ファーストリテイリングの第1四半期決算は増収減益 問われる秋冬依存体質脱皮と夏に儲ける力
2019年 本年もよろしくお願いいたします。
今年1本目のブログはファストリテイリングの2019年8月期第1四半期決算のお話からです。
1月10日に発表された同社の第1四半期決算は4.4%の増収、8.1%(-100億円)の営業減益でした。
海外ユニクロ事業は12%の増収、12%の営業増益(+61億円)をキープしましたが、
国内ユニクロ事業が暖冬による4%の減収、30%の大幅減益(-162億円)
で足を引っ張ったものです。
今回の決算発表は単に国内苦戦、海外好調という話だけではなく
同社にとっては今後解決すべき課題が浮き彫りになった結果だったとも思います。
以前も当ブログで
2018年8月期の同社ユニクロの復調を取り上げた時にも指摘しましたが、
ファストリ2018年8月期決算は年商2兆円突破で増収大幅増益。事業別に四半期業績を考察してみると
ユニクロは秋冬でガッツリ儲けて・・・春夏、特に夏で利益を吐き出す体質があります。
同社の秋冬物、特に1Qは年間の利益の4割くらいを稼ぐ重要な四半期なので、
そこを落としたということは結構、痛いと見るべきかな、と
これは、ファストリに限らず、冬のアウターで売上、利益の多くを稼ぐ、
日本の多くのアパレル企業には言えることなのですが・・・
地球温暖化が進み、春と秋が短くなり、
夏が長くなり、冬は寒波がくればアウターは売れる、暖冬なら売れない
という傾向は今後も続きそうで、
各社、秋冬商戦に依存し過ぎる体質からの脱皮と
春夏、特に夏にいかに利益を残せるかが問われているように思います。
参考までに、過去のブログで
ユニクロとZARA(インディテックス)とH&Mのシーズンごとの売上構成比、利益の残し方の違いも比較していますので、マニアックな話しですが、よろしければご覧ください。
ファーストリテイリングの2018年8月期中間決算は増収増益。 世界一への課題は秋冬依存体質と春夏シーズンの収益性?
グローバルSPAの中でもユニクロの業績が国内に限らず、グローバルでも秋冬の利益に大きくかかっているのに対し、
ZARAやH&Mも秋冬の売上シェアはそれなりに大きいものの、夏に利益率を落とさないという体質の違いがあります。
それは、彼らが同じ北半球の中でもロシアとシンガポールほどの気温差があっても、
1つの本部で世界統一企画を提供するにはどうしたらよいかを考えた末つかんだ知恵、工夫なのでしょう。
※注 北半球と南半球はMDは違います。また、世界統一企画でも各国がその中から何を選ぶかは国別担当に任されています。
夏が長くなっているのは日本に限らず、グローバルトレンドのようですから、
夏を1発勝負ではなく、細分化して考え、2回戦以上がある前提に臨み、いかに後半戦の的中率を高めて利益を残す企業が今後勝ち残る時代になることでしょう。
ユニクロのように日本よりも気温が高いアジアで事業を拡大しようと思えば尚更でしょうね。
シーズンごとのMDは日頃の在庫最適化のコーチング現場でもよく話題になりますが、
春は深追いしてはいけないシーズン(得てして力が入りがちですが・・・)
むしろ夏を早めに立ち上げ当たりを見て、6月に売場をどれだけ人気商品で埋めつくし、
ベストな品揃えで6月のプロパー販売からその後のバーゲン期まで店頭鮮度高く駆け抜けることができるか?
暖冬で厳しかった冬商戦に落胆している場合ではなく、夏でどうリカバリーするかを考えたいところです。
さて、ファストリの話に戻りますが、
同社の2018年度決算には寒波によって例年よりも利益率が高かった1Qと2Qの利益以外にも
もうひとつラッキーがありました。
それは2018年3月~4月の気温の上昇により
夏物が早めに定価でよく売れたことです。
春を積み込むブランドさんたちは在庫を残したものの
各シーズンを早めに立ち上げるユニクロにはラッキーな初夏だったはずです。
ファストリは今回、2019年8月期の通期予測を計画通りの増収増益ので据え置きましたが、
それは残された3つの四半期で30%以上の増益を果さなければならないことを意味します。
2つのラッキーに支えられた2018年8月期を越えて
前年以上によいパフォーマンスを出すには特に春夏(3Qと4Q)に一工夫がいることでしょう。
過去にもさまざまなハードルを乗り越えて来た同社がどのように対処するのか・・・
しっかり見守って行きたいと思います。
執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
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海外の先行事例をまとめ、日本の未来を予測しながら書き上げました。
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