日本からもZARA(ザラ)のように母国と近隣国でつくり世界に売るグローバルSPAが生まれないだろうか?
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1月30日(金)の繊研新聞に先日東京ビッグサイトで開催された2015年1月展JFW-IFFセミナーで 私が講師を務めさせていただいた
「書籍『ユニクロ対ZARA』より 今こそODMはSPA化を目指せ ZARA創業者オルテガ氏に学ぶ起業家精神」
の講演内容をまとめていただいた記事が掲載されました。
拙著 「ユニクロ対ZARA」(日本経済新聞出版社)は 手前味噌になりますが、いろいろな読み方ができる書籍と思っていますが・・・
講演ではIFF内にOEM企業やODM企業のSPAビジネスマッチングエリアがあったので、これまで専門店に販売してきた企画力のある企業さんの刺激になればと思い、
特に製造業からSPA(アパレル製造小売業)化を果たしたZARA(ザラ)の創業者アマンシオ・オルテガ氏がどのようにSPA化を果たし、何を大切にしてグローバル展開をしてきたかを中心にお話しました。
SPAと言えば世界を見渡してもH&M、ユニクロ、GAP、国内でもポイント、パル、クロスカンパニーなど小売出身SPAに圧倒的に勝ち組が多いもので、製造業(デザインチームと製造機能を傘下に持ったアパレルメーカー)出身のZARA(ザラ)はとても稀な存在です。
ただし、製造業出身だからこそZARA(ザラ)のインディテックスグル―プは売上世界一になっただけでなく、利益率および利益の安定性でも突出している理由もあります。(その理由は是非拙著をお読み下さい)
また、日本の多くの企業もそうなのですが、世界には中国など人件費の安い国で作って、経済大国(アメリカ、日本、ドイツ、イギリスなど)に売り込んで拡大した企業が多い中
ZARA(ザラ)は母国スペインおよび近隣国(ポルトガル、モロッコ)を中心につくり世界に売り込んで成長したところもユニークな生き方と言えます。
もっとも国際展開に関しては、
人口約1億3千万人、GDP世界トップクラスの経済大国日本では企業は、まずは日本でどれだけビジネスを拡大できるかに集中しようと考えるのが普通でしょうし、
(アメリカの流通業も同様です)
一方、スペインは人口約4600万人、GDPに関してはヨーロッパで5番目の中規模国ですから、早くから国内ビジネスに限界を感じてグローバルに売り込もうと考える違いもあるかも知れません。
(これはスウェーデンのH&MやIKEAも同じ)
また、コストの観点から見ても、スペインの製造業の工員工賃は日本よりは安いですが(おおよそ7掛け)、中国より高いです(約3.5倍)。 (JETROホームページより)
それなのに、どうしてZARAは決してコストが安いとは言えない母国および近隣諸国での生産にこだわったのか?
それは、
シーズン性のあるファッション商品の販売期間が短く、トレンドはいつ変化するかわからないから、顧客の需要をすぐに具現化するために、店頭と商品企画と製造現場を最短距離で結んで、目の行き届くところで、コストは高くても、無駄な在庫を抱え込まないように必要な分だけつくる、コストはかかっても、空輸などできるだけ速く届ける、それにより、できるだけ値下げをしないで売り切ることによって、
店頭での顧客満足と企業利益の折り合いをつけて来たからと言えます。
多くの企業の現実 コスト<値下げ
ZARAの考え方 コスト↑<値下げ↓ ⇒ 利益↑
また、執筆後、スペイン大使館商務部に御礼をしに伺った時に、
スペイン人は母国に愛着がある、とおっしゃっていた話も とても印象的でした。
執筆中に思い続けていたことのひとつに
ZARAのような企業がなぜスペインで生まれ、どうして日本で生まれなかったのか?
という疑問があります。
果たしてこれは 国内のコストだけの問題だったのでしょうか?
オルテガ氏が創業したころ、お金がなくて、生地屋さんから掛けで買った生地を自らトラックで工場に運び、裁断し、縫い場に届け、自ら店頭に届けて、店頭で回収したキャッシュを持って支払ってまた生地を買うことを繰り返し、お兄さんと二人でスペイン中をトラックで走り回る毎日だったという話を知りました。
まさに、自己完結型の一人SPA、今や世界一の企業のオーナーもそんなところから始まったんですね。
余談ですが・・・そんなオルテガさんの創業秘話を知った時、昔、私が国内アパレル生産に携わっていたころにお付き合いをさせてもらった縫製工場のオヤジさん、自ら裁断した生地を内職に持って行き、縫いあがった商品を回収してプレス工場に届けて、そこから客先に出荷していたオヤジさんの姿を思い出しました。
あのオヤジさんは果たしてご健在なのか、今どうしているかわかりませんが、もし、あのころ起業家精神が強かったらひょっとして・・・なんて夢みたいなことを想像してしまいました(笑)
日本の製造業、流通業の分業は確かに日本経済を支えて来ましたが・・・
これからも いままで通りの分業のままでいいのでしょうか?
小売業の下請けのため、安く出さなければ成り立たない売値?
商品の良さを消費者に直接伝えられない歯がゆさ?
聞こえて来ない、実感できない消費者の本当の需要?
円安、原価が上がる昨今、流通においてもイノベーションが求められています。
流通にとってのイノベーションとは技術や発明ではなく、
それまでの流通の常識を変えて 良いものをたくさんの人たちに届け、消費を豊かにすること。
今でも小売出身SPA企業は安くつくって値下げをすればいいと思ってはしないか?
デフレ時代の勝ち方はそれでよかったかも知れませんが・・・
原価が上昇する局面では
原価が高くても適正価格をつけて 値下げを抑える、
あるいは
今まで 手が届きづらかった良いものを流通イノベーションによってこなれた価格を実現して提供する
ことを目指す時です。
特に後者を目指す場合は ZARAのように 製造現場のことをよくわかっている企業さんが店頭の需要とスピードを理解した上で行う方が うまく行くかも知れません。
もし、売り先のバイヤーがそんな時代を理解できずに、安いモノづくりを要求し続け、悶々としながら経営を続けるのなら・・・
ZARAの創業者オルテガさんが 簡単にキャンセルをしたり、マーケットを理解していないバイヤーに失望して自らSPA化を果たしたように・・・
日本のOEM、ODM企業さん、アパレルメーカーさんでも自ら 日本発 次世代型製造業出身SPAを立ち上げる時かも知れません。
そんな志のある経営者さんいらっしゃれば是非応援したいと思っています。
【お知らせ】
「ユニクロ対ZARA(ザラ)」単行本 ソフトカバー(日本経済新聞出版社)
おかげさまで5刷、今年は中国、台湾、韓国で訳本が出版されます。
ベーシックカジュアルの価格と品質の常識を変え日本一のアパレルチェーンとなり、世界一を目指して突き進むユニクロとトレンドファッションの価格の常識を変え、世界一となったスペイン インディテックスグループの基幹ブランドZARA (ザラ)。
既存のファッション流通の常識に挑んだ2つのブランドの真逆のアプローチ、ビジネスモデル、2人の起業家が考える顧客満足、経営信念、人材育成、今後の成長の可能性まで・・・
10数年両ブランドをウォッチし続けた専門家の立場から両者の成長の舞台裏をわかりやすく解説しました。
前著 「人気店はバーゲンセールに頼らない」はKindle版が発売されました。
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