アマゾン・ドットコムの2017年度決算は大幅増収増益も通販事業は営業赤字
今年2018年は2008年から始まるファストファッションブームから10年目にあたるファッション流通の節目の年。
もう数年前から変革は起こり始めていますが、これからもマーケットや購買行動の激変をリードするのはAmazonやZOZOなどのオンライン起点の企業であることは間違いなさそうです。
1月19日のエントリー アマゾンと小売りの未来~あらためて考えるアマゾン・エフェクト
でもアマゾンドットコムの損益構造に触れましたが・・・
2月1日にリリースされた 同社の2017年度の決算発表書類に目を通す機会がありましたので、
過去4年間の時系列収益数値を共有させていただきたいと思います。
米アマゾン・ドットコム社の4年間時系列 事業別売上高&営業利益(本業の儲け)
(単位10億円 $=120円換算)
◆売上高 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 前年比 |
---|---|---|---|---|---|
北米 | 6,100 | 7,645 | 9,574 | 12,733 | 133% |
インターナショナル | 4,021 | 4,250 | 5,278 | 6,516 | 123% |
通販事業計 | 10,121 | 11,895 | 14,852 | 19,249 | 130% |
AWS | 557 | 946 | 1,466 | 2,095 | 143% |
合計 | 10,679 | 12,841 | 16,318 | 21,344 | 131% |
◆営業利益 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 前年比 |
北米 | 43 | 171 | 283 | 340 | 120% |
インターナショナル | -77 | -84 | -154 | -367 | 239% |
通販事業計 | -34 | 87 | 129 | -27 | -21% |
AWS | 55 | 181 | 373 | 520 | 139% |
合計 | 21 | 268 | 502 | 493 | 98% |
◆営業利益率 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 前年差 |
北米 | 0.7% | 2.2% | 3.0% | 2.7% | -0.3% |
インターナショナル | -1.9% | -2.0% | -2.9% | -5.6% | -2.7% |
通販事業計 | -0.3% | 0.7% | 0.9% | -0.1% | -1.0% |
AWS | 9.9% | 19.1% | 25.4% | 24.8% | -0.6% |
合計 | 0.2% | 2.1% | 3.1% | 2.3% | -0.8% |
いよいよ世界で年商20兆円を超えたアマゾンの儲け=営業利益は
北米の通販事業でも営業利益率がわずか2.7%
それを日本も主力のひとつであるインターナショナル通販事業の年々拡大する赤字(2017年は-5.6%相当)で打ち消して
世界の通販事業合計では営業赤字。
一方、急拡大で売上を伸ばし、売上シェア10%のAWS(クラウドレンタルサーバー)事業は25%の営業利益率で、同事業のみで会社の全体の利益を上げているという状態で・・・
売上の90%を占める通販事業は米国では薄利、海外では赤字でも手を尽くしてシェアを拡大し、別事業(AWSクラウド事業)で儲けてその薄利をカバーしているという構図はここ数年変わりません。
新聞紙上では売上高も税引き後利益もそれぞれ約30%の増収増益であるところを強調しますが・・・
税引前では減益ですし、通販事業が赤字であることはあまり強調して報道されませんよね。
既出のエントリーでも述べたことを繰り返しますが、
アマゾンは通販の利益は度返しで、
消費者を品揃えの豊富さ、価格の安さ、サプライズなサービスを次々に繰り出し、期待をどんどん高め・・・
既存流通企業の品揃えやサービスの旧態依然さ、陳腐さを浮き彫りにし、後手を打たせ、
競合を業績不振に追い込み、次々に駆逐し、そのサービスの優位性で消費者を益々自社の通販サイトに引き込み・・・
利益よりも多くの顧客購買データを収集することを優先するという戦略を持った企業なんですよね。
もちろん 把握した消費者購買行動データから次の手を繰り出すための投資を繰り返し、事業規模を拡大するが目的にあるわけです。
その点からすると、これまで流通革新を起こして勝ち組と呼ばれて来た企業、
低価格衣料の品質の常識を変えたユニクロにしても、
トレンドファッションの価格の常識を変えたZARAやH&Mなどの外資ファストファッション企業にしても、
彼らは本業で儲ける、営業利益をしっかり10%以上稼ぐことを前提にした
同じ流通業者による「革新(イノベーション)」であったのと比べると
流通業者ではなく、グローバルプラットフォーマーという異次元の立場から、利益度返しのアマゾンはある意味、掟破りであり・・・
それゆえに、より強敵で、対応しようと思って同じ土俵に上ろうものなら・・・
ほとんどの企業は利益は出せない、ということになるのです。
そんな違った発想を持った企業のサービスと比較される既存の流通企業はどんな立ち位置で商売をするのか?
これからは、正しくそれが問われる5年、10年になりそうですね。
執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
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