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January 13, 2017

アメリカのSPA(アパレル製造小売業)の元祖「ザ・リミテッド」の全店閉店と創業者レスリー・ウェクスナー氏から学ぶこと

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 1月10日のWWD JAPAN.COMにアメリカの婦人アパレルSPAチェーン「ザ・リミテッド」が全米250店舗全店を閉店して、以後WEBストアのみで販売を続けることに関する記事が掲載されていました。

 ニュースの詳細はリンク先をお読みいただければと思いますが、

 ザ・リミテッドが全店舗閉店 4000人を解雇
 
 私も含め、90年代から世界のSPA(アパレル製造小売業)をウォッチしてきた業界の方々からすると今回の全店閉店ニュースには感慨深いものがあると思います。

 業界のトップコンサルである小島健輔先生も自身の思いをブログで取り上げていらっしゃいますね。

 小島健輔の言いたい放題 ウェクスナー氏の「先見の明」?

 SPA(Specialty store retailer of Private label Apparel)という言葉の語源はGAPの創業者である故ドナルドフィッシャー氏が1986年の同社決算発表会で使った同氏の造語ですが・・・

 GAPより早くからアメリカでお手本となる本格的なSPAをしていたのは「ザ・リミテッド」であるのは業界でも広く知られています。

 もう中古本としてしか購入できませんが・・・SPA原論とも呼べる

 「リミテッド社はなぜ世界最大になれたか(桜井多恵子著商業界1996年)」 を

 アパレル専門店のブランドポートフォリオやプライベートブランド(PB)開発のバイブルとして何度も線を引きながら読まれたアパレルチェーンの方もいらっしゃるでしょう。 私もそのひとりです。

 1963年「ザ・リミテッド」からスタートした旧リミテッド社の強みは 

 商品企画をして直営店で売るものの、つくることはベンダーに任せるという表層的なSPAではなく・・・

 店頭での試験販売と生産地にバイイングオフィスを持つ社内商社を活用したアジアでのQR生産、空輸インフラなど店頭起点のサプライチェーンマネジメントにあり、

 その結果として、ウィメンズ向けファッションベーシックカテゴリーの商品企画的中率が高かったところにあったと思います。

 その点、ユニセックス向けのベーシックカジュアルが中心で、比較的農耕的な?ものづくりのGAPとはまた違ったものづくりのお手本でした。

 90年代に「ザ・リミテッド」や「エクスプレス」などのSPAブランドを中心に世界一のアパレル専門チェーン企業に上り詰めた旧リミテッド社の転機は・・・

 2000年のH&Mのアメリカ上陸後に訪れます。

 H&Mのアメリカ上陸後、それまでさほど目立たなかったフォーエバー21(F21)も大量出店を始め、全米アパレル市場を舞台としたH&MとF21のファストファッションの競演が始まります。

 ここからアメリカのアパレル市場は正しくレッドオーシャンに突入したわけです。

 2007年、リミテッド社の創業者レスリー・ウェクスナー会長は

 創業業態である「ザ・リミテッド」ともうひとつのアパレルチェーン「エクスプレス」の2つの事業の権利の75%を投資ファンドに売却、2010年には残り25%の権利もファンドに売り渡し、外衣アパレル専門の業態からは撤退。

 一方、1982年に買収して磨きをかけて来たランジェリー中心の「ヴィクトリアズシークレット」と1990年に自ら開発した「バス&ボディワークス」というヘルス&ビューティ事業に特化します。

 その間、社名を「リミテッドブランズ」から「Lブランズ」と社名変更し、創業業態であるLIMITEDのLの頭文字は残しながらも、売却した「ザ・リミテッド」と違う、アパレル専業とは違うファッションチェーンの道を歩みます。

 2007年に「ザ・リミテッド」「エクスプレス」のアパレル業態を売却することを発表した際のウェクスナー氏のコメントが今でも忘れられません。

 「アパレルビジネスは我々にとって、もはやエキサイティングなビジネスではない」

 もしかしたらその言葉は、ご自身の本音だけでなく・・・ファッショントレンドをマーケットイン発想で素早くつくるより・・・むしろ安くつくってしまうH&Mやフォーエバー21らのファスト性に辟易としていたファッション好きな大人の女性の言葉を代弁していたのかも知れません。

 今回、全店閉鎖となったのは、創業者が10年前に見切りをつけた、もう同氏の信念の宿っていないファンド傘下の「ザ・リミテッド」。

 一方、創業者は現在、Lブランズとして、女性の内面の美をテーマにランジェリー、ホームウエア、スキンケア、ヘルス&ビューティ部門を核にアメリカで最も好業績のファッション企業の経営者として大成功を収めています。

 世界アパレル専門店売上ランキング2015 トップ10

 の5位に位置する、その「Lブランズ」については、少なくとも年に一回はアニュアルレポートに目を通させていただいていますが・・・

 同社が成功した理由は、ランジェリーやスキンケア事業を選んだからではなく、もともとその業界にいる同業プレイヤー(企業)とは違い・・・

 創業の「ザ・リミテッド」で培ったアパレルビジネスアプローチとサプライチェーンマネジメントを取り入れ、磨きをかけているからにほかなりません。

 毎年、期中生産比率を高め、究極の短納期生産を行い、商品的中率を上げることによって、在庫回転率を飛躍的に高めて・・・

 店舗の大型化を図りながらも売場面積(スクエアフィート)あたりの売上高をぐんぐん高め、既存店増収を続けながら、

 2016年1月期では、営業利益率18%という売上トップ企業の中でも指折りの高い営業利益率を上げています。

 これはランジェリーやスキンケアというカテゴリーがアパレルよりブルーオーシャンで儲かるビジネスだからではなく、

 レス・ウェクスナー氏が成熟市場の中でも伸び代のあるインナーウエアやスキンケアというカテゴリーにアパレルSPAならではの手法を持ち込んだからこそと思っています。

 創業業態「ザ・リミテッド」が全店閉鎖されても・・・

 同氏のビジネスセンスとファッション流通革新のグルとしての存在は健在です。

 世界がSPA化に向かった時にも大いに啓発され、大いに勉強させてもらったものでしたが・・・

 ファストファッションの拡大によって翻弄されている成熟マーケットにおいても、消費者のライフスタイルの変化に対して、我々が進むべき方向を示唆してくれているように思います。

 【おススメ本】

 ファッション流通業界において、Lブランズのレスリー・ウェクスナー氏とともに尊敬する経営者のおひとりであるインディテックスグループのアマンシオ・オルテガ氏の信念とは? 
  
 「ユニクロ対ZARA(ザラ)」単行本 ソフトカバー(日本経済新聞出版社)

  

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