世界アパレル専門店売上ランキング2019 トップ10
世界の大手アパレル専門店各社の2019年度の売上高や利益などをまとめる機会ができましたので、毎年恒例になりました売上高のランキングTOP10を共有させていただきます。
円建て比較にあたり、為替レートは2020年1月末の €=120.3円、スウェーデンクローナ=11.32円、US$=109.06円、英国£=142.87円で換算しています。
尚、アメリカのTJXやROSSのようなオフプライスストア、また、昨年まで1年遅れの売上高で掲載していた欧州の非公開大手アパレルチェーンC&Aの売上高が掴めませんでしたので、今回から除外しております。
(右の画像は2014年9月訪問時のインディテックスグループ本社正門)
順位 | 社名 | 本社;決算期 | 売上高 | 前年増減 | 営業利益 | 営業利益率 | 期末店舗数 | 基幹業態 |
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1位 | インディテックス | (西;2020.1期) | 3兆4028億円 | +8% | 5740億円 | 16.9% | 7,469 | ZARA |
2位 | H&M | (瑞;2019.11期) | 2兆6347億円 | +11% | 1963億円 | 7.5% | 5,076 | H&M |
3位 | ファーストリテイリング | (日;2019.8期) | 2兆2905億円 | +8% | 2576億円 | 11.2% | 3,589 | UNIQLO |
4位 | GAP | (米;2020.1期) | 1兆7867億円 | -1% | 626億円 | 3.5% | 3,919 | OLD NAVY |
5位 | Lブランズ | (米;2020.1期) | 1兆4084億円 | -2% | 281億円 | 2.0% | 2,920 | Victoria's Secret |
6位 | プライマーク | (愛;2019.9期) | 1兆1132億円 | +4% | 1304億円 | 11.7% | 373 | Primark |
7位 | ネクスト | (英;2020.1期) | 6230億円 | +3% | 1102億円 | 17.7% | 498 | NEXT |
8位 | アセナリテール | (米;2019.7期) | 5990億円 | -16% | -742億円 | 赤字 | 3,445 | Ann Taylor,Justice |
9位 | しまむら | (日;2020.2期) | 5219億円 | -4% | 229億円 | 4.4% | 2,214 | しまむら |
10位 | アメリカンイーグル | (米;2020.1期) | 4698億円 | +7% | 254億円 | 5.4% | 1,095 | AEO |
以下、ランキングは昨年と大きく変わりはありませんが、1位から5位及び気になるところにコメントさせて頂きますね。
1位のインディテックスは
安定の増収、二けた増益を達成しました。
約65%の売上シェアを占めるZARAの店舗の世界的なスクラップ&ビルドと世界202か国に販売できるオムニチャネルのプラットフォームは整い、2019年度はこれから数年間の飛躍が見込まれるであろう時期の初年度でしたが、あいにく期末に発生した新型コロナショックの拡大とそれによって見込まれる店舗休業、売上減、過剰在庫増に対応して、2019年度に稼いだ利益から在庫評価損を338億円計上しました。これだけの評価損を計上しても、10%を超える利益を上げるのは同社の収益力から来る余裕に他なりません。
2位のH&Mは
屈辱的な3年連続の減益後、二けた増収増益で歯止めをかけました。しかし、その前年増益の営業利益高も、売上高が半分だった10年前の水準にも及ばず、という状態です。2015年くらいを期に、グローバルでも成熟期に入ってしまったと思われるH&M。
新社長(女性)に変わって、これから、ようやく店舗のスクラップ&ビルドとEC強化が進むことになりそうですが、
欧州と中国の苦戦にどう対処するのか、課題は山積みのようです。
3位のファストリは
3年連続の増収増益を好調の中国事業とGUの復活で成し遂げました。
成熟市場のユニクロ国内事業の既存店は辛くも微増、国内の成長はEC次第となります。
4位のGAPは
減収減益、GAPとバナリパのリストラが続きます。
オールドネイビーの分社化を中止し、オールドネイビー出身の女性新社長に今後を委ねます。
リストラ中に関わらず店舗が増えたのは、オールドネイビーの出店と買収したJanie & Jack(キッズ)の店舗が増えたためです。
5位のLブランズは
ヴィクトリアズシークレット(VS)のリストラと事業売却失敗もあり、減収大幅減益です。
売上の6割を占めるVSは既存店-7%で事業赤字。
一方、ヘルス&ビューティのバス&ボディワークス(BBW)は既存店+10%増、営業利益率23%と絶好調。
今後、BBWの分社化を計画しているようです。
以下、めぼしいところを付け加えますと、
6位のプライマークは
増収増益維持も既存店売上は2年連続の減収中と、規模は拡大中も、陰りが見られます。
ドイツが不調、南欧はまずまずの模様。
店舗の増床、減床を行いながら個店の収益体制を整え、ライフスタイル部門の拡充に力を入れています。ちなみに同社はSNSは活用するが、ECはやらないと宣言しています。
7位のネクストは
採算のよい店舗は増床しながら、店舗を減らし、既存店(店舗)売上は‐5.7%も、ECの12%増が寄与して増収増益。
全体の売上に占めるEC比率はほぼ50%となり、営業利益に関してはECの構成比は52%に。
店舗をスクラップ&ビルドをしながら、ECの利便性を強化するとともに、オンライン注文の店舗受け取りであるクリック&コレクト比率は50%を誇ります。
ECと店舗を活かし、他社の商品も運ぶ、自社インフラを生かした物流プラットフォーム化への取り組みに力を入れている段階です。
今回も、ランキングを作成するにあたって目を通させて頂いた、各社の決算書から学ぶべきことは、
インディテックスとNEXTのように、
顧客購買行動の大転換の時代に・・・
出店だけに頼る成長ではなく、
いかに、既存店をスクラップ&ビルドで、
儲かる店舗、役目を果たせる店舗として残すか?
そして、ECと店舗を融合させ、いかに、
店舗を持っている強味を発揮できるか?
更に、構築したオンラインとオフライン(店舗)、そして物流網を・・・
いかに、更なる顧客購買行動の変化を先取りして、利便性の高いプラットフォームとして磨き上げるか?
ということでしょう。
ユニクロも、しまむらも店舗網を持ち、物流をコントロールできる「プラットフォーマー」としてのビジョンを描くごとができれば、
まだまだ国内での伸び代はありそうです。
さて、来年の2020年度のランキングですが・・・アメリカの大手アパレルチェーンはアメリカンイーグルを除いて、業態の成熟期~衰退期という局面とアマゾン・エフェクトもあり、不振業態の整理(バイアウト)、既存店スクラップの嵐です。
そこに2月以降の世界的なコロナショックがのしかかります。
来年は、ランキングが大きく変わることが予想されます。
執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
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【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARAの共通点とアプローチの違いを体系的にまとめ、多くのファッション専門店のブランディング、マーケティング、商品開発、販売戦略、ひいては経営理念の参考にしていただける内容に仕上げました。ユニクロが売上規模も世界2位になるのは時間の問題。ますます、両社の比較分析は世界のアパレルビジネスにとって参考になるでしょう。
「ユニクロ対ZARA」 2018年アップデート文庫本
いつもお読み頂きありがとうございます。
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