正しい在庫管理には情熱と執念も必要
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5月19日の日経新聞 私の課長時代(上) に掲載されていた大手百貨店グループJフロントリテイリング山本社長の新入社員時代のエピソードから
新卒入社後、大丸百貨店神戸店家庭用品売り場に配属になった山本氏は、口ではマーチャンダイジング、マーケティングと言いながら部門別金額(ダラー)管理しかできていなかった百貨店の現実に直面。
POSもなく単品管理もできていない現実に驚き、毎日仕入れたものを自ら単品ごとのリストを作り、毎週棚卸をしては 売れ筋や商品のサイクルをつかんでいた毎日。
前例のない、誰もやらない面倒なことをし始めた新入社員(山本氏)は周りから「変なヤツ」と見られていたとのこと。
しかしながら、この時のこの苦労が後の百貨店人生で非常に重要な経験になったと振り返っていらっしゃいます。
この話を読んで思い出したのが、私のIFIビジネススクール時代の同期生、松屋百貨店の名物イベント「銀座の男市」で大活躍するカリスマ紳士服バイヤーの宮崎俊一氏がまだ20代後半だったころのエピソード。
当時、データもなく、店頭でどんなスーツが売れているか?数字で掴めなかった彼は・・・
諦めることなく、毎日お直し伝票を一枚一枚めくり、記録を付けて顧客の嗜好を分析し、次の仕入れの参考にしていたという話です。
当時、この話を聴いてとても感心し、20年経った今でもその時の情熱的に語る彼の語り口を今でも覚えているものです(笑)
果たして今、百貨店はどこまで販売や在庫のデータが把握ができているのでしょうか?
続いて 私自身がアパレルチェーン勤務時代、服飾雑貨のバイヤーになりたての頃の話です。
前任者から引き継いだ靴の在庫は既に在庫予算オーバーで、せっかくバイヤーになったのに、
仕入予算ゼロ=買えないバイヤー
という逆境からのスタートでした。
店頭に行けば売れそうな商品は並んでいるのに売れない、在庫が減らない(汗)
理由は・・・商品そのものは売れる商品であるにもかかわらず、各店のバックヤードの在庫はサイズの歯抜けだらけで・・・全店でサイズ欠品が起こっている状態でした。
せっかくお客さんが気に入って、試し履きをしたいとリクエストがあっても、その店にお客さんのサイズ在庫がなく・・・お断りをして、お客さんをがっかりさせている状態であることがわかりました。
店頭販売時代はサイズの多いジーンズやパンツの接客を積極的に行っていたので・・・
サイズ欠品が売り逃し、顧客不満足、ひいては在庫過多を引き起こすことは痛いほどわかっています。
こちらの会社では、POSシステムは導入済みだったものの・・・
靴という多サイズの品種であるにもかかわらず、なんと、品番単位の管理しか行われておらず・・・
在庫のサイズの内訳が把握がデータでできていなかったので、何とかサイズ管理ができないか?と考えました。
店に行ってタグをサイズ入りバーコードに付け替えたり・・・
店から商品を分割して倉庫に返品してもらい、サイズ管理のできるバーコードタグに付け替えて店に戻したり・・・
数か月かけて靴の全商品のサイズ管理ができるようにしたものでした。
そうすると・・・みるみる売上が上がり、在庫が減り、仕入枠ができたのです(喜)。
そう、自分がバイヤーとして、同一店舗にサイズを揃えて売り逃しを無くすために集約の店間移動ができるようになっただけでなく・・・
その過程においても、各店が正しいサイズ在庫が把握できるようになって、言われなくても、喜んで客注を取ってくれるようになって勝手に売上を上げ始めたのも大きな理由でした。
この時の体験がその後の在庫コントロールの基礎のひとつになっていることは間違いないでしょう。
そして 現在、クライアント企業さんの中にも、
バイヤーが適正仕入をしたり、ディストリビューターが店舗在庫の最適化を図ったりするために、正しい在庫の把握に貪欲な社風の会社さんが何社さんかあります。
そういった企業さんでは棚卸の頻度も高く、どうしたらできるだけ棚卸ロスを起こさないか、在庫データを正しく捉えられるかの商品管理の取り組みにも非常に意欲的です。
話は変わりますが、
時折、経営者さんから バイヤーやディストリビューターは数字に強い人でなければ勤まらないか?というご質問を頂きます。
私は データ(数字)に強いというよりも、(データを通じて)実体を的確に掴みたいという好奇心、ハングリー精神が第一で・・・
そして、何か気づきを得たらすぐに行動に移せるフットワークのよい商売人であれば十分です、
とお答えします。
そんな方なら、数字は苦手とかPCはちょっと、と言っていても、ちょっとご指導すればEXCELだって喜んですぐに使いこなせるようになりますから・・・
今、業界の中で、ECの拡大が進み、リアルタイムな在庫の把握の必要性が高まり、売り逃しが顕在化して、
以前よりは、在庫のどんぶり勘定から正しい在庫の把握への関心が高まっていると思います。
また、将来、RFID(ICタグ)による在庫把握の高速化もとても有り難いことだと歓迎しています。
しかしながら、その裏側には 正しいデータを掴むために、メンテナンスにも配慮しながら、お客さんのために素早く行動したい、という「情熱」と「執念」が支える緻密さがなければ・・・
ITの進化によるデータ把握も 上っ面の議論だけのもの終始してしまうのではないかと思っています。
だって、データってものは 「これは間違っている、信頼できない」と感じた瞬間に見なくなってしまうのが人の常ですから。
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