ショッピングのデジタルシフト時代には店舗損益を「2階建て」で考えよ
5月に中国企業向け研修に講師として伺った際に
中国・杭州でいくつかのニューリテール体験をする機会がありました。
そのひとつがメディアで話題のアリババが展開する生鮮食品スーパー、
フーマー・フレッシュ(フレシッポ)です。
この事業、
当初、坪あたり売上高をスーパーマーケットの業界水準の倍にすることを
存続条件にスタートした事業だそうです。
事業責任者は常識外の高い目標に、
オンラインをフル活用して事業を構築することを考えました。
店舗は品揃えの豊富さと生鮮食品の新鮮さ、そして美味しさを体験する場所と位置付けました。
訪問してみると、日本の紀伊国屋のような、輸入食材も豊富な高級スーパーの品揃え。
鮮魚は生け簀(いけす)に泳ぐ元気な魚介類を中心に販売します。
店舗内のフードコートでは購入した鮮魚の調理もしてもらえ、出来立て料理が美味しく味わえます。
店舗で商品の品質と鮮度を体験し、不安が払拭されて信頼した消費者には・・・
忙しい時には来店せずともオンライン注文してもらえればスピード宅配するサービスを提供しました。
店舗の中ではオンライン注文された商品を軽快な動きでピックアップして保冷バッグに詰め込むスタッフの姿、
そして、ピックアップ後の商品が入った保冷バッグが天井レールを伝わって配送エリアに吸い込まれて行く様も
あえて来店客に見せるための演出なのでしょう。
顧客の購買心理とライフスタイルのために考え抜かれた生鮮スーパー
その結果は・・・繁盛店の店舗売上にそれ以上のオンライン売上が加算されることにより、
実質、坪当たり売上高は業界水準の倍以上になり、現在、中国都心部で多店舗化を進めているとのことです。
顧客はオンラインで情報を取り、
オフラインの店舗で商品を確認し・・・
店舗で買うか、オンラインで買うかは顧客の都合で決めるのが常識となった時代。
そんな時代に、日本でも店舗単体の損益にかつてとは違った厳しい異変が起こっています。
だからといって不採算店舗を閉鎖すると、その店舗近隣客からのEC売上も減るというのは
先行するアメリカの話。
それだけ、店舗とオンライン売上は密接に関連しているのですよね。
企業は、顧客の購買行動にあった新しい買い方を提案するだけでなく・・・
それぞれの損益も関連付けて評価して行かなければ
店舗も店舗スタッフも正当な評価がされず報われないままに終わってしまいそうな時代。
例えば、店舗で見たあとにオンラインで売れたものは、
店舗の売上・粗利にオンラインの関連売上および粗利を加算した上で
「2階建て」損益を考える発想が必要になったのではないか?
これからそれらの売上を裏付ける、商業施設との家賃契約やカウントするための技術的な議論や投資を進める必要がありますが、
中国の生鮮スーパー、フーマー・フレッシュの成功事例は
新しい時代には、これまでとは全く常識の違う発想をする必要があることを
教えてくれているのではないか?
そして、デジタル化は遅かれ早かれ、それを可能にするはずと感じたものでした。
追記 これらの詳しい話はWWD2019年7月8日号 「ファッション業界のミカタ」でも触れています。
【オススメ本】 おかげさまで3刷!中国語繁体字への翻訳も進行中です。欧米の最新デジタルショッピング事情、日本の10年後を示唆する事例を取り上げました
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