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6月4日の繊研新聞に セレクトショップ大手 ビームスがショッピングセンター向けに展開するファミリー層向けカジュアル業態「ビーミング・ライフストア」(日本全国21店舗を展開)で この秋から時代性にとらわれない、いわゆる定番アイテムをすべて日本製で提供する新ライン
「ビーミングベストベーシック」
を発売することに関する記事が掲載されていました。
記事によれば アイテムと産地と価格は以下の通りです。
カットソー(大阪) 6900円
スウェット(和歌山) 11000円~13000円
ボタンダウンシャツ(千葉) 9500円
デニム(岡山) ジャケットで 13500円~15000円
チノパン(岡山) 11000円
ニット (群馬) ホールガーメントで 9000円~11000円
ショッピングセンター(SC)の中でも、比較的感度が高い客数の多い近郊駅前SCに出店する「ビーミングライフストア」とは言え これまでのプライスポイントが
カット 3900-4900
シャツ 6900-7900
パンツ 6900-7900
あたりと見受けられるので 1.3-1.4倍くらいの価格でしょうか?
本家の都心型「ビームス」並みの高価なラインとなるようです。
もっとも、定番アイテムと言うよりは それとは別枠の「メイド・イン・ジャパン・コレクション」という位置づけで考えればよいわけで、
ビームスが タイムレスベーシック x メイドインジャパン のお題で
どんな感度とクオリティで提供してくれるのかを楽しみしたいと思います。
ところで 「定番アイテム」と言えば どんな専門店にもある商品ですが・・・
クライアント企業さんとよくする 定番=ベーシックアイテムに関する議論があります。いい機会ですので、簡単にご紹介しておきたいと思います。
ファッション専門店には毎シーズン シーズントレンドとベーシックアイテムが共存しているのが常で、その品ぞろえのバランスが大切だと言われています。
その中でも、ベーシックアイテムは実はとても重要でその商品の在庫状況が売上目標に届くかどうかの決め手になると言っても過言ではありません。
それはベーシックが「目的買い商品」であるとともに、「ついで買い」、「まとめ買い」を促す役割を果たしているからです。
チェーンストア用語では トレンドを「シーズナル」、ベーシックを「ステイプル」と言います。ステイプル=文具のクリップの役割は複数のものをまとめることであり、その意味から名づけられたものです。
つまり、シーズン(トレンド)商品を目指して買いに来店されたお客さんが、ステイプル(ベーシック)商品をついでに買ったり、まとめて買ったりする
すなわち 一人当たりの買い上げ点数(業界ではセット率やパック率や関連販売率と言います)を押し上げる重要な役割を果たすのです。
買上点数アップには、プッシュ型接客や豊富な雑貨の品ぞろえも大事ですが・・・
このベーシックアイテムの重要な役割、店頭現場は気付いていても、商品部バイヤーは意外とないがしろにしている会社さんが多いのではないかなと思います。
トレンド商品を買う人はベーシックをついで買いするかも知れませんが、ベーシックを買う人はトレンド商品をついで買いするとは限りません。
トレンド商品を買う人よりもベーシック商品を買う人の方が客層の幅は広いです。
ベーシックの重要性は、かつて、ベーシックはユニクロで買えばよい、とあえて品ぞろえを全面カットしてしまい、前年比30%近い売上を落としたあるセレクトショップが・・・
その後、ベーシックをあらためて品ぞろえし始めたところ売上がV字回復したという業界の有名な教訓が物語っています。
理由は既述の通りで、どんな高感度なお店でも、店格なりのベーシックが必要というわけです。
それゆえトレンド商品は売り切り御免でも 次の新しい魅力的な商品が入っていればよい、
一方、ベーシック商品は欠品させてはいけない。
財布のひもが緩んだお客さんのついで買いまとめ買いを誘うため、ベーシックはトレンド商品よりも安い、買いやすい値段がよい。
ところが、シーズントレンド商品を買いすぎて、ベーシックの仕入枠がなくなり、売上を落とす(涙)なんてことよくありますし、
逆にベーシックを自社開発でしこたま仕込み過ぎて、シーズン立ち上がりに一気に引き取ってしまい、仕入予算いっぱいで、シーズン中の売れ筋の追加仕入れができない(汗)。なんてこともよく起こりますね。
両方とも私も事業会社時代失敗した口ですから(苦笑)
また、ベーシック商品の調達、開発にも落とし穴はあります。
ベーシック商品はどこにでも売られているため、比較されやすく、競争が激しいのも常です。
品質÷価格のバランス、顧客がバリューを感じてこそリピーターが生まれるもので、
ここで粗利をガッツリ取るなど、スケベってはいけません。 それは企業側のエゴに過ぎませんから。
誰でも取り組みやすいので、ベーシックからPB商品に取り組み、しかも粗利をしっかり取ろうとしている失敗例は業界の中で枚挙にいとまがありません。
それは、顧客側から見て、どう見ても上記の品質÷価格のバランス、バリュー感が感じられないからです。
そんな場合は、いっそのこと、
ベーシックに関しては、粗利はそれほど取れなくても、普段から数を回しているベーシックが得意なメーカーさんや商社さんに良い素材を使ってもらってOEM生産をお願いした方が賢明だと思います。
中小チェーンがどんなに転んでも、大手、特にユニクロにかなわないのは言うまでもありませんからね。
PB化、SPA化は むしろ、取引先が供給できない自社らしい商品を開発する。
価格決定権を持ち、欲しいタイミングに必要な量を入荷させることに主眼を置くべきでしょうね。
利益はその後についてくるでしょう。
おっと、商品開発の方にまで話に及んでしまいましたね(笑)
話を戻して
これらのベーシックアイテムの話、アパレルチェーン勤務時代にPB開発に携わって以来、昨今もクライアント企業さんのSPA化の支援する中でも 常に肝に銘じて来た話でしたが・・・
実は、拙著「ユニクロ対ZARA」を執筆中に ユニクロとZARAのビジネスモデルを整理して、彼らのポリシーを知れば知るほど・・・
ファッションの中のベーシック商品の役割、本質を十二分に熟知した上で、
それを的確に、そして徹底的に実行しているからこそ・・・
それぞれ日本一、そして世界一になったのだとつくづく思い知らされた次第でした。
【おススメ本】
「ユニクロ対ZARA(ザラ)」単行本 ソフトカバー(日本経済新聞出版社)
ベーシック商品管理のお手本はユニクロ、シーズントレンド商品管理のお手本はZARA。
是非、2つの世界のベストプラクティスをファッションMD開発のお手本にして下さい。
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