ZARAの内外価格差と日本のアパレル市場
前回のエントリーでH&Mの最近の価格戦略について述べましたが、ここでZARAについても触れておきましょう。
私はグローバルSPAの戦略を知る上で、シーズンの変わり目に各社の店頭価格調査をするようにしていますが、
ここのところ、H&Mが日本国内においてプライスポイント(最多価格帯)を下げているように感じられるのに対して、ZARAは逆に1000円ほど上がっているのに気づきます。
例えば、同社の中でも最も売上シェアが高いと思われるカテゴリー、ZARA BASICのシャツブラウスおよびロングパンツのプライスポイントが昨年までの¥5990から¥6990に上がっています。
海外のZARAの価格はどうなのかが気になって同社WEBサイトで主要国の販売価格をチェックしてみると次の通りになりました。
販売国 現地価格 消費税 為替 円貨 内外価格差 現地原価 航空運賃
(税込) or VAT レート (推測:¥) (推測:¥)
スペイン €29.95 18% 121 3,624 1.00 1,450 0
フランス €39.95 19.6% 121 4,834 1.33 1,934 484
イギリス £29.99 20% 142 4,259 1.18 1,703 254
アメリカ $ 59.9 税抜き 94 5,631 1.55 2,252 803
(州による)
中国 RMB359 17% 15.1 5,421 1.50 2,168 719
日本 ¥6990 5% 1 6,990 1.93 2,796 1,346
昨年夏から秋の調査に比べ、ユーロとポンドの価格に変わりありませんが、アメリカでは$10上がり、中国ではRMB40下がり、日本では¥1000上がっているようです。
一方、為替レート換算後の内外価格差(スペイン本国と進出国の価格の差)は昨年と さほど変わりはありませんので、ZARAのプライスポイントが上がっているのは、どうやら為替レートが円安に振れたことが要因であると言えそうです。
ところでZARAは世界87か国に進出していますが、
H&Mがグローバル統一価格、各国でのトレンドファッションのプライスリーダーを目指しているのに対して、
一方のZARAは、無理をせず、はっきりとした内外価格差があることで知られています。
その理由は2つ
ひとつは、同社(インディテックスグループ)はスペインと南欧を除いては、商品を世界の店舗にドアツードアの空輸便を利用して輸送しているため、スペインから遠い国ほど航空運賃がかかるためです。
それでも空輸にこだわるのは、同社はファッションビジネスにおいてはコストよりもスピードが大事だと考えるからです。
もうひとつは、ZARAは各国の百貨店で買い物をする働く女性をターゲットにしているので、価格設定をローカル百貨店の半額から6掛けにすることを目安にしているためです。
日本はスペインから見たら遠い国(極東)、航空運賃がそれなりにかかるのはしかたがありませんが、
百貨店の価格が相対的に高いため、日本の消費者にとって航空運賃を負担してでも内外価格差が2倍近いZARAの価格がそれでもリーズナブルに感じてしまうというのはなんとも皮肉なものです。
このあたりが、外資系企業が日本をおいしいマーケット(利益額を稼ぐ場所)と位置づけるゆえんなのでしょうか?
逆に言えば、日本企業にとってもまだまだビジネスチャンスがあるということがいえそうです。
外資系企業はいろいろな意味で日本のビジネス構造を映し出す鏡と言えるかもしれません。
ZARA、H&M、ユニクロ、しまむら、ポイント、ユナイテッドアローズなど国内外の『勝ち組』企業の成功の秘訣、新常識をわかりやすく解説しました⇒
『人気店はバーゲンセールに頼らない 勝ち組ファッション企業の新常識』
全国書店で好評発売中です(多くの書店の新書コーナーにあります)。
いつもお読み頂きありがとうございます。
| Permalink | 0 | TrackBack (0)