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September 13, 2012

ヨーロッパファッションストア見聞録~その6 バルセロナ② ZARA(ザラ)グループのブランドポートフォリオ 1/2

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 世界のファッションチェーンの売上高でH&M(スウェーデン)と世界1位、2位を争う、ZARA(ザラ)を展開するインディテックスグループ(スペイン)。

 両社はSEK(スウェーデンクローナ)と€(ユーロ)の為替レート次第でどちらが1位、2位になってもおかしくないくらい僅差でトップを争っているツートップ企業と言えます。

 H&Mは100%近い売上を「H&M」の店名で上げていますが、インディテックスグループは約65%の売上シェアのZARA(ザラ)を核に合計8つの業態で成り立っています。

 ブランド名           期末店舗数 売上高(億円) 売上シェア
 ZARA     (1975)      1,830     8,902     64.8%
 Bershka    (1998)      811     1,310      9.5%
 Massimo Dutti (1991買収)   573     1,008      7.3%
 PULL&BEAR (1991)      747      953      6.9%
 Stradivaius  (1999買収)   684      867      6.3%
 OYSHO    (2001)      483      311      2.3%
 ZARA HOME (2003)      310      315      2.3%
 UTERQUE   (2008)      89       67      0.5%
  合計              5,527     13,737    100.0%

 (2011年度 インディテックスアニュアルレポートより €=99.6円換算)

 開業または買収した順番、時系列に見ると、そのころ同社が考えていた戦略が見えてきそうです。

Imag0306 1975年、ZARAを開業後、2番目の業態は1991年のPULL&BEARです。(画像はバルセロナ都市型SC Diagonal Mar店)

 ZARAが「都心」で働く30-40代の女性とその娘(TRF)の服を核にメンズ、キッズラインを揃えているのに対し、PULL&BEARは「近郊、郊外」のヤングおよびヤングマインドのアダルト向けのジーニングカジュアル。ウェブサイトはそこそこ格好いいですが、店頭で見るそのマーチャンダイジングはカントリーガール、カントリーボーイ向けのアメカジに見えます。アメリカのブランドで言えば、アメリカンイーグルやエアロポステールみたいな感じと言えましょうか?

 この時の同社のマーケット戦略は、都心集中から新興する郊外市場の開拓だったのでしょう。

 PULL&BEARウェブサイト

Imag0272 第3の業態は、1991年に65%の株式を取得し、1995年に完全子会社化したMassimo Dutti(マッシモデュッテイ)(画像はバルセロナ 都市型SC glories店)。

 こちらは、ZARAのワンランク上の価格帯の大人の男女向け上質、コンサバテイストラインと言えそうです。ポロラルフローレン、ブルックスブラザース、あるいはアメリカのバナナリパブリックのような雰囲気、商品群になります。

 ZARAほどのトレンドはいらない、上質でコンサバなトラディショナルなスタイルを好む、やや上層マーケット狙いと言えそうです。

 Massimo Duttiウェブサイト

Imag0307 第4の業態は、1998年開業、日本にも進出済みのBershka(ベルシュカ)です。(画像はバルセロナ都市型SC Diagonal Mar店)

 この立ち上げには面白い逸話があります。

 参考文献によると、オーナーであるセニョール、アマンシオ・オルテガさんの娘さんのひとりが、ZARAのTRFを買う年代になった時に、その娘さんが「私、TRFなんか着たくない」と言ったことから開発された男女向けヤングストリートファッション業態です。

 働く母が許せる、比較的上品なカジュアル、TRFに比べて、ロンドンストリートアバンギャルドな感じがしますね。

 
 Bershkaウェブサイト


Imag0431 大変興味深いのは1999年の第5の業態、Stradivaius(ストラディバリウス)の買収です。(画像はバルセロナ グラシア通り店)

 娘さんのために開発したBershka(ベルシュカ)には、マーケットにすでに強力な競合がいることがわかりました。

 それがStradivaius(ストラディバリウス)だったのです。オルテガさんは、市場での競合を嫌い、Stradivaiusを買収した上で、両ブランドを棲み分けして、それぞれを上手に伸ばしたのです。

 現在、世界TOP5に入る大富豪であるオルテガさんですが、さすがお金の使い方が上手い、というかそのダイナミックな発想に脱帽です。

 やんちゃな感じのするBershka(レディース&メンズ)に対し、Stradivaiusはコレクショントレンドを取り入れた黒を基調としたモードテイストから、かわいらしいフェミニンテイストそしてジーニングカジュアル(レディースのみ)までヤングレディーストレンドを幅広く取り入れているのが特徴と言えます。

 商品はBershkaと同じ価格帯ですが、レース、フリル他、デコラティブなデザインのため、より価値観を感じます。

 Stradivaiusウェブサイト


 20世紀の終わり、このあたりで、TRF、PULL&BEAR、Bershka、Stradivaiusによって同社のヤングカジュアルマーケットに対するポートフォリオ、市場包囲網の準備が整ったと言えそうです。

 <続きは次の記事で>

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