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November 27, 2017

ユニクロが全世界の店舗にIC(RFID)タグ導入へ~RFID導入のご利益とは

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 ちょっと前のニュースですが、11月7日の日経新聞に ファーストリテイリングが展開するユニクロが1年以内に 国内海外 約2000店舗 全店に ICタグ(RFID)を導入することに関する記事が掲載されていました。 

 初期投資は数百億円に上る見込みで

 同社は同システム(RFID)の全店舗への導入によって
 
 「瞬時に在庫管理を済ませ、店員を接客に回し、来店客には会計の待ち時間や欠品を少なくするといった効果でメリットを出す」としています。

 店舗へのIC(RFID)タグの導入は、まずは入出荷検品、在庫検索、レジ精算、棚卸業務などの作業効率(生産性)向上、防犯管理などへの活用から始まり、その後、店舗内での顧客購買行動の追跡に期待されています。

 昨今、RFID導入のメディア記事を読んだり、ITベンダーさんの売り込みトークを聞いたりするたびに、思うのですが・・・ 彼らが語る 「瞬時に在庫管理を済ませ」というおおざっぱというかミスリードな表現に違和感を覚えるものです。

 以前 

 在庫データの精度を高めて「ラスいち(最後の一点)」を売り切れ

 というタイトルのエントリーでも触れましたが、

 導入実績のある企業さんたちの話を伺うと、

 RFIDは決して魔法の杖ではなく、導入すれば何でも解決するわけではなく、読み取り精度は決して100%とは言えず、

 とは言え、取り組みかた次第で作業効率が図れるというものです。

 たとえば 棚卸業務ひとつ取っても

 従来(バーコード対応)の棚卸の工程には大きくわけると

 1) 準備段階
 2) 全商品を一点ずつスキャン
 3) 誤差調査

の3つがある中で RFIDの導入によって

1)がほぼ不要になり、2)が瞬時で済む、その結果 3)の調査だけに集中できるようになるので、大幅時間短縮につながるというものです。

 これは、これまで 在庫データの精度を高めようと、1)~3)までの苦労を愚直にされて来た企業さんや店舗スタッフさんにとって在庫データを正確な状態にするのに時間短縮できるようになる、

 というご利益があるのであって、

 そもそも、棚卸というか、商品管理の本来の目的を理解していなかったり、

 ただやらされている感でいるために時間のかかる面倒な作業と考えて、3)をやっていなかったり、いい加減にしたりしてきたところにとっては・・・ 

 2)の作業が楽になるというだけで、相変わらず正しく在庫がつかめないままで・・・それ以上のご利益はないでしょうね。 

 ユニクロさんあたりはそのあたりしっかりやられて来た企業の一社だと思いますが、

 これまでそうでなかった企業さんは RFIDを検討する際に、

 まずは業務そのものを見直し、何故 在庫データを正しく把握する必要があるのかに立ち戻った上で 導入を検討すべきでしょうね。 

 そうすればタグ1枚のコストが高いか安いかではなく・・・

 業務の生産性が高まり、過剰在庫を減らすことによって得られる・・・労働時間短縮と在庫の値下げや廃棄ロスの低減と、導入およびタグのコスト(投資)が見合うかどうかという議論になりますからね・・・

 ECやモバイルデバイス(スマホ含む)が普及して、

 店舗スタッフがお客様が欲しいと思った商品在庫を在庫データを検索して見つけ出してご提供する。

 一方、お客様ご自身もスマホで自分でみつけて、購入または取り寄せることが容易な時代になってきました。

 また、在庫データが正確であれば、最後の1点までも売り尽くしやすい環境が整いつつある中で、

 勝ち残りのためには以前よりも断然、在庫データの精度を高める必要性が高まって来たと感じています。

 欲しい商品を手にしたお客様とそのお買いものをお手伝いできた喜びのために・・・先端技術を理解し、正しく導入・運用したいものですね。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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November 15, 2017

ECとリアル店舗、ファッション消費の未来とパーソナライゼイション

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 11月6日発売のWWD ジャパン 創刊2000号記念号 は1979年の創刊時からこれまでのファッション流通の出来事が年代別にレビューされていて大変読み応えがありました。

 もちろん、歴史を振り返るだけでなく、キーパーソンたちが未来を語るコメントも多数あり、

 特に後半162-163ページにある 

 米パーソナルスタイルパッケージ提案ECサイト 「Stitch Fix(ステッチフィックス)」 の創業者でありCEOのカトリーナ・レイク氏と 

 ECの世界から英老舗セレクトショップ 「BROWNS(ブラウンズ)」のCEOに就いたホリー・ロジャース氏のインタビュー記事

 「独自のパーソナライゼイションを追求 2人のCEOが語る小売りの未来とは?」

 は正しく ファッション消費の未来、これからの10年 ファッション流通業界が取り組まなければならないことを示唆する内容で大変興味深く読ませていただきました。

 特に共感した部分を引用、紹介させていただきますね。

 まず、Stitch Fixはご存じでしょうか?

 STITCH FIX

 2011年アメリカで創業されたパーソナルスタイル提案ECサイト。

 登録時、85の質問に答えた顧客の好みから、AIが700ブランドの中から商品を選定、その後、スタイリスト(人間)が補正したコーディネートアイテム5点(アウター、トップス、ボトムス、服飾雑貨)がパッケージで顧客の自宅に届くECファッションサービス。

 顧客は気に入ったものだけを購入し、そうでないものはコメントをつけて返品するというものです。これを定期的に繰り返す中で顧客の選別行動に基づき、AIがその後の商品選定の精度を高めて行きます。

 アメリカで 現在220万人の会員がおり、75人のデータサイエンティストがAIをメンテし、3400人のスタイリストが対応しており、年商1100億円 (粗利率44%)にまで成長し、この度、上場申請をしたそうです。

 同社のCEO が語る ミッションは (以下 「  」内 引用)

 「消費者から求められているのは自分にぴったりのジーンズがみつかること。 モールを一日中探し回りたいわけではなくて、快適かつきれいに見えるジーンズを見つけたいだけ」

 「モールのいろんな店をさまよって、店員に買い物を助けてもらう今の形が将来まで続くわけがないし、30個ものブラウザを開いて何を買えばいいのか悩む行為もあり得ない。私には、どちらの行動も将来まで存続しているとはどうしても思えない。」

 「(ファッション購買の未来は) 商品の大半はオススメ機能に基づいて購入されると思います。

 (我々は)その人に完全にフィットするものは提供できないけど、その人に最適な1着を提供します。
将来的にはカスタムフィットを行うこともあり得ますが、すでに大量の服が流通していますからね。」

 「データを理解し、顧客のニーズと在庫をうまくマッチさせることで在庫を効率的に回し、リスクを最小限に抑えている」

 そして

 「パーソナライゼイションという切り口から集めた情報を新たな顧客に当てはめることで成長を続けている。」

 以上 「  」内 引用

 「パーソナライゼイション」というと カスタムメイドに取り組む(作りたがる)会社が多いですが、その労力は結構大変なものですし、限界を感じてしまいます。 

 それよりは、すでに流通している商品の中から顧客の需要と在庫をマッチングする、大量の情報から、絞り込んで差し上げることによってショッピングのストレスを解消したり、時短によりライフタイムを有効に使っていただくことがソリューションにつながる

 という点は筆者の専門分野である、在庫最適化や在庫コントロールのコンセプトに通じるものがあり、とても共感したものでした。 

 かつてはアナログでやっていたパーソナルスタイリストを AI(ロボット)とスタイリスト(人間)が協働で行うところにも未来を感じますね。

 続いて オムニチャネルリテイリングを推進する英老舗セレクトショップ「BROWNS」。

 BROWNS

 「BROWNS」はイギリスをマーケットリサーチされる方にとっては定番の定点観測場所、

 そこへ 百貨店、ラグジュアリーブランドを経て、ラグジュアリーブランドのECサイト「ネッタポルテ」の創業メンバーだった女性がCEOに着任して目下オムニチャネル対応で改革中。 そんな彼女のコメントです。

 「(我々のゴールは)リアル店舗とオンラインストアの機能を統合して良い循環をつくること

 例えば、顧客が自宅で欲しいものをウィッシュリストへ追加していく。

 そのアイテムを店で試着するときに、顧客の専任スタッフはウィッシュリストを見てアイテムを事前に準備しておく。

 さらには、顧客が選んだアイテムの他に、オススメのものも一緒に準備しておける。

 そうやって、全部のテクノロジーやサービスを顧客満足度のために結集し、循環させることがゴールです。」

 以上 「 」内 引用

 これはまさしくリアル店舗をもつ企業がこれから5-10年内に実現しなければいけない最も重要なショッピングのシーンのひとつでしょうね。

 生活者はファッションを買わなくなったのではない、お金がないわけでもない。

 また、これまでさまざまなショッピングのストレスがたくさんのファッション消費を楽しめない方々を生んでしまったかも知れません。

 ストレスなく、気の利いたファッションが的確に、時短とともに手に入るようになれば

 まだまだファッション消費は活性化し、より多くの人に楽しんでもらえるものになるのではないか?

 お2人のインタビュー記事を読んでいて、これからますます変わるショッピング環境にあわせて

 まだまだビジネスチャンスはたくさんありそうだと感じたものでした。 

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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November 06, 2017

いよいよ年内発売開始、ZOZOTOWNのプライベートブランド(PB)の概要が徐々に明らかに

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 11月1日の繊研新聞や11月3日の日経MJに先ごろ発表されたスタートトゥデイ第2四半期決算を受けてZOZOTOWNの今後の施策に関する記事が掲載されていました。

 引き続き増収増益の絶好調が続く中で、各紙の記事は前澤社長が自ら説明した今後の

 「送料」と「プライベートブランド(PB)」に関する内容が中心でした。

 送料に関しては、「送料自由化」のテストを経て11月1日から一律200円に決定しましたね。

 この新送料決定までのプロセスが非常に見事だったので、ちょっと整理してみましょう。

 まず、購入者が任意に選べる「送料自由化」(=購入代金に関わらず顧客が希望する送料で発送する;0円=無料も含む)の中間報告では平均が96円、無料を選んだ顧客が43%あったとのことでしたので、
 
 有料を選んだ残り57%の顧客が選んだ送料の平均はおそらく170円弱だったと推計されます。

 そして、これまで5000円以上の購入者が送料無料、それ未満は有料で一律399円だったので、

 前者と後者の構成が半々だったら今回の新送料設定での両者のプラスマイナスはほぼトントン

 5000円以上     0円+200円=200円
 5000円未満   399円-200円=199円

 おそらく、平均出荷単価が8186円ということなので、5000円以上の方が多数と推測できます。これにより、ZOZOはこれまで送料を頂けなかった顧客からも送料を頂く「有料化」=「送料無料撤廃」を果し、

 運送会社の運賃立て替え収入総額が増えることによって・・・運賃値上げによる経費増にある程度充当することが出来るようになりますね。

 一方、運送会社の値上げを

 単純に顧客に転嫁したモールや
 
 頑張って値上げしませんと宣言して経費増になっているモール・・・

 いろいろあると思いますが・・・

 同社は 顧客、ZOZO自身(そして株主対策)、運送会社 すべてに納得感のある、

 「送料値下に見える実質値上げ」は見事だったと言わざるを得ません。 

 さすが商売人です。

 次に業界が注目する、今後のZOZOの更なる成長を左右すると言っても過言ではない、プライベートブランド(PB)について。

 今回、「全貌の半分~2/3を語る」と前置きして始まった前澤社長自らのプレゼンテーションで出たキーワードを列挙すると 以下の通りです。

・年内ZOZOTOWNで販売スタート (海外でもアメリカ・ドイツで来春から販売スタート)

・誰もが1枚や2枚、1本や2本持っている超ベーシックアイテムを、最高品質、バリュープライスで提供する 

・成功すれば世界中のアパレル企業を超える規模感のブランドになりうる

・ファッションに関心のない層への洋服で根源的な課題を解決するもの

・これまでファッションブランドが使ったことのない設備を使って製造

・科学やテクノロジーの力でサイズ・シルエットなど究極のフィット感を実現 

・究極のフィット感を実現するために設備投資 9億円 研究開発 5億円を 使った

また、

・デザインや価格面で既存出店ブランドと競合しない

・コーディネートが得意な販売員を100人募集する。着こなしの分析や解析もしてゆく

・あまり在庫リスクを抱える商売にはならない

とも発言されています。

以前のエントリー
 ZOZOのスタートトゥデイが大幅増収増益で株式時価総額1兆円を突破 現状の課題と次の手は?

 の後半部分で 筆者は ユニクロと競合するベーシックを最有力に挙げましたが、

 この方向はどうやら正しいようで・・・ 

 ただ、これまでファッションブランドが使ったことがない、特殊な設備を利用するとしているところが意味深で楽しみです。

もうひとつ、

・ファッションに関心のない層への洋服で根源的な課題を解決するもの

・コーディネートが得意な販売員を募集とのこと

というところがとても気になりました。

 もしかしたら、PB商品の単品開発&販売にとどまらず、ZOZOTOWN既存出店ブランドの在庫も活用して

 アメリカで急成長中の定期購入型のオンラインパーソナルスタイリングサービスのファッションECサイトである

 Stitch Fix(スティッチフィックス) 

 の日本版もスタートするのではないか?

 とも思えてきました。

 年内発売とのこと、リリース間もなくですね。 

 どんな商品、アイデアが飛び出すのか、楽しみにしていましょう。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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