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December 27, 2018

ワークマンプラス 対 デカトロン

 日経トレンディが2019年ヒット予測ランキングの1位に「デカトロン&ワークマンプラス」を挙げて以来、

 デカトロンって何?と思われた方がググられているようで

 過去のブログ記事(2017年3月)

 世界最大の低価格スポーツ用品チェーン 仏DECATHLON(デカトロン)の衝撃

 にアクセスが増えています。

 デカトロンはフランス本社、世界50カ国に進出し、1500店舗を展開し(本国フランスと中国に店舗が多い)、

 世界 年商1.3兆円規模の80種のスポーツカテゴリーをカバーするプライベートブランド中心の低価格スポーツ用品専門SPA型チェーン

 日本においては

 2017年に自社ECサイトを開設して通販から始め、

 今年、大阪靭公園横に小さなパイロットショップを設け、

 2019年春には西宮ガーデンズに本格的な大型店を出店する予定の

 日本の消費者やチェーンストアがまだ本格遭遇してない、残された 日本未進出 外資黒船チェーンのひとつです。

 詳しくは上記の過去のブログをお読みいただければと思いますが・・・

 11月以降、筆者が非常に興味深く、注目しているのは、

 作業服のフランチャイズチェーン=ワークマンの一般生活者も着用できる機能ウエアに特化した新業態

 「ワークマンプラス」が出店拡大するにあたり、

 日本ではまだ無名の「デカトロン」を自ら盛んに引き合いに出して

 同じ土俵というか、リング?(笑)に一緒に上るための話題作りをしているところです。

 まず、11月8日の繊研新聞では、

 ワークマンの栗山社長が

 「デカトロンを手本に、シーン別の売り場づくり、コーディネートで訴求する魅せ方、販促での打ち出し、店舗数を武器に、店舗網を拡大します。(引用)」

 と、これまでデカトロンを研究していたことを明かしています。

 続いて12月14日づけのワークマン社のプレスリリース 

 「WORKMAN Plus」の今後の出店計画

 では 何と、

 西宮ガーデンズに1号店をオープンする 「デカトロンを迎え撃つ」と名指しし、

 これから近隣に出店するワークマンプラス新店2店舗と100店舗を超えるワークマンの既存店のコーナー拡充でデカトロンへの包囲網をつくり、「西宮戦争」をしかけ、制すると宣言しているのです。

 デカトロンは2020年の東京オリンピック&パラリンピックによるスポーツ文化の盛り上がりを商機と見極め中国に続く大きな市場である日本の攻略のために上陸するタイミング、

 一方、郊外立地で安くて丈夫な作業服を中心に地味に店舗網を拡大していたワークマン(直近決算期末で821店舗)が一般の消費者から機能性を評価されて注目され始め、ブレイク前夜のチャンス

 かたや世界年商1.3兆円の巨大企業デカトロン 

 かたや 現在4店舗ですが、数年内に100店舗体制、年商200億円をめざすという ワークマンプラス  
 (ワークマン自身は 直近決算で 821店舗 店舗年商797億円)

 ワークマンが、今こそチャンスとばかり、デカトロンの2019年日本本格上陸、出店・拡大のタイミングに上手く乗じて・・・自らも飛躍・拡大する目論みを強く感じるのです。


 ちょうど、12月24日付 WWDジャパンには、デカトロン・ジャパンの取材記事が掲載されており、大変興味深く読ませていただきました。

 デカトロン・ジャパン社長は 記事の中で、競合としてワークマンの名は出さず(笑) むしろ、モンベルを意識しているようです。

 また、同社が低価格を実現するための秘訣として、

1) 製造直販型のSPA方式を採用することによってコストコントロールを徹底していること
2) プロモーションに経費をかけず、その分、低価格を追求すること
3) 研究開発施設を多数設けるなど、高機能低価格を実現する研究を重ねていること

を挙げていました。

 なるほど、デカトロンは広告宣伝、プロモーションにはお金をかけない企業ポリシーだけれど・・・

 ワークマンが名指しでメディアを煽ってくれれば、勝手に宣伝になる、こんなありがたいことはない。

 一方、これまで日本で知名度の低かったデカトロンが実は巨大グローバル企業ということで、メディアで注目を浴びれば・・・

 話題のワークマンプラスも、対バン、比較対象役として、メディアも両社を取り上げやすくなりますし、実際、比較できる方が生活者にもわかりやすい、ということで、話題性は高まることになる訳で・・・

 デカトロンにとっても、ワークマンプラスにとっても好都合なことになるでしょう。

 2019年は両社の競演が面白いことになりそうですね。

 
 思い起こせば、ユニクロの飛躍のきっかけになった原宿進出の際には、ユニクロがお手本として研究し続けた、そして、日本で拡大中だったアメリカのGAP(ギャップ)の存在がありましたね。 GAP(ギャップ)なくして今のユニクロはなかったかも知れません。

 また、ニトリの飛躍のタイミングにも、それまで同社が長年研究し続けたスウェーデンのIKEA(イケア)の存在、日本での拡大、メディアと生活者の両社の比較検討があり、切磋琢磨の末、日本企業であるニトリの成長を後押ししたという図式があったと思います。

 ユニクロ対GAP、ニトリ対IKEAを日本勢がローカル戦を制したように・・・

 ワークマンプラス対デカトロンの図式をつくり上げることによって 

 ローカル企業ワークマンは外資大手の「テコの力」を利用して、局地戦を制し、飛躍のジャンプ台とすることはできるのか?

 に注目したいと思います。

 ご参考まで

 デカトロン  
 1店舗あたりの平均売上高  約8.7億円
 これから5年間で毎年2、3店舗ずつ出店し、その後出店加速 
 (WWDジャパンより)

 ワークマンプラス  
 1店舗あたり販売目標  約 2億円  (既存のワークマンは97百万円規模)
 数年で100店舗体制 年商200億円規模を目指す 
 (繊研新聞より)
 
 ※懸念材料 

  ワークマンの粗利率は有価証券報告書から試算すると44.6%
  ローコストオペレーションとFC活用の低い販管費で
  13%の営業利益を上げているビジネスモデル
  今の収益構造では、SCの家賃比率では採算が合わないのでは?
  やはり、ロードサイドのFC店中心の展開?


 話は変わりますが・・・ワークマンが属するベイシアグループ(カインズなど)は

 筆者の記憶では、故渥美俊一先生のペガサスクラブの会員さんだったと思います。

 筆者も事業会社勤務時代はペガサスクラブで多くを学びましたが、渥美先生の教えには

1 欧米視察で先進チェーンを定点観測しながら学び、
  チェーンストアシステムを利用して
  日本の消費者に欧米並みの安さと豊かさを提供すること

2 そのためにPB開発を推進し、広州交易会などで自ら工場を開拓して、
  直接仕様書発注を行うこと

3 店頭では単品ではなく、コーディネートで提案すること 

 などがありました。

 筆者の勝手な想像ではありますが、

 ワークマンは きっとそれらを学んでいて、

1 世界の中でも フランス デカトロンに学び、研究を重ねた

2 商社に頼らず、自ら工場と取引して自社商品を開発して商品バリューを出している

3 これから、店頭ではコーディネートで提案する

 同じペガサスクラブの優等生であるニトリ先輩と同じことを学び、

 自身の業界、市場に応用させながら・・・

 スポーツあるいは機能衣料の分野でユニクロ、ニトリに続き、

 流通革新を起こすことができるのか?

 ワークマンにとって、このチャンスを逃す手はないでしょう。

 かつて同門の一人だった身として・・・陰ながら応援させて頂きたいと思います。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 ※業界の発展と流通イノベーションのために・・・ファッション流通企業の経営者の方や事業スタートアップ準備中の方の応援をしています。
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