YKKのファストファッション向け取り組みとアパレル生産のボトルネック
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4月17日のWWD JAPANにファスナーの世界シェアNO1、金額ベースで4割超を誇るYKKの今後の戦略に関する記事が掲載されていました。
3月初旬に発表された同社の中期経営計画関連の日経新聞や繊研新聞の記事(ともに3月3日付)の内容と織り交ぜてご紹介させていただきたいと思います。
同社はこれまで高品質を武器にラグジュアリーブランドや著名インターナショナルブランドやナショナルブランドを中心に中高価格帯向けのファスナー供給をメインにして来ましたが、
これから世界のマーケットはますますラグジュアリーとファストファッションへの二極化が進むであろうことを見据え、
最大の成長の伸び代は中国・アジアで普及するファストファッションSPAと欧米NBにあると考え、これらの領域での商売拡大のために集中設備投資をすることを宣言しています。
同社の新戦略のポイントは
「低価格対応」 と 「納期の短縮」 の2点です。
「低価格対応」に関しては、製法や材料を見直して中国製の競合と同じ価格水準でもしっかり利益を出せるものづくりを目指し、
一方、
メッキ・染色などの表面加工技術の内製化によって
対応できる商品バリエーションを増やすとともに短納期ラインの構築を行い、
製造ラインの省力化にも取り組むことで 「納期の短縮」を実現し、
これまで最も取りこぼして来たファストファッション市場を攻略しようというものです。
この新戦略のグローバル展開にあたり、
上海YKKで世界に先駆けてこれらの対応を手がけて来た大谷新社長が中心となり、
中国、バングラ、ベトナムに次々に導入した新しい生産管理手法を日本の黒部本社工場を含む世界の主要マーケット向け近隣生産地に展開する模様です。
この取り組みによって
これまで客先から一括受注した注文を、生産計画を立てた上で順次取り掛かるという従来型のやりかたを見直し
受注したものを必要な分だけを小ロット(スモールバッチ)でつくり供給するというスピード供給体制へと変革する模様です。
これは
「ファストファッション企業だけでなく、今後は多くのアパレル企業が、アイテムによって短期・中期・長期という3つの時間軸で生産するようになり、アパレル生産はますますグローバルに拡散する」(大谷社長)
ことに対応するための戦略です。
この動きはまさしく、多くのグローバルSPA、ZARAのインディテックスグループを筆頭にH&MやNEXTやプライマークなどがすでに取り組んでいるものであり、
日本のユニクロの「有明プロジェクト」にしても、このような対応をすることが目的のひとつにあると思っています。
今回のYKKのファスナーの納期短縮への取り組みの記事を読んで私が思い出すのは・・・
かつて商社でアパレル生産の仕事をしていた時のことです。
当時、アパレル生産、特にスポーツウエアやブルゾンなどの生産を行う上で早期に意思決定をしなければならなかったボトルネックは・・・
生地の生機(きばた;染色前の生地)と(YKKの)ファスナーだったと記憶をしています。
つまり他の資材の中でも特に調達に時間がかかるために、最終的に商品ごとの生産数を決める前に、先駆けて注文しなければならないものがこの2つだったのです。
シーズン性があり、トレンドの変化が激しいファッションビジネス、アパレルビジネスにおける最大のリスクはズバリ、商品ごと、カラー・サイズごとに出来上がってしまった時の在庫にあります。
上記の2つのボトルネックのうち染色前の生地であれば・・・まだ別の色に染めるとか、他の商品に使うとか、「転用」が利きますが・・・
カラー・サイズ(長さ)ごとに早期進行しなければならなかったファスナーは「転用」が難しく(結構、見込で無駄な注文をしたこともありましたっけね)、
そのため、アパレル商品をつくるのが目的なのに、YKKのファスナーのリードタイムに合わせて製品の計画を立てなければならないという局面もありました。
そういう意味では今振り返ると、ファスナーはアパレル生産の最大のボトルネックのひとつだったのかも知れません。
これはファストファッションだけの話ではないでしょう。
あれから20年は経っているので、多少はリードタイム(納期)は改善されたかとは思いますが・・・
そんなボトルネックのひとつであるファスナーの納期が劇的に短縮されるのであれば、業界の在庫リスク回避に大いに貢献することと期待します。
ファスナーの世界のトップシェアを誇る日本のYKKが時代の要請にあわせて業務改善を行い(まるで小説「ザ・ゴール」の世界?)、ますますグローバルで発展されることを楽しみにしています。
関連エントリー-必要十分な品質
【グローバルSPAの動きを理解するおススメ本】
世界一のZARAのインディテックスの背中を追う、ユニクロのファーストリテイリング。それぞれの強み、将来性を多角的に考察しました。
「ユニクロ対ZARA(ザラ)」単行本 ソフトカバー(日本経済新聞出版社)
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