ワークマンの決算書を読んで
WWDジャパンの1月13日号、筆者が月イチ連載しているの「ファッション業界のミカタ=企業の決算書を見る着眼点」の10回目。
話題のワークマンの決算書を取り上げて読み解きました。
同社は作業着、作業アイテム専門チェーンですが、タウンウエア、アウトドアウエアとしても使える商品開発力が注目される同社ですが・・・
商品のバリュー、コスパを支える本当の秘密はローコストオペレーションとキャッシュフロー経営にあり、というのがよくわかりました。
決算書の見方も、会計上の損益計算書(PL)のままではなく、FC売上も含む、チェーン全体売上高(商品取り扱い高のようなもの)を売上高とみなし2019年3月期なら930億円(会計上の売上高は669億円)とし、それに対して、販売管理費がどれくらいかかっているかを見ると一般の専門店と比較をしやすくなります。
そのローコストぺレーションの秘密・・・
ひとつは人件費です。
圧倒的大多数の店舗が出店地域の世帯(=夫婦)を契約対象にしたフランチャイズ方式を取ることによって、稼ぐ粗利を一定比率(本部:オーナー=60:40)で分け合う、人件費の変動経費化がポイント。同社が目をつけた立地、資金繰りと仕入は本部が担い、標準化されたオペレーションなので、一定以上の売上が見込め・・・
地方であれば、平均的な世帯年収よりは十分高いと言える所得が得られるしくみ。しかも、コンビニと違って、閉店前に奥さんを先に帰らせて、閉店後8時半には一緒に夕食を食べることができるという持続可能な契約です。
もうひとつは店舗家賃です。
ほとんどの物件がワークマン本社による物件取得のため、資産計上(BS)はされますが、地代家賃はチェーン全体売上高に対して売上比率1%代、減価償却費を考えても2.4%と損益計算書(PL)に対するインパクトは極めて低いです。
そんな販売管理費率の低さにより、粗利が35%程度と低くても、残る営業利益率は20%。
しっかり稼いだ営業利益は言うまでもなくキャッシュフローの原資、それらを主に物件取得や更なる標準化のためのシステム投資に回すというとても健全な循環型ビジネスです。
こんな、顧客とFCオーナーと本部が三方よしの決算書、今まで見たことない、と言いたくなるような思いでした。
専門店、チェーン店は誰のために、何のために稼ぐのか?をあらためて考えさせられたものでした。
業界の中には、急成長のワークマンをやっかんで、ブームは一過性のもの、とおっしゃる方もいるようですが、
メディアが報じる表面的なことだけではなく、このビジネスモデルを知れば、十分、持続可能なビジネスモデルのひとつに見えますね。
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執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
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