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May 20, 2019

世界アパレル専門店売上ランキング2018 トップ10

 世界の大手アパレル専門店各社の2018年度の売上高や利益などをまとめる機会ができましたので、毎年恒例になりました売上高のランキングTOP10を共有させていただきます。

 円建て比較にあたり、為替レートは2019年1月末の €=125.1円、スウェーデンクローナ=12.0円、US$=108.9円、英国£=142.8円で換算しています。
 
 尚、7位のC&Aのみ非公開企業で2018年決算が入手できませんでしたので Deloitte Global Powers of Retailing 2019と2018を参考にした2017年度の売上高を表示しています。

順位 社名 本社;決算期 売上高 前年増減 営業利益 営業利益率 期末店舗数 基幹業態
1位 インディテックス (西;2019.1期) 3兆2720億円 +3% 5452億円 16.7% 7490 ZARA
2位 H&M (瑞;2018.11期) 2兆5374億円 +5% 1868億円 7.4% 4968 H&M
3位 ファーストリテイリング (日;2018.8期) 2兆1300億円 +14% 2362億円 11.1% 3445 UNIQLO
4位 GAP (米;2019.1期) 1兆8065億円 +5% 1484億円 8.2% 3666 OLD NAVY
5位 Lブランズ (米;2019.1期) 1兆4421億円 +3% 1346億円 9.3% 2943 Victoria's Secret
6位 プライマーク (愛;2018.9期) 1兆683億円 +6% 1204億円 11.3% 360 Primark
7位 C&A ヨーロッパ (独;2018.2期) 8231億円 +2% 非公開 非公開 1425 C&A
8位 アセナリテール (米;2018.7期) 7167億円 -1% 37億円 0.5% 4622 Ann Taylor Justice
9位 ネクスト (英;2019.1期) 5954億円 +2% 1088億円 18.3% 507 NEXT
10位 しまむら (日;2019.2期) 5459億円 -3% 254億円 4.7% 2205 しまむら
 

                                  
備考-米TJMaxx、Ross のオフプライスストア2社は、売上規模でトップ10に入る規模ですが、メーカーや専門店が放出した過剰在庫を販売する二次流通マーケットのため除外しました。

 以下 ランキングに対する解説です。

 継続的な増収増益となったのはZARAのインディテックス(以後ZARA)、ユニクロのファーストリテイリング(以後ユニクロ)およびプライマークの3社です。

 このうちZARAとユニクロの好調と他社の苦戦の要因をいくつかの視点から考察してみます。

 まず、増収増益を続ける1位のZARAと増収ながら大幅減益を喫した2位のH&Mの違いです。

 同じトレンドファッションを低価格販売するファストファッションを提供する両社の明暗はどこにあったのか?というと、

 価格戦略、サプライチェーンマネジメント、デジタルシフトの3点の違いにあったようです。

 

 まず、価格戦略については「低価格」と言っても、H&Mが各国で市場最低価格戦略を採るのに対し、ZARAは百貨店のような高額市場価格決定者に対してその何割安というような相対的な低価格戦略を採る違いがあります。

 前者が更なる低価格競争のレッドオーシャンに巻き込まれるのに対して、後者はむしろ商品や品質での勝負ができます。

 次にサプライチェーンについては、H&Mは市場最低価格を追求するにあたり、産地を人件費が安く、生産リードタイムの長い東南アジアや西アジアにシフトせざるを得なかったのに対し、ZARAは従来の近隣国での生産を継続しています。

 トレンドファッションにとって、生産リードタイムの長期化はリスクを抱えこむことは間違いなく、

 そのためH&Mは多くの値下げに見舞われたことが粗利益の低迷の主要因となった模様です。

 そして、3つめは・・・

 中国、アメリカで旺盛な出店を続けて店舗数を増やしたにも関わらず伸び悩んだH&Mに対して

 ZARAは既存店の最適化(スクラップ&ビルド、改装、増床)を優先して店舗をたった15店舗しか増やさず・・・

 一方、オンライン投資による通販の拡大で全社、既存店とも増収増益、高収益率を維持しました。

 続いてユニクロについては、寒波によって秋冬商材が売れ、夏気温の早期化によって夏物が定価のままでよく売れるなど、天候に助けられたことは事実です。

 一方で、成熟期に入って久しいユニクロ国内事業を、それを見越して、早くから手を打って来たユニクロ海外事業、特に中国事業がカバーできるようになったことは大きいですね。

 現在では、海外事業は中国を中心に2ケタ増の成長軌道に乗り、国内ユニクロ事業を上回る収益力をつけています。

 低迷、リストラが続く、米GAP、Lブランズ、英NEXT、日本のしまむらに共通して言えるのは成熟マーケットである母国の国内売上に頼り過ぎていることが挙げられます。

 業態が市場で成熟するにあたって、消費の変化に対して次の新しい成長ドライバーを用意できなければ・・・

 企業として増収増益を継続できないことは言うまでもありません。

 時代の転換期にZARAとユニクロのグローバル戦略やデジタルシフトと

 一方、低迷した競合企業の明暗は多くの国内市場のみに頼る流通企業の教訓になるのではないでしょうか?

 

2017年のランキングは>>>世界アパレル専門店売上ランキング2017トップ10

2019年のランキングは>>>世界アパレル専門店売上ランキング2019トップ10

 

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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 【おススメ本】

 グローバルで快走をつづけるZARAとユニクロ、その強みと課題は? H&Mを苦しめ、追撃する超低価格プライマークはいずれは日本にもやって来るのか?

 「ユニクロ対ZARA」 2018年アップデート文庫本

いつもお読み頂きありがとうございます。

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