ZARAの2019年1月期決算は一桁台の増収増益もデジタルシフトと店舗最適化が進む
3月13日に発表されたZARAを展開するスペインインディテックスグループの2019年1月期決算に目を通しました。
売上高3兆2720億円(3.2%増)
営業利益 5453億円(1.0%増)
営業利益率 16.7%(-0.3%)
期末店舗数 7490店舗(+15店舗)
2019年1月末のユーロ=125.15円で換算
と増収増益ではありますが、結果の数字だけを見ると・・・
これまでほぼ10%内外の増収増益を続けてきた同社にしては一見、減速と受け取られそうな数値です。
同社はあわせて為替レートの影響を受けない、 出店96か国における現地通貨ベースの前年比も発表しており、
売上高は7%増
オンラインを含む既存店売上は4%増
全売上の12%を占めるオンライン売上高は27%増
(オンラインを展開している国のみのオンライン売上比率は14%)
当期利益は12%増
だったとのことで、これまで同様に順調な成長が続いているとコメントしています。
ちなみに既存店売上高のうちオンラインの伸びを差し引いたリアル店舗のみの増減率は公表していませんが、
各種公表数字から推計すると、±0のトントンから微増くらいかなと思われます。
今回の決算で注目した数字は2つあります。
ひとつは店舗数が全世界でたった15店舗しか純増しなかったことです。
これまでは
2015年 2016年 2017年
+330店 +279店 +183店
と毎年3桁店舗を増やして来ましたが・・・
2018年度は370店舗を新規出店する一方で、355店舗を閉店し、226店舗を改装し、うち112店舗を増床しています。
結果、期末の売場面積は前年に比べ5%増えています。
要は果敢にスクラップ&ビルドを進めて収益性の質を高め、店舗の大型化
=店舗最適化を進めているのです。
同社は2012年~2018年の間に店舗の9割が最適化されたとしています。
もうひとつは収益率の安定です。
以下世界一のインディテックスと世界2位のH&Mの過去5年間の売上総利益率と営業利益率の推移です。
H&Mが下降を辿る一方でインディテックスはほぼフラットと言えるでしょう。
参考までにファーストリテイリングの数字も載せておきます。
売上総利益率(粗利率)の推移
2014 2015 2016 2017 2018
ITX 58.3% 57.8% 57.0% 56.3% 56.7%
H&M 58.8% 57.0% 55.2% 54.0% 52.7%
FR 50.6% 50.5% 48.4% 48.8% 49.3%
営業利益率の推移
2014 2015 2016 2017 2018
ITX 17.7% 17.6% 17.2% 17.0% 16.7%
H&M 16.9% 14.9% 12.4% 10.3% 7.4%
FR 9.4% 9.8% 7.1% 9.5% 11.1%
この違いは
価格戦略
商品調達
デジタルシフト対応
にあります。
詳しくは月刊販売革新(商業界)来月号に寄稿させて頂いていますが・・・
ZARAはH&Mやユニクロに比べ、市場最低価格戦略ではなく、百貨店をベンチマークした価格戦略をとっています。
そのため、世界の最貧国にファッションをつくりに行くジレンマから解放され、
自ら生産のスピードと量をコントロール。
更に世界的なショッピングのデジタルシフトに対応し、IT開発の内製化による積極投資に余念がありません。
要はインディテックスは時代に最も先回りしているアパレルチェーンと言っても過言ではないのです。
拙著「ユニクロ対ZARA」の中でも述べましたが同社は毎年規模の拡大だけに邁進する企業ではなく・・・
3年に一度くらいの頻度で次のステージへ脱皮する踊り場というかジャンプ台を調える特徴があります。
そして踊り場の後は更に飛躍するということを繰り返して来ました。 充電した後の、同社の今期以降の打ち手、業績に注目しましょう。
執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
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