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April 20, 2020

経済小説「アパレル興亡」の書評を書かせて頂きました。

週刊現代 4月11日・18日号の「日本一の書評」に

黒木亮さんの経済小説『アパレル興亡』の書評を書かせて頂きました。

メディアさんからのご依頼で本の書評を書かせていただくのは、実は初めてで、書評評者デビューとなります(笑)

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同作は百貨店向けアパレル大手の旧東京スタイルをモデルに、戦後復興期以降からZOZO全盛までの日本のアパレル産業の歴史についてわかりやすく書かれた小説。

モデルがあるものの、架空の人物たちについて書かれたフィクションながら、実際の世界経済、金融市場の転換期となる事件を背景に、実際のアパレル産業の栄枯盛衰と重ねてあわせてストーリーが展開され、実在の人物も実名で結構登場するので、すべてが実際にあったかのように錯覚してしまうリアリティーを感じる内容です。

今となっては、高度経済成長期~バブル期を中心としたブラック甚だしい内容ですが(笑)、

前半、中盤、後半と入れ替わる主人公のそれぞれの世代に応じた、屈辱や不合理に感じた原体験がその後に自分自身を突き動かす原動力になる展開が最も印象に残るところです。

業界に携わった方にとっては、それぞれの体験と重なるところが少なからずあり、懐かしく思われることでしょう。

ブログ筆者にとっては、

服飾専門学校講師だった亡き母による、戦後、既製服普及前は服は家庭で縫われていたもの、という話や、

商社アパレル部門新入社員のころ(88年)に大先輩方に聞かされた、日本製ブラウスのアメリカ売り込み武勇伝が思い出され、

また、

バブル期から2010年代までの間は、90年代のOEM営業、00年代の小売チェーン勤務時代に実際に体験したこと、
周りで起こっていたことが想起されました。

ある意味「誰がアパレルを殺すのか」の小説版。

そして、これからの未来を考えるには、是非「アパレル・サバイバル」をお読みいただければと思います。

以下、週刊現代に掲載された書評の抜粋をご紹介します。

・本書は、日本のM&A時代の幕開けである2000年代初めに起きた、大手アパレルメーカー旧・東京スタイルと「物言う株主」村上ファンドの攻防をモデルとした小説。筆者はその攻防を徹底取材した経済小説家。

・物語は戦後復興期から始まり、バブル経済崩壊後までの百貨店全盛期を経て、カテゴリーキラーと呼ばれる専門量販店やユニクロのようなSPA(アパレル製造小売業)が躍進し、ファッションECモール大手・ZOZOTOWNの成長が続く2015年頃までをカバー。

・90~00年代の百貨店の凋落を、関係者たちへ丹念に取材、分析した17年のベストセラービジネス書『誰がアパレルを殺すのか』の小説版。

・前半は地方出身の叩き上げの創業者、メインの中盤はコンプレックスが強く、金の亡者である中興の祖である2代目社長、後半は打たれ強い腕利き商品企画マンと、3人が主役として入れ替わる展開。

・メインの登場人物や企業は架空の名になっているものの、現実の国内外における経済情勢を背景にしながら、実在する企業名や著名人を登場させることによって、本書で語られていることのすべてが事実だったのではないか、と錯覚するほどのリアリティを感じさせるフィクション。

・高度経済成長期から90年代のバブル崩壊前後までに社会人になった読者のなかには、モーレツ社員による営業成績争いや体育会系の社風に、ノスタルジーを感じる人も少なくないだろう。一方で、バブル期を知らない世代には、今ではブラック企業と切って捨てられる、あり得ない残酷物語のオンパレードに感じられるかも知れない。

・社会人としての原体験、不合理に感じた悔しさこそが、厳しいビジネスシーンの中でも周年を持って自分自身を突き動かす原動力になる――それが筆者の伝えたかったメインテーマのひとつであろう。

・また、日本の産業発展の裏舞台で、総合商社や銀行が果たして来た役割もわかりやすく描かれているところも筆者ならではだ。

・日本のアパレル市場は金額規模の縮小とともに斜陽産業と呼ばれるが、今でも食品、飲食に続く消費者の購買頻度の高い巨大マーケットのひとつだ。そんな日本のアパレル産業の歴史を短時間で概観でき、ますます激しさを増す生き残り競争の中で次にはどんな切り口の革新者が登場して市場を変えて行くのか? 未来を考える上でも読み応えのある一冊。

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 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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