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10月8日のファーストリテイリングの2015年8月期の決算発表を受けて、翌日以降の日経新聞、日経MJ、繊研新聞などでは
増収増益の文字や
インターネット売上高比率を30%以上にする壮大な計画の見出し ・・・
10月12日の日経MJ は各種課題に触れていましたが、
他紙は全般的には 前向きな論調を全面に押し出す記事でしたね。
一方、発表の翌日以降 それとは裏腹に同社の株価は大きく値下がりしました。
遅ればせながら、同社決算サマリーに目を通したところ、
売上高は当初計画をクリアしたものの、
期初 2014年8月期決算発表時 売上高計画 1兆6000億円
前期 2015年8月期第3四半期決算発表時 同 1兆6500億円
2015年8月期 通期実績 売上高実績 1兆6817億円(21.6%増)
営業利益以下 利益の部分が、期待外れとなり、投資家の期待を裏切った形です。
期初 2014年8月期決算発表時 営業利益計画 2000億円
前期 2015年8月期第3四半期決算発表時 同 1800億円
2015年8月期 通期実績 営業利益実績 1644億円(26.1%増)
( )内は 前年実績対比
今期の実績だけを見れば
21%の増収 26%の営業増益
営業利益率9.8% で
日本のアパレル業界の中では間違いなくトップクラス
また、柳井会長が掲げる2020年グループ年商5兆円の目標に対しても、
拙著「ユニクロ対ZARA」の中でシュミレーションした同社の年次売上と2年連続でほぼ同じ推移を続けています。
このペースで行けば2016年8月期はいよいよ米GAPの売上高に並ぶかそれを抜いて・・・
世界売上ランク3位に浮上する可能性も大ですね。
しかし、3か月前(第3四半期)まで期待を持たせていた利益予測がこの3ヵ月間で伸び切らないどころか逆にへこんだのが今期以降に不安を残した格好になってしまったのでしょう。
さらにセグメントごとに見てみると
国内ユニクロ事業は
店舗数を減らしながらも売場面積を維持し
(ユニクロ成長エンジンの十八番である増床移転のスクラップアンドビルト)
約10%の増収 約10%の営業増益
15%の営業利益率(前年比横ばい)
単体で見れば申し分のない業績と思いますが・・・
グループ売上構成比は46%に下がったものの
営業利益構成比の71%を占め・・・
他事業の低収益率を支えてあげなければならない状況は変わっていません。
海外ユニクロ事業は
45%の増収、31%の営業増益と絶好調ですが、
営業利益率は 8% → 7.2% に低下
グレーターチャイナ(中国香港台湾)が46%増収、55%営業増益
営業利益率も 11.9% → 12.7%に 改善
一方、事業計から差し引きすると
それ以外の地域は増収も 営業減益
おそらく韓国(1000億円超)を差し引いてしまうと・・・米国を中心に大赤字になるので韓国の業績をはっきり開示しないのでしょうね。
また、 グローバルブランド事業は
17%の増収と 営業黒字化
これは 年商1415億円となったジーユーが
営業利益率 6.3% → 11.6% に改善 これはご立派
逆にその他の事業合計は赤字です。
このように
○ 国内ユニクロ事業
○ 海外ユニクロ事業のグレーターチャイナ事業
○ ジーユー事業
がグローバルレベルの業績水準であって
その他の事業は足を引っ張っているのが現実というわけです。
それにしても
ジーユーの1415億円 営業利益率 11.6%にはびっくりしました。
2006年立ち上げ以来10年足らず、
単独ブランドで日本のアパレル専門店売上ランキングトップ10にランクインする
ユナイテッドアローズ2015年3月期1310億円
西松屋 2015年2月期1285億円
あたりを抜き去ったのですから びっくりです。
決算サマリーに目を通して・・・
やはりグローバルレベルでは売上は伸ばせていくらGAPに追いついたとしても
営業利益率10%未満は
直近決算営業利益率
1位 インディテックス 18%
2位 H&M 17%
3位 GAP 13%
5位 Lブランズ 18%
7位 プライマーク 13%
8位 NEXT 20%
らのグローバルSPAと比べると見劣りしますね。
関連エントリー- 世界アパレル専門店売上ランキング2014 トップ10
ファーストリテイリング=柳井さんは 「フォーカス」の得意な企業(方)なので
正論を言えば、上記の3事業に徹底に戦力と投資を集中すべきなんでしょうね。
ただし、今期以降も
国内ユニクロの値上げ後の客離れ?と価格調整力を持って日本のシェア拡大を目論むグローバルSPA(H&M、ZARA、OLD NAVYなど)との更なる競合
中国の店舗開発の強力パートナーである万達グループの不動産開発熱のクールダウン
ジーユーの低価格を脅かす 輸入原価の高騰 やCSR問題 などなど
課題も山積みです。
これに対して、現在5%程度のネット売上構成比を将来的に30%以上にするというちょっと無茶なハードルのようにも聞こえる計画ですが・・・
実は 世界売上ランク8位の英NEXT社の基幹ブランドである“NEXT”の
Directory(カタログ&インターネット)売上構成比が40%、
営業利益に至っては50%を稼ぎ出していることを考えると・・・
(NEXT社 アニュアルレポート参照)
ファーストリテイリングのインターネット売上高比率30~50%も あながち無茶な目標ではありませんし、
英国という成熟マーケットで成熟期に入ったローカルチェーンが
グローバルSPAとの真正面からの対決を回避して利益率を高めている良き先輩の背中を参考にするのも
むしろ得策なのかも知れません。
いずれにせよ また新しいステージに入ったファーストリテイリング、ユニクロに注目しましょう。
【おススメ本】
ユニクロは果たして世界一になれるのか?
世界のファッション流通マーケットもこの2ブランドを比較すれば よりわかりやすくなる!
いよいよ台湾で中国語翻訳版も発売されました。 今後 韓国、中国本土と続きます。
「ユニクロ対ZARA(ザラ)」単行本 ソフトカバー(日本経済新聞出版社)
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