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March 22, 2014

既存ファッション流通の課題とスタートトゥデイのWEARの革新性

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 昨年10月末にスタートトゥデイがリリースしたコーディネートレシピアプリ「WEAR」のダウンロード数が100万件を突破し、WEARの知名度アップと更にダウンロードを増やすことを目的に3月19日からTV CMが始まりましたね。

 スタートトゥデイ「WEAR」初のテレビCM放映開始

 WEARのことを知らない人にはちょっとわかりづらいCMのように思いますが・・・

 スタートトゥデイはWEARにかなりの手ごたえを得て、今後の成長戦略に自信を深めた表れと言えましょう。

 先日 ある省庁が設置している流通を考える研究会から、専門家の立場からWEARについて、そしてWEARが登場したファッション流通の背景も踏まえて説明をしてもらえないかとのご依頼を受け、メンバーである官僚さんや大学教授さんたちにプレゼン&ディスカッションを行って参りました。

 資料をまとめ、プレゼンを行い、有識者の方々からの素朴な質問に答え、理解を深めて頂きながらディスカッションをする中で…

 ファッション流通の急所にあらためて気づかされ、WEARの革新性、凄さを痛烈に感じたのは…むしろ私の方だったかも知れません。

 WEARは ユーザー手持ちの服や服飾雑貨の活用のヒントを知り、更に買い足しを促進するファッションコーディネートレシピアプリであり、主な機能は次の通りです。

 ・バーコードスキャン(商品や納品書のバーコードを読み取り詳細情報を得る)
 ・コーディネート投稿(自分のコーディネート画像の投稿)
 ・クローゼットに登録(手持ちの服を登録する)
 ・コーディネートフィード(気になる他ユーザーの投稿通知を受ける)
 ・SAVE(お気に入り画像保存)
 ・SEARCH(アイテム、ブランド、ショップ検索)

 これら基本機能に加え、

 「今日のピックアップタグ」という

 参加者が頻繁にコーディネート投稿しやすくするためのトリガー(きっかけ)が毎日提示され、更新頻度を高めています。

 たまたまなのか?意図的だったのか ?

 スマホアプリのメニュー項目の一番上にバーコードスキャン機能があるため、多くのメディアにバーコードリーダーアプリ?として取り上げられ、

 業界内でショールーミング(商品を店舗で見るだけ見て、ウェブで買う行為)を加速させるアプリとして物議を醸したものでした。

 しかし、各機能と狙いを知れば知るほど単なる商業施設とウェブストアの商品売上の奪い合いという点の話より、もっと根深いところに本質があるように思えて来ます。

 日本のファッション流通の実情は…

 商業施設が販売効率を重視した結果、ワンブランドで駅ビルでも20坪、郊外ショッピングセンターでも40坪くらいのお店が圧倒的に多いものです。百貨店に至ってはもっと狭いところも多々ありますね。

 またファッション商品の販売期間は一般的に8週間程度とホントに短いのが実情です。

 そんな狭い店舗スペースと短い商品寿命の中でブランド側も店頭で一度に紹介できる商品は限られますし、

 お客さんも狭い店の中で、限られた選択肢の中から、時には販売スタッフさんにプレッシャーをかけられながら?短時間での選択を迫られるわけです。

 買う側としては、本当は自分が持っている他ブランドの服との相性も確認した上で買うか買わないかを決めたいところ、

 狭い店舗の中でそのブランドの限られた商品との相性しかわからない環境で意思決定をしなければならないのです。

 これに対してWEARとZOZOTOWNの狙いは

 そんな一般顧客にとって窮屈?とも言える既存ファッション流通が出来ないこと

 ○顧客の手持ちの服とのコーディネート

 ○他ブランドとのコーディネート

 ○身近にいるおしゃれな子だったらそのアイテムを使ってどういうコーディネートをするか

 という誰もが頭を悩め、関心をもっている日々のコーディネートのアイデアやヒントを提供しながら…

 更に店頭にある商品だけでなくは、狭い店頭に置き切れなかった商品、相性のよい他ブランドの商品までもユーザーのコーディネートの選択肢として提案するわけです。

 WEARが革新的なところは

 作り手(ブランド企業)の思惑だけではなく、SNS形式にすることによって

 ユーザーである一般消費者やユーザーにより近いショップスタッフやカリスマモデルよりも身近に感じられる読者モデルが参加することによって協同で作り上げる

 毎日リアルタイムで更新されるファッションマガジン

 の構成になっているところですね。

 ネットで情報をとり、取捨選択する現代のユーザーにとって、そんなユーザー参加型情報は

 企業発信情報よりも信頼性の高い、最もファッション購買を左右する情報源のひとつになり得る存在と言えましょう。

 これ、うまく年代別テイスト別にカテゴライズしたら、もしかして世の中のファッション雑誌なんて要らなくなっちゃうんじゃないか?とすら思えて来ます。

 以下の数字は既述のプレゼン用資料の参考資料にさせていただいた2月20日付の通販新聞に掲載されていたWEARに関する数字です。

・ダウンロード数 100万件

・1月の月間利用者数 240万人 女性65%、20代後半が最多

・コーディネート投稿 累計20万件

・SAVEされた画像 累計1700万件

・クローゼットに登録 累計620万件

・バーコードスキャン数は想定を下る

・WEAR経由のZOZOTOWNの売上 月間1億円

・コンバージョン率12%

 着用アイテムにアイテムとブランドのタグが付いた 20万件超のコーディネート投稿・・・

 この部分だけでもすでにファッションに関心のある一般ユーザーにとって日本最大級のファッションコーディネートのアイデアの宝庫、データベースになっているのではないでしょうか?

 そしてあまりクローズアップされない機能ですが、

 登録ユーザーのフォルダー内にSAVE(保存) された1700万件の画像や

 SEARCH(検索)されたアイテム、ブランド、ショップなどの検索結果は・・・

 スタートトゥデイだけが持つ、世界中のファッションブランドが喉から手が出るほど欲しがるマーケティング情報でしょう。

 スタートトゥデイはダウンロードを促進し、参加者を増やすだけでWEARのファッションマーケティング情報の宝庫としての価値はますます高まりますし、

 WEARに沢山の人が集まり滞留時間が長くなればなるほど、それに応じてZOZOTOWNの売上も上がるというわけです。

 そんな全体像からすれば、大騒ぎになったバーコードスキャン機能なんてユーザーが商品情報を手軽取り込むための補完機能のようなもの。

 WEAR、スタートトゥデイ恐るべし。

 WEARのブランド検索を観ていて・・・既に画像が1000以上投稿されているブランドが何ブランドもありますが、その先を見る目とフットワークは流石だと思います。

 一方、検索しても現段階では全く画像がないブランドも、今からでも遅くはないと思います。これからコーディネート投稿が増える施策を考えるべきでしょうね。

 この輪の中にいないと未来のファッション消費から置いていかれてしまう、という危機感をもつべきでしょうね。

 そんなWEARが始めた新しいファッション流通革新を讃え・・・

 WEARを顧客自らがスマホで楽しむだけでなく、

 ブランドも商業施設もWEARに相乗りするか?自前でやるか?にかかわらず

 ブランドやショップスタッフが顧客にわかりやすく、有益なコーディネート情報をウェブ上で発信すると同時に・・・

 店頭ではお客さんとショップスタッフたちがiPadなどのタブレット端末を使って、一緒にコーディネートのアイデアを楽しんだり、最適なアイテムを探したりして、購入のお手伝いをすることができる 

 オムニチャネルリテイリング時代の近未来のファッション消費の現場とは、そんな風景を指すのだと思っています。

 関連エントリー-WEARとショールーミング議論、その向こう側にある顧客の購買行動


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