ZARA(ザラ)のインディテックスグループの2017年決算は増収増益~実店舗とオンラインの完全統合モデルを着実に進め安定的な成長が続く
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3月14日に発表されたZARAのインディテックスグループの2018年1月期決算レポートに目を通しました。
売上高は 3兆4203億円 前年比9%増
営業利益は 5824億円 同 7%増
営業利益率 17% 同0.2%減
期末店舗数 7475店 同 +183店
為替レートは1月31日の€=135円で換算
でした。
一方、2017年11月に締めたH&Mの決算は
売上高 2兆7600億円 前年比4%増
営業利益は 2838億円 同 14%減
営業利益率 10.3% 同 2.1%減
店舗数 4739店 同 +388
為替レートは1月31日のSEK=13.8円で換算
でした。
安定的な増収増益を続けるファッション専門店世界売上ランク1位のインディテックスは、
一方で売上が伸び悩み、連続減益となり、CEOがデジタル戦略に乗り遅れたと猛省する2位のH&Mを大きく引き離しましたね。
両社の営業利益額が2倍も差がついたのが印象的です。
株式時価総額に関しては10.5兆 vs 2.9兆と3倍以上もの差です。
今回の決算数値、インディテックス自身も若干伸びが鈍化したように見えますが・・・
同社はこの説明として、ここ半年間の急激なユーロ高の影響を挙げており、(ユーロの商品原価に対して、売上高の回収が為替で目減りしたことによる利益率の低下)
各国の現地通貨ベースでは10%の増収、12%の増益だと説明しています。
既存店売上も世界のすべての地域で伸びており、グローバル平均で5%の増収(オンライン含む)とのことで、万事健全であるとのことです。
今回の決算のトピックを3つ挙げると、
まず、初めてオンラインの売上比率を開示しましたね。
オンライン売上比率は 全体の売上に対して 10%
オンライン販売を実施している地域の売上に対しては 12%
前年比41%の増収とのことです。
ざっと計算すると、実店舗だけでは約7%の増収
期末店舗数の伸びは2.4%増ですが、売場面積を7%増やしています。
そうすると、既存店リアル店舗単体レベルでも微増収は続けている模様です。
ふたつめは 積極的な店舗のスクラップアンドビルドと好立地への大型化しての移転の加速です。
H&Mの引き続き旺盛な出店と比べると、店舗数の純増数(新店-閉店)は鈍化(2.4%増)したかに見えますが・・・
これは成長を緩めているのではなく、むやみに店舗を増やすよりも、スクラップ&ビルドで店舗の量よりも質への転換に力を入れています。
今年度524店出店していますが、341もの店舗を閉め、一方で、144店を改装し、122店を大型化しています。その結果、既述のように売場面積は7%増。
これはすべてのファッションチェーンに言えることですが、
世界中でオンライン経由の売上が増える中、既存店の質の見直しは同時に行わなければならない経営戦略のひとつであることは言うまでもありません。
オンライン売上のアップだけに力を入れて、うつつを抜かしていると、不採算店舗や低利益率の店舗がいずれは遅かれ早かれお荷物になり、経営を深刻に圧迫することは間違いありません。
同社は過去6年間の間に全体の80%の売場スペースがリニューアル済みとのことで、
このあたりの対応もこれから本格化するオムニチャネル時代に臨戦体制の準備に怠りありませんね。
3つめは 同社が「ビジョン」に掲げる 「実店舗とオンラインの完全統合モデル」へのアクセルです。
この度 チェアマンであり、CEOであるパブロ・イスラ氏の下にCOO(最高執行責任者)としてに選任されたカルロス・クレスポ氏は
IT、ロジスティック、運送、労務、商品調達およびサステイナビリティの各部署をコーディネートする役割の担当役員です。
これからの同社の明確なビジョン実現にあたって最高執行責任者にこのポストを担わせるということは、
同社のビジョン実現へのスピードアップの覚悟を感じます。
また、オンラインの新サービスとしては、マドリッド、ロンドン、パリ、上海など世界の一部の都市でオンライン注文の同日受け取りサービスを始め、
スペイン、イギリス、フランス、中国など複数の国で翌日配送が始まっています。
それから、スペインやイギリスの一部の大型店で、オンライン注文の店舗での自動ピックアップ装置を導入・稼働させ始めるとのことです。
筆者が最近講師を務めたある講演で、
「ZARAにとって、Amazonは脅威か?」という質問がありましたが・・・
今回の決算を見ても、施策を聴いても、AmazonPrimeに負けないくらいの配送の利便性を自前主義でしっかり準備されているようですね。
インディテックス社はしばらく死角なし、
そして、世界のすべてのファッションリテイラーが進むべき道の半歩先を行くお手本のひとつ
と言っても言い過ぎではなさそうです。
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執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
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