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July 09, 2012

ユニクロは日本の消費者を置き去りにしてアジアに行ってしまうのか?

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 7月7日の日経新聞、7月8日の日経MJにも掲載されていますが・・・ユニクロを展開するファーストリテイリングが2012年8月期の連結通期業績予測を下方修正したことが業界で話題になっています。

 前年比でみれば、売上、営業利益ともに13%増と二桁の増収増益になりますが・・・

 直近の第3Q(3-5月)では、

 ・海外ユニクロ事業の売上高が前年同期比61%増、

 ・ジーユー、セオリーなどのグローバルブランド事業が同34%増

 と健闘したものの、既存店の3ヵ月連続減収を受けて

 ・国内ユニクロ事業が同1%減。

 これにより、営業利益が従来予測を65億円下回ることから、業績の下方修正の発表に至ったようです。

 FR IRニュース 2012年8月期 第3四半期決算サマリー

 によれば、2012年8月期通期予測は

 ファストリ連結売上高 9,295億円 (+13.3%)
                            売上高    前年比  構成比     
   内訳  ユニクロ国内事業売上高     6,215億円 (+3.6%)  66.9%
        ユニクロ海外事業売上高     1,570億円 (+67.5%) 16.9%
        グローバル事業売上高      1,480億円 (+19.3%) 15.9%

 とグループトータルでは、いよいよ来期には1兆円を超えそうな勢いですね。

 しかし、内訳を見る限り、確かにユニクロ国内事業の減速感は否めません。

 2015年8月まで(あと3年)に、国内事業売上と海外事業売上を逆転させると宣言し、社内に号令をかける柳井会長。

 確かに、毎年今期のように海外事業の売上を前年比60-70%増のペースで伸ばして行けば、3年後には今の国内事業よりも大きくなる計算ですが・・・そこまでの性急な成長、果たして維持できるのでしょうか?

 最近の同社関連のニュース、記事を見ていると、伸び盛りの海外事業やジーユー事業ばかりに目を向けるようにしていて・・・屋台骨であるユニクロ国内事業に今、本当に力が入っているの?と感じてしまうのは、決して私だけではないでしょう。

 業界のトップコンサルである小島健輔先生もちょうど今日のブログでコメントされていましたね。

 ユニクロはチャイナSPAか?
 
 今、ユニクロ国内事業をどうとらえ、評価すべきか?

 それを考える上で、著名経営コンサルタントの神田昌典さんがよく使われる「ライフサイクル曲線」の理論を私なりに解釈して、事業の寿命に当てはめ、ユニクロ国内事業のライフサイクルについて勝手に考察してみました。

 同理論によれば、ライフサイクルの導入期、成長期、成熟期、衰退期の各フェーズの期間はほぼ均等。従って、導入期から成長期に入った時点がわかれば、その4倍がライフサイクル=寿命という仮説が立つというもの。

 ユニクロは、1984年1号店オープン、1999年フリース&原宿店で大ブレイク・・・

 この時点で事業が「成長期」に入ったとみなすと、ユニクロ国内事業は、フェーズあたりおおよそ15年周期で、事業の寿命はその4倍で約60年ということになります(意外と長い?ですね)。

 参考:ファーストリテイリングの売上高と店舗数の推移(同社HP)

 この資料2002年から連結売上なので、同社の過去のリリース情報を参考に、ユニクロ国内事業単体の売上、店舗数の推移を抽出してみましたが・・・やはり、成長期に入ったのは1999年とみなしてよさそうです。

 そうすると、ユニクロ国内事業は現在、1999年~2013年までの成長期の晩期。

 そして、再来年の2014年から成熟期(安定成長期)に突入することになります。
 
 導入期 1984年~1998年
 成長期 1999年~2013年
 成熟期 2014年~2028年
 衰退期 2029年~2043年

 衰退期にはリストラが待っていますが、成熟期には、すぐに売上が下降に向かうわけではありません。成長率は1ケタ台の前半に鈍化するものの、まだ売上利益はあてにできますし、やり方を変えることによって新たな成長軌道を描ける可能性もあります。

 アパレル事業を売却して、ランジェリーやヘルス&ボディーケアにビジネスの軸足を移したアメリカのLIMITED BRANDSがその一例ではないでしょうか?

 そんな成長期から成熟期に移行する今、国内事業にしがみつかないのが柳井会長。

 国内事業が成長期の間に、ファストリグループがグローバル連結で二桁増の成長率をキープするために矢継ぎ早に手を打ち、海外出店、特に成長マーケットである中国、アジアにアクセルを踏みだしたのは流石です。

 本来、アメリカのGAPやアバクロもリストラを始める安定成長期間中に、早めに海外展開を加速させるべきだったのでしょうね。

 そんな轍を踏まないのは、さすが日本が世界に誇る経営者のおひとりである柳井会長です。

 しかし、一方で、まだまだ国内事業で手を抜いてもらっては困ります。

 一番気になるのは、本社は東京のままですが、R&Dというクリエイティブ部門の人材がほとんど上海に異動になったことによって、今、同社は日本に背を向けて中国市場を見て仕事をしているのではないかと感じられることです。

 その現象は、

 フリースブームの直後に戻ってしまったような商品感度、コンサバカラ―ばかりへの絞り込み、ルーズシルエット、匠(たくみ)がほんとうに機能しているの?と思ってしまうような綿素材の質感の進化のなさ・・・(最後の話は、昨年までの原綿価格の高騰も背景にあるのでしょう)

 あたりに表れているように感じます。

 私は小島先生がブログでおっしゃるような、日本とアジア別々のオペレーションを並行して走らせるのは、経営効率が悪く、グローバルSPAとして得策ではないと思います。

 製造部門は確かに工場現場に近い方がよいのはわかりますが、

 海外で日本から来たことをアピールしているユニクロのクリエイティブな仕事は、やはり、東京発信であるべきではないでしょうか?

 それは日本の生活者だけでなく、アジアの方々も望んでいらっしゃると思いますよ。

 ZARA(スペイン)だって、H&M(スウェーデン)だって、本社からキモとなるクリエイティブな部分を別の場所に移すようなことはしていませんからね。

 それとあわせて、国内でまだまだ攻め続けなければならない事情もいくつかあると思います。

 今、日本国内では、H&M、ZARAが勢力を広げ、しまむらがヤング化、ファッション化を切り口に都心に攻め込み、東レの機能素材インナーはユニクロだけの専売特許ではなくなっています。

 日本の競合環境は急速に変化しています。

 余計なお世話かもしれませんが、そんな時、国内事業も再強化しなくて、どうするんだ?という焦りを感じます。

 下手すると、海外展開の利益を支える国内事業が足をすくわれ安定成長できるものもできなくなってしまうかもしれませんからね。

 以上、長くなりましたが、ユニクロの国内事業、グローバル展開に関する私からの問題提起です。

 日本を代表するブランドであるユニクロの今後の成長について皆さんと考える機会になればという気持ちで述べさせていただきました。

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