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March 23, 2013

ZARAの内外価格差と日本のアパレル市場

 前回のエントリーでH&Mの最近の価格戦略について述べましたが、ここでZARAについても触れておきましょう。

 私はグローバルSPAの戦略を知る上で、シーズンの変わり目に各社の店頭価格調査をするようにしていますが、

 ここのところ、H&Mが日本国内においてプライスポイント(最多価格帯)を下げているように感じられるのに対して、ZARAは逆に1000円ほど上がっているのに気づきます。
  
 例えば、同社の中でも最も売上シェアが高いと思われるカテゴリー、ZARA BASICのシャツブラウスおよびロングパンツのプライスポイントが昨年までの¥5990から¥6990に上がっています。

 海外のZARAの価格はどうなのかが気になって同社WEBサイトで主要国の販売価格をチェックしてみると次の通りになりました。

販売国  現地価格 消費税  為替  円貨 内外価格差 現地原価 航空運賃
       (税込)  or VAT  レート            (推測:¥) (推測:¥)
スペイン  €29.95   18%    121  3,624  1.00     1,450    0

フランス   €39.95  19.6%   121  4,834  1.33     1,934    484

イギリス  £29.99  20%    142  4,259   1.18    1,703    254

アメリカ   $ 59.9  税抜き   94   5,631  1.55    2,252    803
             (州による)
中国    RMB359   17%   15.1  5,421  1.50     2,168   719

日本     ¥6990    5%     1  6,990  1.93     2,796   1,346

 昨年夏から秋の調査に比べ、ユーロとポンドの価格に変わりありませんが、アメリカでは$10上がり、中国ではRMB40下がり、日本では¥1000上がっているようです。

 一方、為替レート換算後の内外価格差(スペイン本国と進出国の価格の差)は昨年と さほど変わりはありませんので、ZARAのプライスポイントが上がっているのは、どうやら為替レートが円安に振れたことが要因であると言えそうです。

 ところでZARAは世界87か国に進出していますが、

 H&Mがグローバル統一価格、各国でのトレンドファッションのプライスリーダーを目指しているのに対して、

 一方のZARAは、無理をせず、はっきりとした内外価格差があることで知られています。

 その理由は2つ

 ひとつは、同社(インディテックスグループ)はスペインと南欧を除いては、商品を世界の店舗にドアツードアの空輸便を利用して輸送しているため、スペインから遠い国ほど航空運賃がかかるためです。

 それでも空輸にこだわるのは、同社はファッションビジネスにおいてはコストよりもスピードが大事だと考えるからです。
 
 もうひとつは、ZARAは各国の百貨店で買い物をする働く女性をターゲットにしているので、価格設定をローカル百貨店の半額から6掛けにすることを目安にしているためです。

 日本はスペインから見たら遠い国(極東)、航空運賃がそれなりにかかるのはしかたがありませんが、

 百貨店の価格が相対的に高いため、日本の消費者にとって航空運賃を負担してでも内外価格差が2倍近いZARAの価格がそれでもリーズナブルに感じてしまうというのはなんとも皮肉なものです。

 このあたりが、外資系企業が日本をおいしいマーケット(利益額を稼ぐ場所)と位置づけるゆえんなのでしょうか?

 逆に言えば、日本企業にとってもまだまだビジネスチャンスがあるということがいえそうです。

 外資系企業はいろいろな意味で日本のビジネス構造を映し出す鏡と言えるかもしれません。

 ZARA、H&M、ユニクロ、しまむら、ポイント、ユナイテッドアローズなど国内外の『勝ち組』企業の成功の秘訣、新常識をわかりやすく解説しました⇒

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March 18, 2013

H&Mのミッドシーズンセールと今年の価格戦略

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 H&Mが先週の水曜日(3月14日)から日本全国でミッドシーズンセールを始めました。

 例年ですと春のセールは4月に行っていたのですが・・・。

 H&Mは従来、同社の四半期の真ん中の月(1月、4月、7月、10月)をメインにセールをするのが通例で、今回の3月中旬、春の最盛期にセールをぶつけて来るのは異例と言えます。

 世界のサイトを見ると、香港、シンガポール、フランス、カナダでもセールをやっていますが、その他のメジャーマーケットではセールを行っていないようですね。

 そうすると、日本では在庫を抱え過ぎているのでは?と 業界人はうがった見方をしたくなりますが・・・

 そう考えながら、同時に店頭ファサードに投入された新コレクションのプライスポイント(最多価格帯)を確認すると、従来のシーズン実売期の2490円に対して、1190円や1490円が大多数を占めています。

 同社はセールを始める直前、直後にプロパー(正価販売)の販売数量が落ちないようにプロパーのプライスポイントを下げるのが常套手段、すると、今回の異例のセールは計画的だったのだな、と判断できます。

 今年のH&Mは大型のイオンモールの核テナントで出店するケース、また関西では心斎橋、梅田、神戸など要所に大型店出店が控えています。

 いよいよ日本で出店ペースを上げるために価格戦略で本格的な勝負を掛けてくる狼煙(のろし)なのだろうか?と興味深く店頭を見ているところです。

 以前もブログでご紹介しましたが、欧州のH&Mは各国でイチキュー(19.95ユーロ、19.99ポンド)プライスあるいはそれ以下でトレンドファッションを市場最低価格で販売するプライスリーダーです。

 日本のマスファッションの価格の基準はいまやユニクロのイチキュー1990円にあるのは誰もが認めるところだと思いますが、

 H&Mも中国経済の成長率が鈍化し始めた今、いよいよ日本でもヨーロッパ並みに価格を下げて、市場浸透を深めるタイミングなのかなと思います。 

 カジュアルマーケットの企業は、円安だから値上げを、って言ってる場合じゃないかもしれませんのでどうぞご注意を。

 一方で、H&Mがプライスポイントを1000円台に下げる時期のウィークポイントがあります。

 どうしてもセール前後の1000円台の低価格品は、バングラデッシュやカンボジアで計画生産された商品が中心になります。 

 春の最盛期くらいは少し長く着ることのできるいいものを、という需要がありそうな時に、H&Mの中でも比較的クオリティが低いものが店頭に溢れては、特に都心部のお客さんは少しげっそりしてしまうかも知れません。

 勝手な勘ぐりかも知れませんが、しばらく様子を見守っておりましょう。

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March 07, 2013

MIXXO(ミッソ)とSPAO(スパオ)で日本に上陸する韓国イーランドグループの潜在力

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 先月の話になりますが、2月18日の日経新聞と繊研新聞に韓国最大のライフスタイル&アパレルグループ、イーランド(年商10兆ウォン=約9000億円)が今春同社大型SPA業態のMIXXO(ミッソ)とSPAO(スパオ)で日本に上陸することに関する記事が掲載されていました。

 日本1号店はMIXXO(ミッソ)、出店場所はそごう横浜店だそうで(3月下旬オープン)、以後アリオ、西武など年内にセブンアンドアイグループのSCや百貨店への出店が6店舗決まっているとのこと。

 その後、繊研新聞が2月27日から3月6日まで6回の連載でイーランドグループの強みを特集した記事をとても興味深く読ませて頂きました。

 正直、今のところミッソとスパオは日本市場では全く脅威にはならないでしょう。

 なぜならSPAO(スパオ)は2009年、MIXXO(ミッソ)2010年に両方ともグローバルSPAが韓国に進出してから見よう見まねで立ち上げた大型SPA業態で、まだ歴史が浅く、実績があるとも言えない業態だからです。

 スパオは昨年ソウルで視察しましたが、ユニクロとジーユーを足して2で割った感じ。

 よくもまあ、ここまで日米のベーシックカジュアルSPAをベンチマークしたな、と感心したのを覚えています。韓国国内で知名度を一気に上げるために、韓国のアイドル系芸能人多数をプロモーションに起用していたのが印象的でした。

 ソウルのグローバルSPAの競合事情とユニクロ(その3)

 当時 ミッソはマークしていなかったので、見逃しましたが報道によればZARAをベンチマークしたSPA業態とのこと。サイトを見る限り、ZARAというよりもっとシンプルなMANGO(スペイン)と言った方がよいかも知れません。

 MIXXO.COM

 また中国上海で見たイーランドグループの各業態。 

 中国でビジネスを拡大しようとする日本のアパレル企業の方々が口を揃えて「イーランドは凄い」といいますが、店舗を見る限り、それぞれのブランドがアメリカや日本のある特定の有名ブランドをベンチマークしたようなブランドばかりでちょっと呆れたのを覚えています。

 同社が以前公開していた財務諸表によれば、店舗数2400店舗超と中国全土に面取りはしていますが、販売効率は高くなく、高粗利率(70%前後)で利益を残す企業という印象を持っていました。

 E.LAND FASHION CHINA

 しかし今回の繊研新聞の特集を読むと同社に対する印象が変わります。

 思わず唸った内容を少しご紹介すると

○海外進出する際は徹底的に現地化、駐在社員はローカルに入り込み、通訳なしで現地語を使って商談、家族も現地のコミュニティに入り込むのが基本。

○SPAのビジネスモデルに磨きを掛けるためにベトナム、ミャンマー、インド、スリランカなどアジアに各数千人規模の縫製工場を買収、自社工場化して少ロット短サイクルに対応。

○日本攻略のために韓国釜山にコストの安い物流拠点を設立。グローバルに調達した商品を釜山に集め、検品、仕分け後に日本に週2~3回送り込める体制を準備中。

○イーランドグループは将来の事業多角経営のために新卒入社から15年で=40歳前後には経営者として手腕が発揮できるキャリア開発プログラムを持つ。グループには実際30代経営者、13年で社長になった人材が存在。

 記事を読んでいて、かつてどこかで耳にしたことのある成功企業の事例のような気がして、引き込まれました。

 要はハングリーで成長意欲がものすごく強い。

 その中に高度経済成長後、日本人が忘れてしまった何か?開拓者精神、起業家精神みたいなものを感じた次第です。

 彼らのビジネスがものまね、パクリだと穿って見ている間に追い抜かれてしまうかもしれない、日本の家電メーカーがサムスンに抜かれたように・・・

 そんな危機感を持ちながら、韓国イーランドが日本に送り込んで来る2つの業態を

 ちょっと気を引き締めて、そして中長期的な視点で見てみたいと思ったものでした。

 ZARA、H&M、ユニクロ、しまむら、ポイント、ユナイテッドアローズなど国内外の『勝ち組』企業の成功の秘訣、新常識をわかりやすく解説しました⇒

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