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April 27, 2020

コロナショックによる購買行動の変化に対応しよう

時折ブログの転載をしていただいている、ファッションスナップドットコムさんにコロナ後の世界がどうなるのかの寄稿をご依頼頂き、
専門である顧客購買行動に基づく在庫の最適化の視点からコラムを書かせて頂きました。

特別寄稿連載 コロナ後:ファッション流通編 コロナショックによる購買行動の変化に対応する

詳しい内容はリンク先をご覧いただければと思いますが、

多くの人が1か月以上の外出自粛、在宅中心の生活をすることによって、
この間に体験、感じたことが、コロナ後の行動に少なからず影響を及ぼすであろう、
であれば、どんな購買行動の変化が起こるかを予測しよう、
そして、それに対応する準備をスピードをもって進めよう

という提言です。

この間、行動に大きく影響を与えたのは

ひとつはオンラインの強制体験による、
「オンライン」で解決するという行動選択肢の急浮上でしょう。

仕事では、リモートワーク、つまり、オンラインミーティングの活用が進み、
やってみたら、手軽で、わざわざ顔を突き合わせて会わなくても、
意外と事足りてしまうことがどれだけ多いか?実感された方も少なくないでしょう。

これから、あらゆる仕事が、

・会って話すべきことか、
・オンラインミーティングで済ませられることか

を考えることになるでしょう。

すると、無駄な出張がなくなる、
逆になかなか時間が取れなくで会えなかった方々、遠く離れた方々とのオンラインを介したコミュニケーションの時間が増える
ことが期待されます。

このビジネスチャンスは企業にとっても、個人にとっても
活かすか、どうかで、大きな差になるはずです。

お買い物も同様です。

普段、リピート購入している消耗品は、アマゾンなどオンラインで手軽にできます。
今までオンライン通販のヘビーユーザーでなかった方も
こういう時は、オンラインで済ますことができるんだ、意外と手軽。
わざわざ買いに行かなくてよい、
オンラインを活用すると、時間と手間がこんなに節約できると実感されたはずです。

そんな体験から、外出自粛、店舗休業が解除された後も

・お買い物もオンラインで済ませるものと、
・わざわざ買いに行く必要があるものの線引きが

コロナショック前よりも、はっきりして来たのではないでしょうか?

このように、仕事においても、お買い物にしても、
オンラインの強制体験によって、「時間」の価値と使い方が見直され、

オンラインで済ませてしまうもの、あえてオフラインに時間をかけるもの
という選択肢の中で行動するようになると見ています。

すると、行動の入口に「普通の道具」としてのオンラインをフル活用するようになるわけで、

オンラインで情報が取れないとか、
わざわざお店に行かないと在庫があるかどうかわからないとか・・・

顧客の大事な「時間」を無駄遣いさせるブランドや店舗は、
よっぽど希少価値がない限りは
その時点で顧客の選択肢から脱落するということを覚悟しないといけない、

という時代になるわけです。

これ、今までも言われていたことなのですが・・・

コロナショックに後押しされ、もう、待ったなしになったという感じです。

また、ファッション商品の購入については
オンラインを活用した情報提供、商品提供の環境整備の加速だけでなく、
別の課題もあります。

それは、ファッションのほとんどは外出先で会う人に合わせて選び、着こなすものですから・・・

この間、在宅中心で、外出しないのであれば、ほとんどの人にとって、
クローゼットの中の手持ち服で十分だったはず。

在宅期間中は、一部のファッション愛好家を除けば、
新しい服を買うのではなく、

むしろ、手持ち服の見直し(今後も活かしたいorもう着ない、処分したい)
の時間になったのではないかと見ています。

ここ10年のファストファッションの功罪もあり、世の中には安価なコスパ服が増え、
今や顧客のクローゼットには溢れんばかりの服があるでしょう。

それにあらためて気づいた方も多いはず。

拙著「アパレル・サバイバル」の後半でも提言したり
WWDジャパンへの寄稿でも述べさせていただきましたが、

「ファッション市場『大転換』に挑む 2020年代の流通革新と勝ち残る企業の条件とは」

これからは、

ただ業界が提案するファッショントレンドに基づく新しい服を売ることを考えるのではなく、

1)ユーザーがこれからも大事に着回したい服 を起点に
2)そこに、どんなアイテムを取り入れたら今シーズンのトレンドを楽しめるか

というユーザーのお気に入りの服を起点にする、という視点を持って毎シーズンの新商品を提案すべきですし、

一方で

3)着なくなった服をどう手放すか
の手助けをすべきではないか、

と考えます。

あくまでも、これらは筆者の仮説ですが、

コロナショックは収束すれば、顧客行動は元に戻るのではなく、

ユーザーは試練や体験の中から価値観を変え、
行動を変えるはず。

それを予測して、それへの対応を考えることこそ、
「顧客中心」の発想だと思います。

みなさんのお客様は今、何を考え、今後、どんな行動に移すでしょうか?

そして、それに対して、どんな対応をすればよいのでしょうか?

アフターコロナ、あるいはコロナとの共存の時代に、

ブランドや企業や店舗の「在り方」を考える時です。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

次のステージに向けての在庫最適化と人財育成を切り口にした業務再構築支援~ZOOMを使ったオンラインアドバイザーサービスも実施中。詳しくはこちら

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April 20, 2020

経済小説「アパレル興亡」の書評を書かせて頂きました。

週刊現代 4月11日・18日号の「日本一の書評」に

黒木亮さんの経済小説『アパレル興亡』の書評を書かせて頂きました。

メディアさんからのご依頼で本の書評を書かせていただくのは、実は初めてで、書評評者デビューとなります(笑)

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同作は百貨店向けアパレル大手の旧東京スタイルをモデルに、戦後復興期以降からZOZO全盛までの日本のアパレル産業の歴史についてわかりやすく書かれた小説。

モデルがあるものの、架空の人物たちについて書かれたフィクションながら、実際の世界経済、金融市場の転換期となる事件を背景に、実際のアパレル産業の栄枯盛衰と重ねてあわせてストーリーが展開され、実在の人物も実名で結構登場するので、すべてが実際にあったかのように錯覚してしまうリアリティーを感じる内容です。

今となっては、高度経済成長期~バブル期を中心としたブラック甚だしい内容ですが(笑)、

前半、中盤、後半と入れ替わる主人公のそれぞれの世代に応じた、屈辱や不合理に感じた原体験がその後に自分自身を突き動かす原動力になる展開が最も印象に残るところです。

業界に携わった方にとっては、それぞれの体験と重なるところが少なからずあり、懐かしく思われることでしょう。

ブログ筆者にとっては、

服飾専門学校講師だった亡き母による、戦後、既製服普及前は服は家庭で縫われていたもの、という話や、

商社アパレル部門新入社員のころ(88年)に大先輩方に聞かされた、日本製ブラウスのアメリカ売り込み武勇伝が思い出され、

また、

バブル期から2010年代までの間は、90年代のOEM営業、00年代の小売チェーン勤務時代に実際に体験したこと、
周りで起こっていたことが想起されました。

ある意味「誰がアパレルを殺すのか」の小説版。

そして、これからの未来を考えるには、是非「アパレル・サバイバル」をお読みいただければと思います。

以下、週刊現代に掲載された書評の抜粋をご紹介します。

・本書は、日本のM&A時代の幕開けである2000年代初めに起きた、大手アパレルメーカー旧・東京スタイルと「物言う株主」村上ファンドの攻防をモデルとした小説。筆者はその攻防を徹底取材した経済小説家。

・物語は戦後復興期から始まり、バブル経済崩壊後までの百貨店全盛期を経て、カテゴリーキラーと呼ばれる専門量販店やユニクロのようなSPA(アパレル製造小売業)が躍進し、ファッションECモール大手・ZOZOTOWNの成長が続く2015年頃までをカバー。

・90~00年代の百貨店の凋落を、関係者たちへ丹念に取材、分析した17年のベストセラービジネス書『誰がアパレルを殺すのか』の小説版。

・前半は地方出身の叩き上げの創業者、メインの中盤はコンプレックスが強く、金の亡者である中興の祖である2代目社長、後半は打たれ強い腕利き商品企画マンと、3人が主役として入れ替わる展開。

・メインの登場人物や企業は架空の名になっているものの、現実の国内外における経済情勢を背景にしながら、実在する企業名や著名人を登場させることによって、本書で語られていることのすべてが事実だったのではないか、と錯覚するほどのリアリティを感じさせるフィクション。

・高度経済成長期から90年代のバブル崩壊前後までに社会人になった読者のなかには、モーレツ社員による営業成績争いや体育会系の社風に、ノスタルジーを感じる人も少なくないだろう。一方で、バブル期を知らない世代には、今ではブラック企業と切って捨てられる、あり得ない残酷物語のオンパレードに感じられるかも知れない。

・社会人としての原体験、不合理に感じた悔しさこそが、厳しいビジネスシーンの中でも周年を持って自分自身を突き動かす原動力になる――それが筆者の伝えたかったメインテーマのひとつであろう。

・また、日本の産業発展の裏舞台で、総合商社や銀行が果たして来た役割もわかりやすく描かれているところも筆者ならではだ。

・日本のアパレル市場は金額規模の縮小とともに斜陽産業と呼ばれるが、今でも食品、飲食に続く消費者の購買頻度の高い巨大マーケットのひとつだ。そんな日本のアパレル産業の歴史を短時間で概観でき、ますます激しさを増す生き残り競争の中で次にはどんな切り口の革新者が登場して市場を変えて行くのか? 未来を考える上でも読み応えのある一冊。

【アパレル興亡のAmazonサイトはこちら】

 

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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April 07, 2020

ナラティブ(顧客を主人公にした物語)から考える

4月7日火曜日の繊研新聞6面、繊研教室の中の「知見・知恵・知行」に、寄稿させて頂いたコラムが掲載されました。
20200407_114333 見出しは「ナラティブから考える」。ナラティブって聞きなれない言葉かも知れませんが、「物語」という意味の英語です。ストーリーとの違いは後述します。

プラットフォーマー、特にアマゾンの考え方を理解するために、何冊か本を読みましたが、彼らが新しいサービスを検討する際に、必ず行っていることがあり、とても感心したので、そのことについて書かせて頂いたものです。

書籍によれば、アマゾン社はジェフ・ベゾスさんが出席する役員会で新規サービスプロジェクトを検討する際には必ず、

①ナラティブ(顧客の未来体験の様子をストーリー化した物語)

②未来のプレスリリース(サービスがスタートする時に対外的に発表するであろう文章)

③FAQ(サービスに対する顧客からの想定質問と回答集)

を用意することを提案者に義務付けているそうです。

この話を知った時に、アマゾンという会社がどうして顧客の未来から逆算する発想ができるのかがとても腹落ちしました。

拙著「アパレル・サバイバル」の取材中に、これからの10年は過去の延長線上ではなく、未来の理想からの逆算発想からでないと、今、革新を起こしているデジタル企業やプラットフォーマーたちに太刀打ちどころか、共存も出来ないだろうと感じたものでした。

まさしく、この発想の違いがアマゾンらがアドバンテージを持っている所以でしょう。

「アパレル・サバイバル」の冒頭にある短編小説仕立ての「Her Story~10年後のファッション消費の未来」をお読みになった方はお判りかと思いますが・・・これからは、まず、顧客の未来の理想のショッピング体験(ナラティブと呼んでもカスタマージャーニーと呼んでもでもいいですが)を言語化して、チームで共有した上で…

これからそれを実現するために、ゴールに向けて、どんなことから取り組むのかを考える、そんな「ナラティブから考える」アプローチが必要かと思っています。

ちなみに、ストーリーマーケティングの主役は「企業またはブランド」、ナラティブの主人公は「顧客」という違いもあるようです。視点の中心誰を置くかですね♪

参考文献は共に、アメリカ、日本のそれぞれアマゾンの幹部として在籍経験がある方々が書かれた以下の2冊です。

「アマゾンのように考える 仕事を無敵にする思考と行動50のアイデア」

「amazonの絶対思考」

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

次のステージに向けての在庫最適化と人財育成を切り口にした業務再構築支援~ZOOMを使ったオンラインアドバイザーサービスも実施中。詳しくはこちら

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