ファストリ2018年8月期決算は年商2兆円突破で増収大幅増益。事業別に四半期業績を考察してみると。
先ごろユニクロを展開するファーストリテイリングの2018年8月期決算が発表され、年商は2兆1300億円と
いよいよ2兆円を超えましたね。
営業利益率も11.1%と10%台を回復した好決算。
ユニクロ事業では海外ユニクロ事業が国内ユニクロ事業の売上高を上回り、営業利益についても国内海外とも大幅増益。
特に海外事業の利益改善が顕著で・・・
前年比は国内の124%に対し、海外は156%で
営業利益額は国内外でほぼ同水準となりました。
日本一のアパレルチェーンであるユニクロは海外売上構成比が50%を超えるまさにグローバル小売業ですね。
ちなみに、世界のブランド価値ランキングを毎年評価しているインターブランドの定義では海外売上比率が30%を超えるブランドをグローバルブランドと定義づけています。
このユニクロ事業の大幅増益の要因を四半期ごとに見てみることで、
ユニクロの利益体質を筆者なりに深掘り、考察してみました。
過去のエントリー ファーストリテイリングの2018年8月期中間決算は増収増益。 世界一への課題は秋冬依存体質と春夏シーズンの収益性?
でも指摘しましたが・・・
ユニクロは上半期(秋冬)で利益の7~8割を稼ぎ、下半期(春夏)の特に夏が在庫処分が多いようで儲からず、通年利益を薄めてしまう体質。
この秋冬依存体質が改善されることが、春夏に利益を稼ぐグローバルツートップ、ZARAやH&Mに並ぶ収益性がつくためのカギになると筆者は見ています。
以下、ユニクロ(ファストリ)の決算が始まる9月から1Q~4Qのそれぞれの四半期を秋・冬・春・夏と見立てて季節別の稼ぎ方を考察してみます。
過去3年 2015年~2017年のユニクロの国内海外事業の四半期業績を見ていると
1Q秋の売上が最も高く、秋→冬→春→夏と売上構成比が下がって行く傾向があります。
以下 2015年~2017年 四半期ごとの売上構成比
1Q 2Q 3Q 4Q
ユニクロ(国内) 29% 28% 24% 19%
ユニクロ(海外) 29% 29% 23% 19%
同期間の3年累計営業利益率に関しては、
秋で利益を稼いで、冬は処分もあって利益率が下がり、
春は利益率を一旦持ち直しますが・・・夏は薄利多売で在庫処分という体質が見て取れます。
1Q 2Q 3Q 4Q 通期
ユニクロ(国内) 20.1% 12.1% 13.8% 3.5% 13.2%
ユニクロ(海外) 13.5% 8.6% 8.4% -2.1% 7.8%
これに対して前期の2018年8月期は売上の傾向は同じながら
1Q 2Q 3Q 4Q
ユニクロ(国内) 30% 27% 24% 19%
ユニクロ(海外) 29% 28% 23% 20%
同期の営業利益率は
1Q 2Q 3Q 4Q 通年
ユニクロ(国内) 21.1% 14.6% 14.9% -0.7% 13.8%
ユニクロ(海外) 18.0% 13.7% 15.2% 3.5% 13.3%
と2Q冬と3Q春の利益率が良くなっているのがわかります。
おそらく、
○昨年の寒波のおかげで冬の2Qの利益が値下げを抑制出来、粗利を高水準に保てたこと。
○4月に夏日が多かったことで春の3Qに夏が例年より早く立ち上がり、利益貢献したことが要因ではないかと思われます。
一方、1Q~3Qでしっかり稼げたので 4Q夏は思い切って在庫を一掃をしたのでしょうね。
4Q夏は国内は赤字、海外も前年比減益ながら、通期では増収大幅増益の着地というわけです。
このように見ると冬の寒波と夏の前倒しによって幸運だった決算?とも言えないではないですが・・・
同社によれば、
各国の幹部が東京有明に集まって国際在庫コントロール(過不足調整)を始めた成果が出始めた年でもあるようです。
果たしてユニクロの収益性回復は本物なのか?
暖冬で寒波が来ず、夏の始まりが遅くなるのであればまた元の収益率になってしまうのか?
気候についてですが・・・
筆者は、ここ何年かの気温の変化をクライアント企業さんたちとの在庫最適化の取り組みの視点からご一緒に見ていると、これは地球温暖化の傾向のためでしょうか?
夏が長くなり、冬も長くなる、一方、春と秋が年々短期化する傾向を強く感じています。
この傾向は ファッショントレンドよりも、寒くなった、暑くなったの実需に大きく左右されるユニクロにとっては有利に働くという気もしないではありません。
いずれにしても、ユニクロの前期の稼ぐ力は本物なのか?今後の動向に注目ですね。
ところで、参考までに微増収も減益だったジーユー事業の四半期(シーズン)別体質も考察してみました。
四半期売上構成比
1Q 2Q 3Q 4Q
2017年8月期 29% 20% 30% 21%
2018年8月期 29% 21% 29% 21%
とトレンド発信型というだけのことはあり、ユニクロに比べると
春夏、秋冬ともシーズン立ち上がりの秋と春にしかけて売るべく、1Qと3Qに売上の比重をかけるものの・・・
冬が弱いのがわかります。
次に四半期ごとの営業利益率推移です。
1Q 2Q 3Q 4Q 通年
2017年8月期 11.8% 1.5% 12.6% -3.1% 6.8%
2018年8月期 14.8% 0.2% 9.7% -7.3% 5.5%
なるほど、 ジーユーは秋で稼いで冬は処分でトントン、
春は秋なみに稼いで夏は処分で赤字という体質なんですね。
前期2018年8月期の 秋はまずまずだったようですが、
春がヒット商品不在?だったのでしょうか?
大きくコケて、夏の処分も過激に行う必要があった、と見てもよいかと思います。
追記ですが、10月29日の日経MJのジーユー関連の記事によれば、
ジーユーは業績改善のために、今後ベーシック構成比を大幅に増やすとの方針を持っているようです。
これは兄貴であるユニクロのように2Q冬を強化し、春でトレンドリスクを追いすぎないようにするための施策なのでしょうか?
ジーユーのここ数年の伸び悩みは、そのひとつがユニクロの価格の見直し(プライスラインの下方修正)だと
思っていますが、
ジーユーが自らベーシック化してゆけば・・・
ユニクロと競合する路線に入って行き、差別化が難しくなるのではないかとの懸念も否めません。
執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
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