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August 31, 2016

シンガポールのファッション流通マーケットは東京の未来図?

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 8月以降、業務の関係でブログの更新が滞っておりましたが、これまで気になっていた話題を順次振り返ってご紹介して行きたいと思います。

 毎年8月には海外にインスピレーショントリップに行くことにしています。

 テーマは東京の近未来を感じることで、昨年は北欧(ロンドン経由ストックホルム、ヘルシンキ、コペンハーゲン)を訪問しましたが・・・今年は東南アジアのハブ都市であるシンガポールを選びました。

 東京23区ほどの面積の赤道にほど近くの常夏の立地ながら、

 世界の中でも教育水準が高く、生産性を重視する合理的な国家。

 547万人の国民が暮らし(人種は中国系、マレー系、インド系が共存)、外資系企業が多く、年間1550万人の外国人観光客が訪れるという国際都市シンガポールで何が起こっているのか?

 東京の未来に通じる何かを垣間見ることができないものかと興味を持ったためです。

 滞在数日間で、オーチャードロード、ブギスエリア、マリナベイ、ハーバーフロントなどファッションストリートやショッピングセンターを一通り歩いて感じたのは・・・

 外資系のグローバルブランドやチェーンストアばかりが幅を利かせ、目ぼしいローカルチェーンがほとんど見当たらなかったことです。

 目立ったアパレルチェーンのシンガポール国内店舗数をネットで調べてみると以下の通りでした。

 COTTON ON(豪) 74
 Giordano(香港) 48
 UNIQLO (日本)24
 G2000 (香港) 17
 H&M (スウェーデン)10
 Victoria's Secret(米) 10
 ZARA (スペイン)9
 Muji (日本)9
 iora (シンガポール) 7
 TEMT(豪) 5  
 Gap (米) 4
 F21(米) 4

 古くから出店していたのがオーストラリア勢、香港勢、そこにグローバルSPAが攻め込んで来たという感じです。

 当地では、これ以外にも日本では見ることのないオーストラリア勢やイギリス系(アルカディアグループのブランドのFCなど)を見ることができます。

 シンガポールに行くにあたり、同国の歴史や文化を知るために何冊かの本を読みましたが・・・

 それらの文献によれば、当地の経済は国策で金融、貿易、不動産、物流、重化学工業など生産性の高い産業が重視され、むしろ労働集約的な製造業や流通業は外資に市場を開放して任せて来た歴史があるとのことでした。

 その結果が、グローバルで活躍するラグジュアリーブランドと比較的低価格のグローバルSPAの2極マーケットということなのでしょうか。

 欧米でショッピングエリアをリサーチをすると、これまでロンドンでも、パリでも、ニューヨークでも、西海岸でも・・・現地ローカルチェーンがグローバルチェーンに詰め寄られ、劣勢というマーケットの風景をたくさん見て来ました。

 日本もいずれはそうなってしまうのかな?と思いながら。

 一方、シンガポールのようにマーケットを完全に開放して、外資が続々と参入する環境にすると、ローカルチェーンは育たず、行き着くところは・・・

 グローバル競争力のあるラグジュアリーブランドとグローバルで活躍するファストファッション系などグローバルSPAの勝ち組しか残らない?

 悲観的かも知れませんが、そんな現実をシンガポールのマーケットリサーチをしていて感じたものでした。

 話は変わりますが、東南アジアマーケットを攻略するにはまずはシンガポールだ!と出店はしたものの・・・うまく行かずに撤退に追い込まれた企業さんを何社が存じ上げています。

 シンガポールは面積が狭く、家賃が高く(業界関係者によると大型店でなおかつ30万円以上の月坪売上を上げないと採算が取れない家賃とか)、人口も少なく、出店余地が限られているため、なかなか採算を取るのが難しい国だからです。

 ただ、今回、当地で久しぶりに再会した総合商社の駐在員である学生時代の親友から聞いた話で印象的だったのは・・・

 シンガポールは、何もかも物価は高いが・・・

 どこに行っても寒いくらい(笑)、空調の行き届いたオフィス環境・・・

 そしてシンガポールほどわかりやすい英語を操り、世界中と電話一本でコミュニケーションができる優秀な人材を確保できる、国際的な仕事がしやすい環境の整った国は他にはないと言い切っていたことでした。

 つまり、シンガポールは小売出店しても儲けるのが難しいマーケットというよりも・・・

 当地単独で採算を考える場所ではなく、国際的な拠点(HQ)を置くのにふさわしい場所であって、

 その拠点をキーにして、いかにアセアン全体に展開して儲けるかという、ダイナミックな発想と採算の取り方をもってして立ち向かわないと討ち死にに終わる立地なんだろうなと。

 ちょうど、シンガポールを拠点にアセアン、オーストラリアに展開しているZALORAというファッションECモールのトップページを眺めていて・・・

 ここではこの地図が象徴するように・・・シンガポールという拠点を中心にこれくらいの視野で戦略図が描ける企業だけが勝ち残る場所なのだろうな、と感じたものでした。

 ZALORA HP

 【おススメ本】

 グローバル時代のファッション流通を考える上で参考にしていただければ参考です。

 おかげさまでいまだにアマゾン小売ジャンルランキング1位になることもあり、感謝しております。
 
 「ユニクロ対ZARA(ザラ)」単行本 ソフトカバー(日本経済新聞出版社)

  

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