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June 02, 2014

バーバリーショックを越えて

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 5月に業界で最も話題になったニュースは 三陽商会が2015年6月をもって英バーバリーとのライセンス契約を終了することを正式に発表したことに関する報道だったでしょう。

 同社としての正式発表は今年の5月19日になりましが、アパレル業界では「2015年問題」として5年くらい前から話題になっていた話で、そのころ(2010年8月)当ブログでもこのようなエントリーをアップしていました。

 バーバリー、ポロ・ラルフローレンのアジア店舗の直営化が進む

 計画的な人員削減を中心としたコストカットや代替えブランド探しを進めてきたため、業界の中では判っていたこととの認識が強かったとは思いますが、同社の正式発表がこのタイミングになったのにはいろいろな事情があったのでしょうね。

 翌日(5月20日)報道した日経新聞などによれば

 三陽商会は1965年からバーバリーコートのインポートを始め、1970年から三井物産と組んでライセンス生産をスタート。

 今回ライセンス契約を終了する「バーバリー・ロンドン」ブランドの同社売上(2013年12月期1063億円)に占める割合は2割強、
 
 現在、「バーバリー・ロンドン」の百貨店には300の売場があり、

 もう3年間ライセンス生産を継続するというブルーレーベルとブラックレーベルを含めると「バーバリー」ブランドへの依存度は同社の売上の約5割になるとのことですから

 同社にとってバーバリーを失うことの痛手が大きいことは、いまさら言うまでもありません。

 これまでの同社に関する報道を見ていると ポールスチュアート(米)、マッキントッシュ(英)、プリングル(英)など、やはりライセンスブランドによる置き換えを模索されているようですね。(ポールスチュアートは現在、三井物産の子会社になっているようですが)

 当面の間は 百貨店300拠点の穴埋めが緊急課題だと思うので、名の知られたトラディショナル系のライセンスブランドによる置き換えが正攻法な進め方だと思いますが・・・

 同社には次世代に向けて是非、ブランドライセンスだけに頼らないビジネスモデルを再構築していただきたいと思います。

 5月26日の繊研新聞に関連記事として、これまでの海外メジャーブランドとのライセンス契約打ち切りの事例記事が掲載されていました。紹介されていた3社の数字を引用させていただきます。 

 社名         ブランド名        契約解消年 当時の売上規模
 鐘紡      クリスチャンディオール  1997年    380億円
 デサント      アディダス        1997年    390億円
インパクト21  ポロ・ラルフローレン    2007年    307億円
(オンワード樫山)

 また、翌日の同紙には、立ち直りがうまく行っているデサント社の事例が紹介されていました。

 この記事は、さすが繊研さん!と思いましたね。

 アディダスとのライセンス契約解消によって、当時(1998年)年商1000億円弱の売上の4割、利益の5割がなくなったデサント社はその後、

〇 アジアで売上を伸ばして海外売上比率を高め (2013年 海外売上比率48%)

〇 売上の80%がアジアで商標権を取得しているブランドまたは自社ブランドによる売上

とライセンスブランド依存から脱却して 14年3月期には年商1099億円と1000億円台を回復されたようです。 これはお見事!です。

 デサントの「脱ライセンスブランド依存経営」、「海外売上拡大」も大変参考になる事例だとは思いますが、

 もうひとつ、三陽商会さんならではの強みを発揮していただきたいことがあります。

 それは もちろん・・・時代に合わせた 持ち前の技術力の発揮です。

 結論を先に言えば、

 H&Mの「COS(コス)」のような「手の届くラグジュアリーSPA」を三陽商会さんの技術を結集して実現できないでしょうか?という話です。

 以前、こんなエントリーの中でも話題にしましたが・・・

 世界市場を勝ち抜くには布帛(ふはく)が重要

 私が商社で国内生産、海外生産の営業をしていたころ、勤務先が大手アパレルさんと一通りお取引があったため、すべてのアイテムを取り扱う「総合アパレル」と呼ばれていても、それぞれのご出身によって会社の体質に大きな差があって、

 その中でも、カットソー(メリヤス)出身のところはこんな「どんぶり勘定」でいいのかな?と思っていましたし、

 一方、布帛(ふはく;コート、ジャケット、シャツ、パンツなど織物素材で作るアイテム)に強く、技術を大事にして、積み上げ式のコスト管理をしていた会社は厳しい時代にも確実に生き残ると予感していたものでした。

 振り返れば、歴史がそれを証明してくれたような気がしています。

 今、三陽商会さんは大変な状況にあるとは思いますが、私が当時(1990年代)、将来、確実に生き残ると思ったs何社さんかの筆頭でしたから・・・そんな立派な会社さんが今回のショックくらいで、ダメになってしまってはいけません。

 それは、日本の次世代のアパレル業界の未来のためにもです。

 積み上げ方式を熟知しているということは、裏を返せば、上手な引き算も出来るはずです。

 その技術と研究手法を是非、SPA(アパレル製造小売業)のバリュー顧客還元型ビジネスモデルでフル活用していただきたいと思います。

 ベンチマークすべき事例は・・・やはり、今、日本でも注目されはじめた、H&Mの「COS(コス)」ではないでしょうか?

 規模と価格で追随を許さない、世界のファストファッションの雄、H&Mが次世代に向けて開発し、世界で店舗拡大中の業態。

 ファストファッションの改良版であり、ファストファッションと共存する「手の届くラグジュアリー業態」です。
 
 COS HP

 以前、ブログやフェイスブックのヨーロッパリサーチや香港リサーチの中でも ご紹介しましたが、

 ヨーロッパファッションストア見聞録 パリ~バルセロナ~ロンドンのまとめ

 

 まだCOSを見ていない方に私の個人的な印象をお伝えすると

 「ジルサンダーにZARAを任せたら?」

 みたいな 素材感を大切にした、ミニマルシルエットの大人のコンテンポラリーベーシックSPA。

 ファストファッションが着用できるのは1シーズン?に対して、Timelessをテーマにした数シーズンの着用に耐えうる定番アイテムの多い業態です。

 日本のセレクトショップ好きの方々には受けること間違いなさそう、と思っています。

 単価も シャツブラウスあたりで、
 H&Mが ヨーロッパ大陸で€19.95のところ €49~59と 倍以上にはなりますが、そもそもH&Mが激安なので、品質と価格のバランス、バリューは個人的にはH&Mよりも断然納得が行きます。
 
 2007年 ロンドンからスタートし、今、香港まで来ており、今年は韓国に進出するようですので、日本上陸も間近でしょう。

 COSの末恐ろしいところは 中国にアトリエと専用サンプルラインを持っていて、試作によって、品質とコストのバランスを研究し、実現したい価格で、実現したいクオリティを実現すべくサンプリングやコストを試算した上で量産工場に発注をするというプロセスをとっているところです。

 そんな 技術研究や上手な引き算がわかっていないとできない芸当は・・・日本のアパレル業界、特に大手の中ではそう何社もないでしょう。三陽商会さんはそのポテンシャルを持った最右翼だと思っていますから。

 海外から話題の有力チェーンが上陸する時

 GAP上陸時のユニクロにしても、H&M上陸時のユニクロにしても、タイガー上陸時のASOKOにしても 

 その相乗効果の果実を享受する日本企業が登場するもので、COSが上陸するころに業態開発が間に合えば言うことはありません。

 旧世代型のライセンスビジネスと新世代向けの手の届くラグジュアリーSPA

 急場を乗り切ること と 未来への投資と ちょうどその分岐点にいらっしゃる同社が 

 これからどうバランスをとって行くのか? 

 社内事情を存じ上げない、勝手な話しで、大変恐縮ですが・・・

 いずれにしても、バーバリーショックを越えて・・・ 経営資源を次世代に向けた方向で活用して乗り切っていただきたいという気持ちでいっぱいです。

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