【アメリカ西海岸リサーチその2】イギリスとアメリカを見て感じたデジタルコマース化、オムニチャネル化の違い
今回のアメリカ西海岸視察は昨夏のロンドンに続いて、日本のデジタルコマース化やオムニチャネル化の近未来のヒントを得ることが主な目的だったわけですが、
両国の物流や宅配事情によってチェーンストア各社が何に投資しているかが違うのだなと感じたものでした。
これは、英米ともに、宅配業者がそのスピードや時間指定という点であてにならないのが共通点のようで
オンラインで注文して、顧客に宅配するのに
倉庫から顧客宅の距離にもよりますが、
伝統的な宅配業者を使っていたら、
英国で3-4日営業日くらい
米国で5日営業日くらい
が標準ではないかと思いました。
いずれも、あくまでも今回の渡航中にオンラインで注文して
ホテルへ宅配にしたらどれくらいかかるかを調べて感じた日数です。
ちなみにアメリカが店舗に在庫を持たず、試着だけをさせてオンラインで注文をする
ショールーム店舗として注目されている
紳士服BONOBOSボノボス
の店舗で注文したシャツは
同社倉庫からポートランドの同社店舗に送るだけでも、中5日と言いながら
宅配業者であるUPSは中継地で2回遅延し、結局、土日含めて到着に2週間かかり
渡航中に受け取れなかった筆者は国際便で送ってもらうことになり・・・
結局、購入日から5週間後にようやく商品を手にしたという始末。
米国事情に詳しい方にお話しを伺うとそれが米国の宅配の実態かもとのことでした(笑)
BONOBOSのこの一件は、「たまたま」かも知れませんが・・・
宅配業者がそんな状況なので、チェーンストア各社は
アマゾンのプライムが自ら物流を構築することで塗り替えている
宅配スピードの新常識 に対抗するため、
店舗で受け取ってもらうために
倉庫→店舗 の物流に投資をすることによって・・・
夜の12時までの注文を翌日の午後以降であれば指定店舗で受け取ることができるという
「クリック&コレクト」 を実現したようです。
関連エントリー ロンドン視察から 日本でのクリック&コレクトの普及を考える
前回のエントリーの通り
関連エントリーーストア側からのデジタル化が進むアメリカ amazon books、 amazon go 、そしてNikeが実現しようとしていること
顧客の近くにある店舗毎の商品在庫を活かすことを考えたのでしょう。
オンライン上で顧客に店舗在庫状況を可視化することによって
近隣店舗の在庫を顧客自らが予約またはオンライン購入できるようにし、
受け渡し準備が整った連絡を受けた顧客は
店舗に取りに行くという形で注文商品を早く受け取れるように
リアルタイム店舗在庫販売管理システムに投資をした
と言えそうです。
いずれも共通するのは、最新テクノロジーの採用や企業の経営効率化のための都合ではなく、
顧客が欲しい商品在庫を見つけ、
いち早く、そして、できるだけストレス少なく手に入れるための手助けへの投資
と言えます。
日本は英米とは物流事情は違いますが、
お客様のために双方から「いいとこ取り」をすることができると思いました。
むしろ、日本は英米よりは格段に宅配便事情がよいわけですからね。
しかし、日本のファッションチェーンは
店舗に売上が計上されないオンライン注文を良しとしないファッションビルの都合にあわせていたり
安くはない販売手数料がかかるECモールに依存し切っている間は
そういった投資の実現にはまだまだほど遠いと思わざるを得ません。
そして、
今後のEコマースの拡大を考えると
アドバンテージのあったはずの、宅配便の取扱い量にも限界があることも昨今の報道で明らかになりました。
どんなに「オムニチャネル」と叫んでも、
英米に比べたら、日本はまだまだEC強化の「マルチチャネル化」の域を超えていません。
しかし、
顧客の買い方が刻々と変わる時代に
日本のファッション流通企業が理想のデジタルコマース化を目指すには
・在庫が自由に動かせる自社EC化の推進、
・店舗在庫のリアルタイム可視化、
・取り寄せ、取り置きの柔軟性
などなど
求められていることはたくさんあるし、待ったなしでもあります。
かつて、それほど一般的ではなかった、店舗間の「お取り寄せ」がどこでも常識になったように
いずれは上記の要望の全てが常識になることは間違いないでしょう。
「顧客が欲しい商品にたどり着き、手に入れるための手助けをすることが小売業の使命」
であることを肝に銘じて どうしたら実現できるか、何から始めるか?を考えて
取り組みたいですね。
きめ細かいクオリティサービスの得意な日本、
しがらみさえ乗り越えれば・・・
世界で一番精度の高いデジタルコマース化が実現できる可能性を秘めていると信じています。
執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
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