アメリカマーケットリサーチ報告(その2)~Anthropologie (アンソロポロジー)に見るライフスタイルファッションストアの条件
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アメリカに店舗視察に行かれる、特にレディースカジュアルブランドに携わる方々が最も注目しているファッションストアのひとつが「アンソロポロジー」でしょう。
「アンソロポロジー」は、アメリカの上場企業、アーバンアウトフィッターズ(以下URBN)社の第2の業態。
同社の基幹業態である「アーバンアウトフィッターズ」とともに、アメリカのライフスタイルファッションストアの代表と言ってもよいでしょう。
個人的には海外の日本未上陸ファッションチェーンで最も注目している業態です。
Urban Outfitters ウェブサイト
Anthropologie ウェブサイト
「ライフスタイル」って言葉、日本でもよく使われていますが・・・
ファッションストアがライフスタイルを名乗る場合、服や靴や服飾雑貨以外にアクセサリー、ファッション雑貨や生活雑貨をかき集めて品揃えをすればいいってものではないことは、アンソロポロジーを訪れるとよくわかります。
私が以前から(視察は10年ぶりですが)同社のアーバンアウトフィッターズそしてアンソロポロジーの両ブランドが好きなところは
誰のための店なのか?顧客ターゲット像が極めてはっきりしていて、それが長年ブレていないところです。
それは同社の創業ブランド、「アーバンアウトフィッターズ」業態の生い立ちを知ると納得できるでしょう。
1970年、フィラデルフィアの大学キャンパス内で1号店がスタートしたアーバンアウトフィッターズ(当時の店名はThe Free People’s Store)の顧客ターゲットは、大学に合格して親元を離れ、学生寮やアパートで独り暮らしやルームシェア生活を始めたアート、音楽、ファッションが好きな男女。
彼ら彼女らの生活シーンで必要なアパレル、アクセサリー、アパートメントウエア(アパートの部屋の中で必要なもの)&ギフトを品ぞろえしています。出店ポリシーは大学のある街というのも一貫していますしね。
そんなアーバンアウトフィッターズブランドを育てた会社だからこそ、その後、1992年に創業したアンソロポロジーの顧客ターゲットも顧客像(ペルソナ)から入っているわけです。
アーバンアウトフィッターズよりも大人の洗練された現代的な女性。コンセプトは”escape from the everyday”。 URBN社のIR資料によると28-45歳と客層は少々幅広いですが、商品カテゴリー軸ではなく、生活シーン軸で「顧客の生活シェア」をカバーしようということが考えられているストアであることは共通しています。
アンソロポロジーの店構えは、中米のリゾート地にある別荘にのような色使い、廃材やアンティーク家具を上品に使った内装が特徴。
平均売場面積 200坪弱の店内は、ターゲット顧客の生活シーンごとに売場が括られ、そのシーンに関連した商品が来店客の好奇心を掻き立てるように魅力的に陳列されています。
そのあたりが、ライフスタイルを名乗ってもそのほとんどが商品カテゴリー、つまり服は服、生活雑貨は生活雑貨と商品別に売場をくくりがちな日本のライフスタイルストアとの大きな違いではないでしょうか?
今回、LA界隈で5店舗、NYマンハッタンで2店舗のアンソロポロジーを視察しましたが、2つと同じ内外装の店はなかったものの、売場を構成しているカテゴリー(シーン)の共通項はおおよそ次の通りかなと思います。
1)植物のある日常
2)お出掛(外出)と旅行
3)リビング
4)ダイニング&キッチン
5)ベッドルーム
その他 店によって、小規模ですが、キッズ関連、ドッグ(犬)関連コーナーあり
日常から逃避した憧れの住まいの中にある、それぞれの部屋(カテゴリーコーナー)には
そのシーンに関連した 服がオリジナル、セレクト ミックスで スタイリング(ルック回転)陳列で提案され、靴、アクセサリー(関連グッズ)、ギフトがミックスコーディネートされています。 更にそこに必ず一緒に置いてあるのが、「コト」を提案する写真の豊富なハウツー本です。
具体的に言うとガーデニング、フラワーアレンジメント、テーブルアレンジメント、ピクニック、フランス旅行、料理本などなど。ときたまセレクトショップに置いてある、わかる人だけにわかるアート本や写真集ではなく、そこに置いてある意味がはっきりしている本なのです。
これらのビジュアルなハウツー本が、来店客をその生活シーンに感情移入させる役割を果たしているように思います。
そんなことに気づいたら、ふと、ヴィレッジヴァンガードが服屋をやったらどうなるかなと勝手に想像して楽しんでおりました(笑)。
また、個性的なアンティーク什器にも興味をもって見ていると、何やら手書きの値札がついていることに気が付きます。
なるほど、商品だけでなく、これらも売ってしまうんだな~ということに気が付きます。 現地在住の方によれば、什器(家具)もたまに売れて入れ替わって、売場の雰囲気も変わることがあるとのことです。
それから、必ず店頭ファサードにある多彩な観葉植物も、それそのものは売りものではありませんが、その時その時の季節感を演出し、季節とともに店頭の雰囲気を変える役者のひとりであることも間違いなさそうです。
独特の世界観の中で、ターゲット顧客の生活シーンを提案するだけでなく、来店頻度を高めるために、商品回転のみならず、店内を変化させる工夫を心がけている会社であることは
URBN社の在庫回転率(原価ベース)がアメリカのチェーンの中ではそこそこ高め(6.6回転;在庫週数8週)なことからも感じ取れます。 (参考 GAP社 5.6回転 J.CREW社 4.9回転)
以下 URBN社のIR情報から 同社、アーバンアウトフィッターズ、アンソロポロジーの基本情報です。
アーバンアウトフィッターズ(URBN)社(会社全体)
2013年1月期 為替$=97円で計算
売上高 2711億円 前年比113% 既存店売上高前年比 0.6%減
粗利率 36.9% (+2.1%)
営業利益 363億円 前年比131%
営業利益率 13.4% (+1.9%)
在庫回転率 6.6回転
アーバンアウトフィッターズ
全米 807億円 167店舗
インターナショナル 179億円 48店舗
計 986億円 215店舗
全米の平均売場面積 243坪
一店舗あたり売上高 4.8億円
月坪効率 165千円
プライスポイント(婦人シャツブラウス) $39.95
アンソロポロジー
全米 805億円 169店舗
インターナショナル 21億円 11店舗
計 821億円 180店舗
全米の平均売場面積 193坪
一店舗あたり売上高 4.7億円
月坪効率 205千円
プライスポイント(婦人シャツブラウス) $88
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