« トップショップ(TOPSHOP)国内5店舗が1月末で全店閉鎖 | Main | ユナイテッドアローズ(UA)のセールに頼らない仕入れと販売の仕組み »

February 09, 2015

ユニクロの客単価アップに見る値下げコントロールの緻密さ

 クリックして人気blogランキングへ

 アベノミクスの円安誘導による輸入原価の高騰はファッション流通のもっとも大きな経営問題のひとつ。

 振り返ってみると、対ドル円為替は2013年の1年間で16%、2014年には更に15% 2年間で実に約33%も円安に振れたわけですから・・・

 流通の90%を輸入に頼るアパレル経営に影響がないわけがありません。

 ただ、価格設定に対する企業の迷走も消費マインド減退に拍車をかけていることは間違いなさそうです。

 原価上昇分をそのまま販売価格に転嫁したり、販売価格を維持するために素材の品質を落としたりしたところの業績は低迷。 一方、企業努力をして、品質や価値を落とさず緻密な価格コントロールに取り組んだところはしっかり顧客の支持を得ているようです。

 その後者の最たる例がユニクロではないでしょうか。

 2015年8月期 14年9月から15年1月までの既存店売上高前年比は108.4%、客数98.5%、客単価110%。 

 客数をさほど落とさず客単価アップを実現したのですから、さすがユニクロ、見事なものです。

 この傾向は 昨年の8月くらいからずっと続いているものです。

 ユニクロの円安、輸入原価アップを受けての単価アップの要素はいくつかありますが、

 おおよそ次の3つではないかと思います。

 1つめは、ユニクロは2014年秋から消費税8%を外税にしています。

 消費税増税前の前年と比べると、1990円(税込み)が1990円(税抜き)ですので、8%の値上げとなります。

 2つめは、一部商品のプライスポイントの変更。

 主に ニット、スウェットあたりを、これまで1990円中心だったのに対し、2290円(税抜き)の新価格を導入 15%相当の値上げ。

 3つめは、値下げ価格の変更です。 これは毎週新聞に折り込まれるチラシを見ていたら気づくことですが・・・

 2013年までは 期間限定値下げと言えば、1990円が1290円というのが非常に多かったです。これに対して、2014年は圧倒的に1490円中心です。

 1290円→1490円 これだけで、15%の値下げ抑制=値上げにつながります。

 関係者によれば、ユニクロの場合、ざくっと約半分が定価、約半分が値下げ価格で販売されているようですが、

 普段、ユニクロでは定価で買うことに抵抗がない客層にとっては 1990円が8%値上げになったところで、あるいは2290円になったところで、ユニクロの品質であれば、割高感は感じられない、むしろまだまだ安い?という印象でしょうか。

 一方、チラシの期間限定値下げを狙って買うプライスコンシャスな客層にとっては、1990円が1290円から1490円プラス税になっても、まだ1990円よりお買い得というわけで・・・

 細かい値上げや微妙な値下げコントロール(おおよそ10%の単価アップ)も客数減にはほとんどつながらなかったという話でしょう。

 もっとも、日頃から価格に対して「品質がよい」という定評のユニクロだから通用した価格コントロールとも言えますが、

 円安になったからこれまで2900円だったプライスを一律3900円にという風に、作り手、売り手の都合で一律積み上げ方式で値上げを断行し苦戦しているブランドとは、客層別購買心理に対する配慮、その緻密さという点で一線を画していることは間違いありません。

 メディアや株式市場はデフレ脱却、値上げを歓迎しますが・・・

 顧客があからさまな値上げや価格の迷走を快く受け入れるとは思えません。

 とは言え、いかに売上利益を捻出するかを考えた時、知恵をひねって、より緻密な戦略の使い分け、価格に対する明確な方針が必要というわけで、そのあたりは商売人企業ユニクロなどを見習うべきでしょうね。

 余談になりますが、値上げをしても売上が前年並みに取れ、利益が上がったりする時ってあります。

 一品単価が上がって客単価が上がっているわけですが、そんな時、是非、気を付けていただきたいのは、同時にどれだけ客数が減ったか見ていただきたいということです。

 経験的に前年比90%を切り、85%を下回っている客数を単価のアップでカバーしている時は要注意ですね。

 バイヤーって、基本的には「いいもの」買いたいんで・・・単価が高いものも十分売れるじゃないか?と図に乗って翌年も同じことを繰り返す、あるいは更に拍車がかかると、翌年は客数が更に減り、単価アップでは客数減がカバーできなくなります。

 なぜなら、初年度、高くて買わずに帰った人が15%、高くなったなと感じても、せっかく来たのだから買って帰ろうとしぶしぶ買った人も10%以上は含まれるからです。前者はもちろんですが、後者も翌年来店して高いなと思ったら買わない可能性が高いからです。

 業界に長年いますが、多くの企業がそんなことを繰り返して、ほとぼりが冷めるとまた繰り返す実例をたくさん見て来ました。

 自らの失敗体験も含めて(笑)

 【お知らせ】

 「ユニクロ対ZARA(ザラ)」単行本 ソフトカバー(日本経済新聞出版社)

 おかげさまで5刷、今年は中国、台湾、韓国で訳本が出版されます。

 ベーシックカジュアルの価格と品質の常識を変え日本一のアパレルチェーンとなり、世界一を目指して突き進むユニクロとトレンドファッションの価格の常識を変え、世界一となったスペイン インディテックスグループの基幹ブランドZARA (ザラ)。

 既存のファッション流通の常識に挑んだ2つのブランドの真逆のアプローチ、ビジネスモデル、2人の起業家が考える顧客満足、経営信念、人材育成、今後の成長の可能性まで・・・

 10数年両ブランドをウォッチし続けた専門家の立場から両者の成長の舞台裏をわかりやすく解説しました。

 

 前著 「人気店はバーゲンセールに頼らない」はKindle版が発売されました。

 


 いつもお読み頂きありがとうございます。
こちらのアイコンをクリックして応援よろしくお願いします!

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
blogrankings2  ビジネス・業界ブログランキング 【第1
位】→stay (15.2.10現在)


 

| |

« トップショップ(TOPSHOP)国内5店舗が1月末で全店閉鎖 | Main | ユナイテッドアローズ(UA)のセールに頼らない仕入れと販売の仕組み »