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October 29, 2018

アマゾンプライムワードローブ(amazon prime wardrobe)はアマゾンジャパンのファッション売上拡大の起爆剤となるか?

 アマゾンジャパンが 昨年アメリカで先行スタートしたプライムワードローブ(amazon prime wardrobe) のサ―ビスを10月25日に日本でも開始しました。

 これはプライム会員限定のサービスで、顧客はアマゾンサイト上の対象アパレル商品を3~8点選び、まずは自宅に送ってもらいます。

 自宅での7日間の試着期間中に気に入った商品は購入、購入しないものは返品の意思表示をサイト上で行って、その後、後者を返品すれば、購入するとした商品しか請求されないという試着無料サービスです。

 試着品受け取り翌日から7日が経過する間に何も手続きをしなければすべて請求されますが、

 それを逃したとしても、従来通り、手間はかかりますが、30日間は返品可能とのこと。

 返品用の資材は送られて来たダンボールがそのまま使えますし、返品用送り状は同封されいるようです。

 往復の送料はプライム会費内でまかなわれるので顧客は追加負担をする必要はありません。


 ファッションのオンラインショッピングの最大のネックは試着ができないこと。

 次に

 ファッションは手持ちの服とコーディネートして使用するものなので・・・

 どんなにその商品が良くても、手持ちの商品との相性が合わなかったり、周囲からダメだしされるなど、「失敗」することが顧客の最大の不安です。

 これらを解消する手段としては、自宅で試着が最良の解決策だろう、

 とアメリカで同サービスが始まったことを聴いた時に、

 いずれ日本でもサービスが始まったら、アマゾンが売上を拡大しようとしているファッション分野の起爆剤というか・・・ある意味、「切り札」になるだろうなと思っておりました。

 ZOZOはZOZOSUITによって顧客の体格を正確に計測することによって、相応しいサイズを提案したり、ピッタリの服をつくることによって試着問題、返品問題を解決しようとしているのに対し、

 アマゾンはプライムワードローブによって試着自由、返品自由でこの課題をクリアしようとするわけです。

 ピッタリサイズのオーダーメイドでつくることと、

 既に世の中にあるものを試着返品自由にするのと 

 果たしてどちらが顧客に支持されるでしょうか? というお題ですね。

 オンラインショッピングの試着返品自由に関しては、

 米ザッポスにインスパイヤーされたロコンドなどが日本国内でも先行しています。

 報道によれば、同社の返品率は26%とのこと(前年29%からは改善されたようです)

 普通だったら、これだけの返品が来るとなると・・・

 運賃や返品処理の手間を考えたら経費倒れに終わって儲からないのではないか?

 と企業側は不安になることでしょう。

 しかし、経費度外視でも・・・

 まずは売上シェアを高めるためにはどうしたらよいか?を考える

 アマゾンだからこそ取り組める「切り札」なのかも知れません。

 また、アマゾンは、最初は経費先行かも知れませんが・・・

 購買データ、返品データから顧客のサイズを把握して・・・

 将来的には顧客が好む「サイズ感」をデータ化して、

 ZOZOSUITとは違った切り口で顧客に合う商品やサイズを提案することも視野にいれているのかも知れません。

 そうすれば、いずれは返品率は下がるかも知れませんね。
 
 将来の話は筆者の憶測ですが・・・

 さらっと報道しているメディアが多い中で・・・

 これって結構、日本のファッションショッピングにインパクトがあるかも、と感じているのは筆者だけではないはずです。

 サイトを見ると、まだまだ、レディース60000品目強、メンズ50000品目強 と対象商品数が少ないようですが、

 今後、対象商品が増えてゆけば、それなりに影響を及ぼす、常識が変わるショッピングの選択肢のひとつになるかも知れません。


 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 ※業界の発展と流通イノベーションのために・・・ファッション流通企業の経営者の方や事業スタートアップ準備中の方の応援をしています。
 時代の節目にあたり、「経営お困りごとのヒアリングとビジョナリーコーチング」のキャンペーンを実施中です。 ブログ筆者の質問に答えて行くだけで・・・頭の中がスッキリ整理されるコーチング手法で事業のお困りごとを整理して今後の方向性を見出すためのお手伝いをさせていただきます。 詳しくは>>>こちらから
 
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October 22, 2018

ファストリ2018年8月期決算は年商2兆円突破で増収大幅増益。事業別に四半期業績を考察してみると。

 先ごろユニクロを展開するファーストリテイリングの2018年8月期決算が発表され、年商は2兆1300億円と
いよいよ2兆円を超えましたね。
 
 営業利益率も11.1%と10%台を回復した好決算。

 ユニクロ事業では海外ユニクロ事業が国内ユニクロ事業の売上高を上回り、営業利益についても国内海外とも大幅増益。

 特に海外事業の利益改善が顕著で・・・
 前年比は国内の124%に対し、海外は156%で

 営業利益額は国内外でほぼ同水準となりました。

 日本一のアパレルチェーンであるユニクロは海外売上構成比が50%を超えるまさにグローバル小売業ですね。

 ちなみに、世界のブランド価値ランキングを毎年評価しているインターブランドの定義では海外売上比率が30%を超えるブランドをグローバルブランドと定義づけています。

 このユニクロ事業の大幅増益の要因を四半期ごとに見てみることで、

 ユニクロの利益体質を筆者なりに深掘り、考察してみました。

 過去のエントリー ファーストリテイリングの2018年8月期中間決算は増収増益。 世界一への課題は秋冬依存体質と春夏シーズンの収益性?

でも指摘しましたが・・・

 ユニクロは上半期(秋冬)で利益の7~8割を稼ぎ、下半期(春夏)の特に夏が在庫処分が多いようで儲からず、通年利益を薄めてしまう体質。

 この秋冬依存体質が改善されることが、春夏に利益を稼ぐグローバルツートップ、ZARAやH&Mに並ぶ収益性がつくためのカギになると筆者は見ています。

 以下、ユニクロ(ファストリ)の決算が始まる9月から1Q~4Qのそれぞれの四半期を秋・冬・春・夏と見立てて季節別の稼ぎ方を考察してみます。

 過去3年 2015年~2017年のユニクロの国内海外事業の四半期業績を見ていると

 1Q秋の売上が最も高く、秋→冬→春→夏と売上構成比が下がって行く傾向があります。

 以下 2015年~2017年 四半期ごとの売上構成比

           1Q  2Q  3Q  4Q   
ユニクロ(国内) 29% 28% 24% 19%
ユニクロ(海外) 29% 29% 23% 19%

 同期間の3年累計営業利益率に関しては、
 
 秋で利益を稼いで、冬は処分もあって利益率が下がり、

 春は利益率を一旦持ち直しますが・・・夏は薄利多売で在庫処分という体質が見て取れます。

           1Q  2Q  3Q  4Q 通期
ユニクロ(国内) 20.1% 12.1% 13.8% 3.5% 13.2%
ユニクロ(海外) 13.5% 8.6%  8.4% -2.1% 7.8%

 これに対して前期の2018年8月期は売上の傾向は同じながら

           1Q  2Q  3Q  4Q   
ユニクロ(国内) 30% 27% 24% 19%
ユニクロ(海外) 29% 28% 23% 20%

 同期の営業利益率は
 
           1Q  2Q  3Q  4Q  通年
ユニクロ(国内) 21.1% 14.6% 14.9% -0.7% 13.8%
ユニクロ(海外) 18.0% 13.7% 15.2% 3.5% 13.3%

と2Q冬と3Q春の利益率が良くなっているのがわかります。

 おそらく、

○昨年の寒波のおかげで冬の2Qの利益が値下げを抑制出来、粗利を高水準に保てたこと。

○4月に夏日が多かったことで春の3Qに夏が例年より早く立ち上がり、利益貢献したことが要因ではないかと思われます。

 一方、1Q~3Qでしっかり稼げたので 4Q夏は思い切って在庫を一掃をしたのでしょうね。

 4Q夏は国内は赤字、海外も前年比減益ながら、通期では増収大幅増益の着地というわけです。

 このように見ると冬の寒波と夏の前倒しによって幸運だった決算?とも言えないではないですが・・・

 同社によれば、

 各国の幹部が東京有明に集まって国際在庫コントロール(過不足調整)を始めた成果が出始めた年でもあるようです。

 果たしてユニクロの収益性回復は本物なのか?

 暖冬で寒波が来ず、夏の始まりが遅くなるのであればまた元の収益率になってしまうのか?

 気候についてですが・・・

 筆者は、ここ何年かの気温の変化をクライアント企業さんたちとの在庫最適化の取り組みの視点からご一緒に見ていると、これは地球温暖化の傾向のためでしょうか?

 夏が長くなり、冬も長くなる、一方、春と秋が年々短期化する傾向を強く感じています。

 この傾向は ファッショントレンドよりも、寒くなった、暑くなったの実需に大きく左右されるユニクロにとっては有利に働くという気もしないではありません。

 いずれにしても、ユニクロの前期の稼ぐ力は本物なのか?今後の動向に注目ですね。


 ところで、参考までに微増収も減益だったジーユー事業の四半期(シーズン)別体質も考察してみました。

 四半期売上構成比
           1Q 2Q 3Q 4Q   
2017年8月期  29% 20% 30% 21% 
2018年8月期  29% 21% 29% 21%

とトレンド発信型というだけのことはあり、ユニクロに比べると

春夏、秋冬ともシーズン立ち上がりの秋と春にしかけて売るべく、1Qと3Qに売上の比重をかけるものの・・・

 冬が弱いのがわかります。

 次に四半期ごとの営業利益率推移です。

          1Q  2Q  3Q  4Q  通年
2017年8月期  11.8% 1.5% 12.6% -3.1%  6.8%
2018年8月期  14.8% 0.2% 9.7%  -7.3%  5.5%

なるほど、 ジーユーは秋で稼いで冬は処分でトントン、

春は秋なみに稼いで夏は処分で赤字という体質なんですね。 

 前期2018年8月期の 秋はまずまずだったようですが、

 春がヒット商品不在?だったのでしょうか?

 大きくコケて、夏の処分も過激に行う必要があった、と見てもよいかと思います。

 追記ですが、10月29日の日経MJのジーユー関連の記事によれば、

 ジーユーは業績改善のために、今後ベーシック構成比を大幅に増やすとの方針を持っているようです。

 これは兄貴であるユニクロのように2Q冬を強化し、春でトレンドリスクを追いすぎないようにするための施策なのでしょうか?

 ジーユーのここ数年の伸び悩みは、そのひとつがユニクロの価格の見直し(プライスラインの下方修正)だと
思っていますが、

 ジーユーが自らベーシック化してゆけば・・・

 ユニクロと競合する路線に入って行き、差別化が難しくなるのではないかとの懸念も否めません。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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October 04, 2018

【セミナーのお知らせ】11月22日(木)「ファッション専門店の在庫最適化の実践 ~店頭起点のリテイルマーチャンダイジングの原則」

 ◆あと1名様で満席となります。同じ会社の方であれば2名様まで受付させていただきます。ご希望の方はお早目にお申込みください(2018.11.16)◆ 
 
 今夏に開催して好評だった 
181122

 アパレル、靴、雑貨などを販売するファッション専門店様向けセミナー

 「ファッション専門店の在庫最適化の実践
  ~店頭起点のリテイルマーチャンダイジングの原則」

 を来る11月22日に再度開催いたします。

 ファッション専門店の店舗数が10店舗を超え20店舗に近づくと 

 売り逃しが多発する一方で全体的には在庫過多を実感する時期が訪れます。

 これは店舗が増えるほど店舗ごとの販売格差と在庫のバラつきが広がるためで、

 属人的な業務や人海戦術が通用しなくなり、

 仕入れ担当者だけでは管理がし切れなくなるのがひとつの大きな要因です。

 そんな中、販路拡大を目論んで、ECモールや自社ECなどの販売拠点を増やしても

 目先の売り上げは増えるものの、

 販売格差と在庫バラつきの課題の根本的な解決にはならないことは言うまでもありません。

 本セミナーでは

 一部のベテランバイヤーだけに頼るのではなく、

 会社全体で利益を稼ぐ、成長する組織になるための店頭在庫最適化の実践を学んで頂きます。

 このセミナーは次のようなファッション専門店様に参加して頂くとメリットがあります。

・常に在庫を過剰に抱えており、十分な粗利額が残らず、利益率が低いと感じている

・毎シーズン期末在庫がたくさん残りキャッシュフローを圧迫している

・店舗に在庫が溢れて 店舗スタッフが販売に集中できていない

・店舗が何を売ればよいかがわからず、予算達成するための行動が標準化されていない

・粗利率、消化率を高めたいが何から手をつけたらよいかわからない

 これから在庫最適化に取り組もうという専門店さんには、

 ゴールイメージを感じ取っていただけるように

 また、すでに取り組んで、ある程度は進めていても、いまひとつ成果が出せない専門店さんには、

 今までの業務を見直し、整理しながら、新しい着眼点を見つけて頂けるように

 当セミナーがそんな機会になれば幸いです。

 ───── セミナー詳細 ─────

【タイトル】 「ファッション専門店の在庫最適化の実践
          ~店頭起点のリテイルマーチャンダイジングの原則」

【開催日時】 2018年11月22日(木)15:00~18:00
        (14:30受付開始)

【場  所】 東京都港区青山エリア 
       会場の詳細はお申し込み頂いた方に追ってお知らせいたします。

【講  師】 齊藤孝浩(タカ サイトウ)

       ファッション専門店の在庫最適化コンサルタント 
       ディマンドワークス代表
       著書 「人気店はバーゲンセールに頼らない」(中央公論新社)
           「ユニクロ対ZARA」(日本経済新聞出版社)

【内  容】 
 シーズンごとにバイヤー、ディストリビューター、エリアマネジャー、店長が

 会社ぐるみでピーク週にいかに売上を高めるか、
 シーズン末までにいかに在庫を売り切るかを考える上での
 基本的な考え方から実践例をグループワークと講義を交えてお伝えします。
 
    主な内容
      ○ なぜ店頭在庫最適化が必要なのか?
      ○ 在庫最適化を行う上で共有すべき定義
      ○ 会社ぐるみの在庫コントロールのシーズン業務と週間業務
      ○ 販売計画達成のためのビジョン共有の大切さ
      ○ 在庫を持ちこさないための原則
      ○ オムニチャネル時代の在庫コントロール  など

【参 加 費】 お一人 10,800円(消費税込み)   事前銀行振り込み
       また、終了後 任意参加の講師との個別相談を兼ねた懇親会あり

【定  員】 先着16名様(定員になり次第締め切りとさせていただきます)
       参加費振込をもって正式なお申込みとなります。 

【参加対象】 専門店経営者様、経営幹部様、MD、バイヤー、ディストリビューター、在庫コントローラーの方々。 
 また、専門店様のMD業務や在庫の最適化業務を外部から支援されているシステム会社さんや業務委託の方にもご参加いただけます。

【6月27日セミナーに参加された受講者の声】

・一般的なDB・在庫コントロールの運用・定義の基本が理解できた。

・いかに今まで無計画、無策だったか痛感しました。今取り組み始めた事が何に繋がっているのか明確になりました。

・グループワークで他社様の同じ職種の方と話せる機会があってよかった。(抜粋)

■■■申し込みは下記フォームからお願いいたします■■■

お申込みページへ


※ このセミナーは、かつて講師が大手システムベンダーさんなどで行った人気コンテンツ
 「ファッション専門店の在庫コントロールの実践」をアップデートし、実際にコンサル現場でよく課題になるテーマを補完して体系づけたものです。

 当日はグループワーク(気づきの共有)を挟んで進めます。参加者の方々の共有を通じて、一方的な講演型のセミナーではお伝えしきれなかったこともご理解いただけると思っています。 同じお悩みを持つ参加者の方々と積極的に交流することでセミナーの価値を倍以上に吸収いただければ幸いです。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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 『人気店はバーゲンセールに頼らない 勝ち組ファッション企業の新常識』

   



 

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October 01, 2018

【アメリカ西海岸リサーチその3】わざわざ店舗に足を運ぶ理由~オフプライスストアの掘り出し物探しの楽しみ

 今回アメリカ西海岸にはストアのデジタル化をメインに見に行ったのですが、それ以外の目的のひとつにオフプライスストア視察がありました。

 アメリカでAmazonがグングン売上を伸ばし、小売シェアを高める中でも・・・

 着実に売上を伸ばし、高い営業利益率を上げているのがオフプライスストアというチェーンストア業態です。

 以前も何度かブログでご紹介しましたが

 オフプライスストアとは

 ブランドメーカーや小売業の過剰在庫を買い取って常時ディスカウントで販売しているチェーンストアです。

 関連エントリー - 全米で好調を続けるオフプライスストア、TJマックス

 関連エントリー - アメリカのコモディティ衣料需要を支えるオフプライスストア

 GAPやアメリカンイーグルやフォーエバー21などのSPAとの差別化は

 名の知れたブランドがいつも安く売られているので

 ブランドの名のもとに品質の保証されたものが安く買える

 またシーズン通して多数のバイヤーが常時過剰在庫を買いつけて新しいディスカウント品を次々に投入してくるため、いつ行っても何かしら掘り出し物が見つかる可能性があり、

 つい立ち寄ってしまうお店になっているようです。

 そして、ブランドのアンダーウエアなどは安く、サイズが常に揃っているので実用衣料の購入先という観点でも使い勝手がよいのです。 (このあたりはメーカーが安定供給している可能性大)

 オフプライスストアには大きくわけて2つのタイプがあるようです。

 ひとつは百貨店系 Nordstrom_rack

 ノードストロームのノードストロームラックと

 サックスフィフスアベニューのOFF5TH

 もうひとつは専業系で

 TJMaxx 、ROSS、Burlington など があります。

 あらためて調べてみましたが

 店舗数は

 TJXグループ 2956店舗 ROSS 1622店舗 Burlington 641店舗
 ノードストロームラック 235店舗、OFF5TH 129店舗 計 5583店舗

 売上高は(米国のみ) Tjmaxx
 TJXグループ 2兆9773億円、ROSS 1兆5000億円 Burlington 6647億円
 ノードストロームラック 5392億円 OFF5TH 非公開 推計 5兆8000億円

 なんとこの5社だけでアメリカのアパレルマーケットシェアの14% 相当あるのですね。


 また、ノードストロームラックはノードストローム社の売上の33%を占め

 TJX、ROSS それぞれの営業利益率は13.3% 14.4%と チェーンストアの中でも極めて高水準。

 (粗利が低く、販売管理費が極めて低いディスカウンンターモデル)

 今回あらためて視察の上 価格表示を比較したところ

 百貨店系はハイブランドがOFFで買え

 専業系はOFF率というよりは

 TJMaxx が$19.99  ROSSが $12.99など

プライスポイント(最多価格帯)を明確にしてわかりやすい、顧客を迷わせない価格設定をしていることに気づきました。

 筆者は90年代アメリカ カリフォルニア州在住時はオフプライスストアで普段着用にサーフブランドをよく購入していましたし、

 日本に帰国後、アメリカ出張時はカルバン・クラインのアンダーウエアの買い足しによく利用していたのですが、

 今回 ノードストロームラックの靴、ビジネスシャツの充実、TJmaxxのアンダーウエア、ソックスの充実、この2つがあれば

 こだわりのファッション商品以外はファッションライフスタイルはほぼ賄えてしまうのではないかとさえ思いました(笑)

 恐ろしや~ やはりオフプライスストアがユニクロの米国拡大を阻む最大勢力と確信しましたね。

 アパレル在庫が大量に余っているはずの日本のファッション流通

 なぜ こんなに消費者にとってありがたい業態が日本で普及しないのかを考えてみました。


 やはり商品を買い取らないけどブランド価値を毀損すると考える百貨店さんの存在が大きいのでしょうかね。

 アメリカでは百貨店でも買い取りが基本なので

 百貨店が自らオフプライスストアに取り組んでいます。

 しかも高級百貨店である ノードストロームは昔からです。(ノードストロームラック1号店は1975年開業)

 日本でも郊外にあるアウトレットモールの出店が飽和になり、

 オンラインがアウトレットとしてで処分販売進んでますが・・・

 都心に人口が集中し、インバウンド需要も増えれば都心部でのブランドディスカウントの需要はますます高まります。

 近年 アメリカの都市部でもノードストロームラックやTJmaxxが増えているのが目につきます。

 今回のシアトル視察では・・・

 ノードストロームの本店の横にオフプライスのノードストロームラックがあり、

 同じ建物の上にライバルであるはずの OFF5TH が入居し、

 地下には百貨店価格の半額でトレンドファッションを提供するZARAが入っていました。

 (ZARAはアメリカでいい立地を見つけましたね♪)

 また、その数ブロック、ダウンタウン側にはROSSとTJmaxx の店舗があります。

 シアトルという都会のど真ん中に百貨店、ショッピングセンター、ファストファッション、オフプライスストアが密集するエリアがあることに少し驚きながら、

 いやいや、これは東京や大阪や名古屋の近未来図のような気もしないではありませんでした。

 日本では

 ドンキホーテのようなディスカウンターがブランドOFFの取扱いを増やすことは十分考えられますし、

 セカンドストリートのようなリサイクル店がメーカー新古品買い取りを増やして参入する?

 あるいは、オンラインに巨大なオフプライスストアモールが出来て、そこがリアル店舗を展開する?

 なんてこともあり得るかも知れません。

 日本のアパレル市場も そんなマーケット環境に近づいているかも知れない、と思うのは

 きっと私だけではないと思います。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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