ZOZOSUITでは顧客の正確なサイズをどう活かすのか
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11月の後半から12月の初旬は11月22日に無料配布を発表したZOZOSUITの話題で持ちきりでしたね。
最新テクノロジーのボディスーツ=ZOZOSUITを使って多くの消費者のリアルな体型サイズを採寸してデータベース化する試みはこれまで考えた人はたくさんいたかも知れませんが、それを実現する試みはとても革新的なことだと思いました。
そもそもアパレル業界では「これがうちのサイズ」という明確なサイズ基準を持っているブランドや専門店は長年続けて来た大手以外では少ないです。
持っていたとしても、流行が変わり、担当者が変わるとその方の判断で変えてしまったり・・・
例え基準(サイズスペック)は持っていたとしても生産委託先(メーカーや商社や工場)任せにしているところも少なくないので、結果的につくる先の商品によってばらつきが出ることが普通かも知れません。
そして、生産前に試作品サンプルを確認する時も、実際には時間がなかったり、人手が足りず、近くにいる人やデザイナー本人が着て確認し、その時の気分で良しあしが変わるケースも少なくないのが現実でしょう。
また、中心サイズであるMサイズはしっかりチェックしていたとしても、量産するSやLやXLサイズなど他のサイズが理想のサイズやフィットに出来上がっているのか?すべてを確認しているわけではないのが多くのブランドやチェーン店の実情だと思います。
ユニクロ含め、大手チェーンが基準にしているJIS規格をとってみても、だいたい古いデータでしばらく更新されていなかったり・・・JISを基準にした上で体型の維持を心がけているモデル事務所所属のフィッティングモデルを活用していたとしても、
最終的にはジャストサイズではなく、多くの消費者をカバーするために、あえて大き目につくられるケースが多いようです。
そんな現実なので、Mサイズと言ってもブランドによって、商品によって基準サイズもフィットもまちまちなわけで、店頭で実際に試着をしてもらって納得した上でご購入頂くというのが現実だったのではないでしょうか。
日本最大のファッションECモールであるZOZOTOWNでは数ある出店ブランドを独自で商品の採寸をして対応して来たものの、そんな現実から起こるサイズ交換や返品に長年苦労し、業を煮やして来たのでしょうね。
ZOZOSUITの試みは そんなミスマッチによる返品や手間を減らすことが第一でしょう。
更には顧客データに基づき顧客のサイズに合ったブランドや商品をレコメンドすること、
顧客のぴったりのサイズの在庫のある商品しか画面に表示されなかったらお買いものもストレスフリーで便利かも知れません。
そして、出店ブランド側にも、顧客が望んでいるのはこのサイズ、とサイズ規格の管理を徹底させるコンサルティングをすることも視野に入れているのでしょうね。
これらが改善するだけで、PB商品などを作らなくても業績は上がるのではないかと思っています。
もっとも、ZOZOSUITを無料で世界中に配るほどの投資をするくらいですから、そのリターンとしては、やはりPB商品の販売による増益を狙うべきだと思いますが・・・
究極のフィットのベーシックと言っても、低価格、量産を想定しているので、ネットで騒がれているような、パターンオーダーやイージーオーダーのようなカスタマイズはあり得ないでしょうね。
リアルな生活者のサイズをアップデイトし、新たなスタンダードをつくり、多くの人をカバーする、最適なサイズのボディに対して、
せいぜい シャツの袖丈や、裾上げをしなくていいようにパンツの股下のバリエーションをつけるくらいから始めるのではないでしょうか?
「パーソナライゼイション」は確かにこれからのキーワードだと思いますが・・・
何万円もする商品であれば別ですが、低価格のマスマーケットを相手にしている企業が既製品の丈詰め以外のサイズの「カスタムメイド」に取り組むことは極めて効率が悪いので取り組むべきではないと思っています。
その観点からユニクロのセミオーダーの取り組みにも少々懐疑的です。
それよりも業界は先にやることがあるでしょう。
まずは、既存に流通している溢れんばかりの商品、情報の中からその人にあった商品在庫をマッチングして差し上げることです。
それから、これまで業界が軽視していた小さいサイズや大きいサイズの方々への対応は固定客、まとめ買いにつながるので、客単価の高いリピーターづくりという観点からいいでしょうね。
ところで、ZOZOSUITによって、顧客の正確なサイズデータが得られたとしても、
それに基づいて最適な着心地や履き心地の商品をつくることの方がはるかに難しいでしょう。
正しいサイズに基づいてつくられた服と着心地がよい服は必ずしもイコールではないでしょうし
(人の体にはいろいろな動きがありますので)、
更に、ピッタリの服と、着た人が美しくあるいはカッコよく見える(似合う)服ってのも
必ずしもイコールではないので、このあたりも相当研究が必要でしょうね。
期待したいのは、ユニクロ始め日本の多くのアパレルが歴史的にそうして来たアメリカや日本式の量産を前提とした平面製図的な発想から始まった型紙やものづくりではなく、
フランスやイタリアやスペインで実践されて来たヨーロッパの着る人を起点とした立体裁断的な発想をベースとする手法。
着る人を美しく見せながら、かつ着心地のよい工夫のされた服づくりが実現したら・・・
本当に革新的なことになるでしょうね。
以前 弊社でベテランパタンナーさんたちと行った勉強会では
ZARAは量産ながらそれを実現しているようですので不可能ではないはずです。(以下のリンクをご参照下さい)
これまでの量産志向の業界が解決できなかったサイズやシルエットのジレンマを取り上げた過去のエントリーがいくつかあるので、あわせてご紹介しておきますね。
今回のZOZOの取り組みがきっかけとなり、そのあたりのソリューションにつながれば、
ファッションの民主化(大衆化)が進み・・・
これまでファッション消費にそれほど関心を持たなかった人や楽しめなかった人たちもファッションを楽しむ、その裾野が広がり・・・
マーケットの活性化につながることを期待をしております。
関連エントリー-ZARA(ザラ)も実践する 顧客起点のヨーロッパの服づくりの基本
関連エントリー‐グローバルSPA(H&MとZARA)と日本のアパレル企業の商品を比較して思ったこと
関連エントリー‐ヨーロッパの服は「細く見えるだけで本当は細くない」
関連エントリー‐モダナイズドとサイズ展開
執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
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