ユニクロが挑むハイブリッド型マーチャンダイジング
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3月17日の日経新聞に前日行われたファーストリテイリングの「有明プロジェクト」説明会に関する記事が掲載されていました。その後も多くのメディアが関連記事を取り上げていましたね。
ファストリはユニクロの商品部組織を東京ミッドタウンから倉庫のある有明に移し、複数階層あった商品部やマーケティングに携わるスタッフを約5000坪のワンフロアーにまとめ
マーチャンダイザー、デザイナー、パタンナー、生産、マーケティング担当が
これまで1年がかりでリレー式で行って来た商品開発業務を定例会議だけに限らない、意見を求めたいことがあれば、すぐに打ち合わせを始められるインフォーマルなコミュニケーションを促進することによって
業務のスピードアップを計り、シーズン中の需要の変化にも対応できる体制をつくることを目論んでいるようです。
メディアでは
「つくったモノを売るという所から消費者が求めているモノだけをつくる」
「消費者個人の好みに合わせたサイズやデザインの服を10日でつくり届ける」
ことが誇張され、ユニクロがこれまでのビジネスモデルを180℃変えるかのように報道されていますが、
実際には、
これまでのほとんどの商品が企画から店頭まで1年がかりだった計画生産、売り減らし型の商品開発体制に加え
・シーズン中にも新商品を開発して店頭に並べることができるようにすること
・サイズのパーソナル対応を拡大すること
の2つを意図しているものと思われます。
今回のプロジェクトの背景にあるのは言うまでもなく世界一を目指すファストリの新たなチャレンジです。
昨年までは世界売上規模第三位の米GAPの背中を追いかけて来たファストリでしたが・・・
今年2月23日に発表されたGAP社の2016年度(2017年1月末)決算速報によれば
前年比 2%の減収、22%の大幅営業減益、
1月末の為替レート 1ドル=113.8円で換算すると
ファストリ(2016年8月期) 1兆7864億円
GAP INC(2017年1月期) 1兆7657億円
となり、ファストリはいよいよ売上規模ではGAP社を抜き、世界3位となりました。
但し、営業利益ベースでは
ファストリ (同) 1272億円
GAP INC (同) 1355億円
とまだGAPには劣っていますが・・・
この結果を予測して、ファストリの今期からの目標は売上利益とも世界一で快走を続けるZARAを運営するインディテックスグループ一本に絞り切ったと見ていいでしょう。
関連エントリー- 世界アパレル専門店売上ランキング2015 トップ10
昨年あたりから話題になっているファストリの一連の「有明プロジェクト」の報道を聞いていると・・・
私が2014年に「ユニクロ対ZARA」の執筆のためにスペイン インディテックスグループ本社を訪問して取材した時に見たインディテックス本社の業務スタイルをそっくり目指しているように思えてなりません。
当時、インディテックスの本社では
ZARAの同じセクション(ウィメンズ、メンズ、キッズなど)の商品開発職務の方々がすべてワンフロア―のほぼ壁のない大部屋で、「実際の売場」を想定して仕事をし(デザイン、サンプリング、商品発注、グレーディング、裁断指示まで)、
同じ敷地内で生地の裁断、縫製現場から戻って来た縫い上り商品の検品とプレス、店舗振り分けの上、空港近くのハブ物流に届けるまでの出荷物流までを行っていましたから・・・
今回の有明プロジェクトでは、できる限り、それに近いことを実現しようとしているのでしょう。
ただし、それはユニクロがZARAのマネをしてトレンドファッションに取り組むという話ではなく、
ZARAの強みである
業務のスピードアップと
Flexibility(柔軟性)と
Accuracy(正確性)
に取り組むという話でしょうね。
そして、気をつけなくてはいけないのは、
ユニクロの世界最強といっても過言ではない、これまで築き上げてきたベーシックの商品開発から店頭売り切りまでのオペレーションの強みを捨てるのではなく、それに磨きをかけながら、
それと並行する形で、今回の柔軟性のあるオペレーションを走らせるべきでしょうね。
ZARAは、とかくトレンド商品の高速生産ばかりが注目されがちですが、実際には
・トレンド性のある商品は在庫リスクが大きいのでできるだけサプライチェーンを内製化してスピード重視で管理する
逆に
・流行にさほど左右されないベーシックなものは品質と価格のバランスが大切なので、アジアの工場にアウトソーシングして時間をかけてつくる
というサプライチェーンのハイブリッドな使い分けを行っていることに強みがあります。
つまり、人間ってものは、そう器用なものではないので、
同じチームに違う勘所、違うサイクルの業務を同時にもとめても生産性が上がらず、上手く行きません。
それゆえ内製化とアウトソーシングの使い分け、あるいは内部でもチームを分けての運用が現実的となるのです。
そして、それぞれのサプライチェーンのサイクルは違っても、それらを店頭で上手にミックス=ハイブリッドさせているのが、
ZARAの店頭の魅力であり、魅せるところと売るところのバランスであり、本当の強みであると思います。
このあたり、ZARAのオーナーであるオルテガさんが製造業出身だからこそ
現場に無理をさせず、同じリズムで安定的な操業を求め、結果利益が残るということがわかっていらっしゃるからこそなのかも知れませんが・・・
もうひとつ、ユニクロはカスタムサイズを10日間でつくり届けるといいますが、
それも別オペレーションで取り組む大事なことのひとつかも知れませんが・・・
その前に店頭のSサイズやXLサイズの欠品を防止して欲しいという声にも耳を傾けるべきかも知れません。
いずれにしても、柳井会長のある意味「振り切った」理想の高いハードルから・・・
結果、現実的なところに落ち着いて、進化を続けるユニクロからは目が離せませんね。
【おススメ本】
ユニクロが目指すZARAとの違い、見習えるポイントは?両社の経営信念、ビジネスモデルの強みなどわかりやすくまとめました。 今年1月には中国語簡体字翻訳版も中国本土で出版されました。
「ユニクロ対ZARA(ザラ)」単行本 ソフトカバー(日本経済新聞出版社)
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