーとは言いませんがマンスリーには売場を変えたいところ)
そして、単価がリーズナブルな分、どれだけ顧客の来店頻度を高められるか?ですね。
(あるいは逆に不特定多数が来店する観光立地狙いという手もあるでしょうか)
プライスポイント1990円と言えば、ユニクロとほぼ同じ。そしてファミリーでお買いものをしていたら、目的買い、妥協系のユニクロよりも断然楽しいでしょう。
メディアが盛んに言うように、GAPの低価格業態だからと言って、g.u(ジーユー)と比べるのはちょっと的外れだと思います。(g.u.が受けているメイン客層は第1にティーンズ、第2にそれに共感する郊外ヤンママ層ではないでしょうか?)
GAP業態が日本でできなかった・・・
ファミリーがユニクロと比較購買しながら買いまわれる対抗馬として、
また日本のファミリー向けエンターテイメント型ファッションストア時代の起爆剤として、
私は、オールドネイビーの日本での多店舗化に期待を寄せています。
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