コロナショック後の店舗の役割の変化~固定費をシェアしてフル活用するダークストア併用という生き残り方
6月21日の日経新聞、「料理人『脱店舗』に活路」という見出しで
コロナショックで休業を迫られた飲食店の今後の生き残り策を模索する事例記事が掲載されていました。
記事では、
1軒あたりの固定費を軽くするために
客席を設けず、複数の飲食店が利用できる共同宅配用厨房施設を貸し出すクラウドキッチンの事例や
客席を減らして、厨房を拡張し、移動販売用のキッチンカー向けの仕込みに力を入れる事例などが紹介されていました。
記事には出ていませんでしたが、アメリカでは「ダークキッチン」と言って、
宅配やテイクアウト専門飲食店向けに共同キッチンの賃貸を運営する会社も多数存在していると聞きます。
※ダークというのは、通常の店舗ほど照明が明るい必要がない、作業中心の拠点であることを意味します。
ファッション専門店も、コロナショックで飲食店、宿泊施設と共に大打撃を受けた業種のひとつ
今後も起こりうる疫病ショック時にも耐えうる店舗や施設の在り方について、
これから議論が進むと思いますので、異業種の事例ながら、とても興味深く読ませて頂きました。
そもそも店舗の役割って何でしょう?
店舗の機能を考えられるだけ列挙して、店舗以外に代替えできる機能をそぎ落として行った時、
果たして何が残るか?と考えた時、既述の飲食店で言えば、究極は
シェフが料理を加工する「キッチン」ということになるんでしょうね。
では、ファッションストアでは何でしょう?
・ブランドの世界観を見せる場所?
・商品の現物を確かめる場所?
・思いがけなかった商品に出会う場所?
・スタッフから商品の説明を受け、知識を得る(接客の)場所?
・気に入った服や靴を試着するための場所
・買いたい商品を手に入れる、そこから商品を持ち帰えることができる在庫拠点
などなどと列挙して行きます。
そんなブレストをしたら、いろいろな意見が出ると思いますが(楽しそうです♪)、
筆者は「試着」というキーワードが究極の機能のひとつとして残ると思っています。
もちろん、正解はひとつではないと思いますが・・・
ブランドまたはショップが行きついた究極の機能にまずは絞って、そこに付加価値を肉付けして行くという作業をしたら、
お客様にとっても、店舗スタッフにとっても、そしてそれに合わせて採算を考えて行ったら
理想の店舗の在り方に行くつくかも知れませんね。
100年に一度の疫病ショック、
10年に一度のファッション流通革新の節目が重なった今、
新常識(ニューノーマル)を模索するにあたって、
過去の延長線上の「改善」ではなく、
白紙からグランドデザインを考え直すことも大事ではないかと思った次第です。
実は、先日、これから2-3年間で1200店舗を閉めると発表した
ZARAを運営するインディテックスグループも
店舗のスクラップ&ビルドを行うことでそんなビジョンを描いているようです。
いつ行っても新商品が入荷していて、トレンディな着こなしのアイデアがもらえて、商品を試着出来て、
店舗からでも、自宅からでもオンラインで購入できるステーション
RFIDの導入と店舗作業(フロント・バック)の分業によって、
店舗のバックヤード在庫もEC販売できるインフラを整えています。 (画像はスペイン・ア・コルニャのZARA;2014年取材時)
これが世界的に完成したら、(以下は筆者の想像です)
今後、今回のようなコロナショックのようなことが起こっても、
世界の店舗から商品情報・在庫情報を発信して、
顧客に最も近い近隣店舗でオンライン注文品を受け付け、店舗から出荷するのでしょうね。
テイクアウト専用に入店せずとも受け取れる受取カウンターを設置してもいいかもです。
普段はVMDが楽しめ、フィッティングが出来る体験店舗が、有事の時にはダークストア(EC専用店舗型倉庫)として機能し、
送料無料、返品無料の施策を打って顧客の自宅をフィッティングルーム代わりにするのでしょう。
普段から試着体験を提供する店舗としての信頼があれば、日頃からも、そして、有事の時でもオンラインからでも顧客の要望、需要をフォロー出来る。
これからのファッションストアの在り方って、そんな姿もありなのではないでしょうか?
執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
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