適正品番数とメリハリ発注
1月14日の日経新聞にユナイテッドアローズやしまむらなどのアパレル専門店大手が2017年春夏の品揃えについて最大3割の商品数を減らす方針であることに関する記事が掲載されていました。
記事によれば、両社とも過剰だった商品数を減らすことによって売れ残り在庫の値下を抑制し、一方で、売れ筋商品に絞り込んで在庫を充実させることによって売り逃しをなくすことに労力を振り向けることが狙いのようです。
この「商品数(品番数)が多い、少ない」の議論は・・・
毎シーズン業界各社が繰り返しているある意味「永遠の悩み」ですが(笑)
何を基準に多い、少ないと言っているのかが不明確なことが多いのも現実です。
記事で取り上げられている大手の2社さんはそれなりのデータやロジックに基づいてお話しされていると思いますが、
中小・中堅の小売企業さんは、おそらく、
期末在庫の品番別消化率(売上数量÷純仕入数量)を見て、
売上上位品番は消化率が極めて高く、
逆に下位に消化率の低い商品がゴソっとあり、
これらの多数の下位品番は本当に必要だったのか?と感じたから
という理由が多いのかも知れません。
仕事柄、新しい成長期にあるクライアント企業さんと取り組みが始まると、
「うちは品番数が多すぎる、適正品番数はどれくらいでしょうか?」と問われて、あるべき品番数の議論をすることがよくありますが・・・
逆に「ところで、通常 店頭に展開できる品番数(キャパ)の基準はありますか?」と聞き返すと、明確な答えが返ってこない場合が多いものです。
そんな場合、ご一緒に什器調査をして什器の棚卸を行い、
商品計画のための標準となる展開スペース(器の大きさ)を定めた上で、
シーズン中にそれらの什器の中でどれくらいの頻度で商品を入れ替えるか
を確認して・・・
はじめて適正品番数の基準となる数値が出てくるなんて話も少なくありません。
いわゆる小売業の「定数定量」の基本となる話です。
実際、そんな作業をやってみると・・・
バイヤーやMDなど仕入れ担当者の仕入総額は予算内に収まっていても、
仕入品番数が「基準」をはるかに上回り、どう見ても定数(販売スペース)から溢れんばかりの品番数・・・(汗)
売上TOP品番は黙っていても各店で優遇されるのでともかく、
そうでない個々の商品に各店で十分な販売機会(スペースと販売期間)が与えられなかったために・・・結果、売れ残った商品がたくさんあった、全体の消化率が低かったということに気付くことになります。
そんなことを反省しながら・・・次のシーズンに向けては、店頭什器配列を確認しながら、
店頭展開可能な標準品番数x回転数に多少の+α(プラスアルファ)の品番数を上乗せして品揃え計画を組み始めることになります。
店舗数がまだ少ない時期は、店舗投入時に売場から多少商品が溢れていても、行動力のある本部販売部、商品部のスタッフが店舗に通う頻度が高ければ、人海戦術で店舗間で調整つけながら、最終的には売り切ってしまうことも出来たでしょう。
しかし、ある一定の事業規模を超えてくると(その境目はおおよそ20店舗前後でしょうか?)・・・
全店に目が行き届かなくなり、これまでと勝手が変わって、コントロールが難しくなり、商品数の過剰が経営課題のひとつとして上がるようになるものです。
いずれにしても、品番数が多い、少ない、の議論は、まずはこの商品計画の基準となる店頭の「定数定量」を一度、把握した上で行いたいものですね。
また、適正品番数に関連してよく話題になることとして、事業拡大局面(多店舗出店中)における品番数の在り方があります。
店舗数が急増して、仕入担当者の売上・仕入予算が一気に増えると、品番あたりの発注量を増やすのではなく、ついついむやみに品番数(商品のバリエーション)を増やしてしまう、いろいろなものを買いたくなる、というジレンマに陥ることがあるものです。
予算が大きくなったからと言って、けっして既存の店舗の売場面積が大きくなったり、急に商品回転が高まるわけではないんですけどね・・・。
そうすると、品番数を増やしたがために、品番ごとの発注量に十分なメリハリがつけられなくなり、結果的には、売上上位品番はすぐに欠品して売り逃し、十分に販売機会が与えられなかった下位品番たちが売れ残る。 売れ筋を追加しようにも後者の在庫が多いために、追加仕入もできない、というループに陥る話です。
そんな局面でどうすべきか?の解も、答えは同じだと思っています。
やはり、売場に基づいて適正品番数を定め、上位(見込み)品番と下位品番の役割に応じてメリハリ発注を行うことに尽きるでしょう。
いくつかのブランドが成長局面でブレイクスルーしたのを見て来ましたが・・・
その共通項として言えることは、
売れると見込んだ商品、あるいはみんなで売ろうと決めた商品(品番)を絞り込んで定め、販売ピーク週などの大事な時にむけて、十分な在庫を積み込み、全社一丸となってMAX販売できた実感をどれだけ全社共有できているかだと思います。
在庫の奥行がなく、すぐに欠品してしまう商品をいくらたくさん持っていても、ブレイクスルーの実感は得られませんから。
売上が好調だった時の売上ベストセラーを振り返ればわかるように、いつの時代も売上は売れる上位商品に集中するものです。
そしてその時の集中度合(売上上位構成比)を参考にして、上位に来るであろう商品をどれだけ売るかを決め、その時に欠品しないだけの必要な仕入を行う。
小売の商売もスポーツと同じで、そんな勝った、うまくいった時のイメージトレーニング(販売計画)とそれに向けた行動(周到な準備)がなくしては目標達成はありえないでしょう。
執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
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ファッション消費の顧客購買心理を考えるビジネス読本
おかげさまで多くのアパレル専門店、SPAさんでMD計画の参考文献として愛読していただいています。
『人気店はバーゲンセールに頼らない 勝ち組ファッション企業の新常識』
いつもお読み頂きありがとうございます。
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