コロナショック後のファッション流通企業の経営の視点(後編)
コロナショックとの共存とその後を見据えて、
ファッション流通業界の経営がどのような変革に迫られるのか?の後編です。
1.企業の財務体質の見直し 手元資金と固定費
2.在庫の持ち方の基準変更 消化率から在庫週数へ
3.評価基準の変化 売上重視から粗利(生産性)重視へ
4.販売と働き方のデジタルシフト
3つめは 評価基準の見直し です。(1,2は前編へ)
結論を先に言えば、
誰にもわかりやすかった売上高を基準にするよりも、より利益に直結する粗利や生産性を追求した企業が勝ち残る、という話です。
これまで、ファッション流通業界では
売上高を基準にして、さまざまな費用を売上構成比で評価することが主流でした。
右肩上がりの市場であれば・・・
売上を増やせば、利益も増えますから、それで問題なかったでしょう。
一方、小売業界全般を見渡すと、売上高ではなく、粗利高を分母にして、「分配率」という考え方もあります。
これは例えば、
労働分配率=人件費÷粗利高
販促分配率=広告宣伝費÷粗利高
不動産分配率=地代家賃÷粗利高 などで
稼ぐ粗利高に対してそれぞれの経費をどれだけ分配するかと考えるものです。
実は、分母を売上高から粗利高に変えるだけで、視点が変わり、行動に変化が起きるものです。
例えば、労働分配率に関して言えば、
「労働分配率を一定にする」と定義(予算化)すれば、
粗利高が増えれば、営業利益が増えるのは当然ですが・・・
同時に人件費を増やすことができます。
その分、手間が増えてしまったのなら人の頭数を増やさなければなりませんが、
同じ人員で粗利高を増やせたのなら、賞与を増やす原資になり、
つまり、経営側も働く人もウィンウィンになるわけです。
一方、売上高を分母にしてしまうと、
売上目標を達成するために、安売りを行って、粗利率を下げてでも、何とか売上目標を達成したとした場合
どんなことが起こるでしょうか?
粗利高は未達でも固定費は変わらず、従って営業利益は減ることになりますね。
にもかかわらず、売上目標を達成したために、売上貢献した社員には報奨金(賞与)を支給し、
人件費が増えて更に利益を削る羽目になることもあるわけです。
何が言いたいか、というと、
売上高を目標基準にするよりも、ストレートに粗利高を目標にする方が効率よく
経営も従業員もハッピーになれるか?という話です。
これは、販促費の費用対効果を測る際や
物流費を削るべきか、むしろ粗利高を高めるために使うべきかの判断をする時も有効だと思っています。
店間移動の配送費は、無駄な追加経費(悪)なのか?それによって定価販売のチャンスを広げ、粗利を高める必要経費(良)なのか?
粗利との見合いで考えると物流費の見方も変わって来ますよね。
関連して、「生産性」という言葉がありますが、これは、
期間(年、月、日、時間)あたり、一人当たりの粗利高を指します。
これは、ひとりがどれだけ効率よく粗利高を稼ぐのか?を表す指標です。
販売管理費、固定費の見直しが迫られる今、限られたリソースで、利益の唯一の原資である粗利高を確保する
「生産性」指標は避けては通れない指標になります。
これまで、一部の企業でしか採用されてこなかった
粗利重視、生産性向上の思想が、今後、より注目されるようになりそうです。
最後は販売と働き方のデジタルシフトです。
この2か月の間に、多くの方々が体験し、その使い勝手の良さを実感されたように、
Eコマースやオンラインミーティングは「ニューノーマル(新しい常識)」としてより定着することでしょう。
〇 Eコマースの体制を強化して、顧客との接点と選択肢を増やし、
〇 オンラインミーティングシステムを社内外の打ち合わせにフル活用して、出張費・交通費といった経費を節約して、
時間を効率よく使って、生産性を上げる
そして、創出された時間を余裕を持ってオフラインの大切なことに費やす
企業も、働く人もその点にフォーカスすれば・・・
豊かな企業活動、働き方、遊び方、生活が待っているはずです。
コロナショックが、企業の理想のビジョン、そして、より、ありたい自分に向かうように
いつかは取り組もうと思っていたことを、今すぐ進めることの後押ししてくれるきっかけになれば、
この2か月は貴重な2か月だっと結論づけられることと思います。
執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
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