世界市場を勝ち抜くには布帛(ふはく)が重要
今回のタイトルは 4月8日付の繊研新聞に掲載されていた、今年9月に ポイント、トリニティアーツと経営統合するODMメーカー大手、ナチュラルナインの宮本社長の経営統合に向けたコメントです。
私はとても共感しますね、この言葉に。
アパレル業界の ものづくりは素材で大きく分けて、「カットソー」、「ニット」、「布帛(ふはく)」の3つに大別されます。
「布帛(ふはく)」とは、ファッション業界でない方には聞きなれない言葉かも知れませんが、
よく伸び縮みするジャージー生地(Tシャツやトレーナーに使われる)を使った「カットソー」でもない
糸を編んで編地を作って組み立てるセーターなどの「ニット」でもない、
基本的には伸び縮みの無い、織物生地を使った製品を指します。
代表アイテムで言うと、コート、ジャケット、シャツ・ブラウス、パンツ、ジーンズ、スカートなどがそれにあたりますね。
カットソー、ニット、布帛(ふはく)で 取り扱う素材特性、製品の製造工程が違うので、作る工場も、モノづくりの発想も変わってきます。
日本のアパレルメーカーの栄枯盛衰の歴史を振り返ると、
多くのカットソー出身のアパレルメーカーは衰退し、布帛出身のアパレルメーカーが堅く生き残っているという傾向があります。
これは商社時代に大手アパレルさんと一通りお付き合いさせていただいた経験からいうと、
カットソー出身のアパレルメーカーは何事も、結構 「どんぶり」だったことが多く、
布帛出身のアパレルメーカーは積み上げ式の採算を取る、結構きっちりしていたという企業体質に起因しているのではないかと思っています。
右肩上がりの時はスピード感のある前者が強いかも知れませんが、そうでない時代には「きっちりしている」後者が生き残ることは想像に難くありません。
これと同じことを、最近、グローバル競争に巻き込まれた日本のSPA企業の事情に重ねあわせて考えてみます。
日本のSPAで急成長したユニクロにしても、ポイントにしても、クロスカンパニーにしても、小売出身SPAで カットソーで成長したカジュアルウエア中心であることが共通点です。
価格がこなれていて、生産納期も比較的短いのがカットソーの強み。また、多少サイズがおかしくても、生地が伸び縮みしますので、着ることができてしまうというところもあります。
一方、グローバルで言うと、ZARAやH&Mも当然、カットソー商品もやっていますが、布帛に強い企業です。
布帛は伸び縮みしませんので、パタンナーをしっかりかかえ、どうしたら、お客さんに綺麗にフィットしながら、同時に着心地がよい服が作れるかを常に考えなければなりません。
本来服ってそういうものなんでしょうけどね。
カットソーで伸びた日本のSPA、布帛で鍛えられた欧州グローバルSPA、どちらに底力があるでしょうか?
楽ちん肌着屋に徹するのなら別ですが、ファッションで勝負しようと思ったら、私は布帛に強い後者に軍配が上がると思っています。
おそらく、ポイント社もそんな危機感から布帛に強いナチュラルナイン社との経営統合を決断したのでしょう。
パタンナーを軽視して、パターン(型紙)を中国などの工場任せにする日本型SPAが増える中で、グローバル競争にあたって布帛やパターン(型紙)の重要性をもう一度考えて欲しいと思います。
グローバルって、海外に行かなくても、グローバルSPAがじわじわ浸透している日本市場は・・・
日本にいながらにして、すでにグローバルの競争に晒されているのですよ。
弊社もそんな問題意識をもって、現在、今年の勉強会を準備中です。
来月、5月16日から再スタートする弊社主催のアパレル商品知識勉強会では
2人のレディース向けベテランパタンナーにお願いをして、毎月 ヨーロッパの服作りの基本を、ZARAの商品の魅力を研究することを通じて学びたいと思っております。
近日中に詳細の告知を行います。
執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
参考文献 「人気店はバーゲンセールに頼らない 勝ち組ファッション企業の新常識」(中公新書ラクレ)
いつもお読み頂きありがとうございます。
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