オンライン接客の可能性
コロナショックの外出自粛、休業の間に 多くのストアやブランドがEC売上を伸ばし、
いわゆる「オンライン接客」が話題となり、
力を入れるところが増えました。
筆者の解釈では、「オンライン接客」の定義は広く、
ライブ動画で商品紹介を配信してチャット質問に答えたり、
ZOOMなどで1対1(複数もあり)のビデオ接客をしたりする
双方向性のある接客だけでなく、
そもそも、ブランドや商品に興味を持った顧客が
ネット検索してホームページやオンラインショップを閲覧するところからオンライン接客というものは始まっていますし、
ブログ更新やSNS発信
メルマガやプッシュ通知
メール、チャットでの問い合わせ
などの従来のマーケティングツールはもちろん、
店舗に来店した後、サイトで購入した後のフォローアップまで
スマホを駆使して情報を取得する「顧客の新しい購買行動」に、オンラインを活用して対応することはすべて「オンライン接客」の一部である
と捉えています。
この数か月の間で、オンライン接客について非常に可能性を感じたことが2つありました。
ひとつは、ZOOMなどのツールを使ったビデオ接客時、
顧客は自宅、ショップ側は店舗またはショールームにいるわけですが、
接客スタッフが顧客との対話の中で要望を引き出しながら、商品紹介をするだけでなく、
顧客側は自分の手持ち服を見せながら、これに合う服はありますか?というような聞き方ができる環境にいるという利点です。
つまり、顧客はわざわざ店舗にも行かなくてもよい、
ショップ側は店舗に来店できない顧客をお相手にできるという
時空的というか、物理的なメリットだけでなく、
どこまで開示するかは顧客次第ですが、顧客側も自宅にいるメリットとして、
クローゼットの中の服との相性について相談ができるわけです。
これは明らかに、店舗における接客にはない、
特に、顧客側のアドバンテージでしょう。
拙著「アパレルサバイバル」でも力説しましたが、
店舗やオンラインで品定めをする顧客の最大関心事は、
今、手に取っている、見ている服が、自分の手持ち服とコーディネートできるか?その上で着回しがどれだけ利くか?
ということでしょう。
店舗では、今シーズンのブランド側の重点販売商品や今シーズンの売れ筋商品を力説してショップ側が売りたい単品を提案して来ますが、
そんな接客の中で、顧客の本当の不安は、手持ち服と合わず、コーディネートがしづらい、着る機会が少ないなどで、結局は着なくなって、無駄になることによる「失敗」です。
顧客は手持ち服を具体的に見せることができれば、伝えられない歯がゆさや、「失敗」の不安から解放されますし、
店舗スタッフも決して、押し売りしているわけではないと思うのですが、
顧客のクローゼットの中身が具体的にわからないが故にできなかった、顧客のワードローブを思いやる接客が実現するわけです。
そんなビデオ接客での気づきが、今後、顧客との信頼関係を深め、顧客の手持ち服と相性のよい服を提案することが当たりまえの世界が実現
することを期待しています。
ふたつめは、リモート接客への人財活用の利点です。
つまり、ショップ側の接客スタッフは、ツールによっては、
どこにいても、都合にあわせて、短時間でも接客対応可能になる、という可能性です。
例えば、顧客からの問い合わせやちょっとした接客に対し、
これまでは、本社や店舗にいるスタッフが対応するのが常識でしたが、
事情によって、家庭に入られた、あるいは引っ越しにより遠方にいる経験者の方が、可能な曜日、時間帯だけ、在宅のまま対応することも可能になるということです。
メール対応やチャット対応、はそうでしょう。
この業務は、誰でも出来る業務ではなく、そのショップ、ブランドを熟知した接客対応のプロだった方だからこそ、の話です。
そんな人財=宝のような方々が、いろいろな制約で働けなくなってしまうのを
長年、いろいろ目にして来て、本当に残念だと思っていました。
しかし、オンライン接客アリ、リモート接客アリの時代に、これまで活用しきれなかった人財を、あらためて活かせる環境が整って来た予感がします。
もちろん、コールセンターのように、どこかに集めなければ、というセキュリティの問題が課題になるようですが、
これからはそういった問題を技術的に解決し、新しい働き方、新しい顧客対応の未来が広がることを期待しています。
当然のことながら、これから、すべてがオンラインになるとは思っていません。
しかし、多くの選択肢が生まれ、明るい可能性が広がっているのは事実ではないでしょうか?
執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
次のステージに向けての在庫最適化と人財育成を切り口にした業務再構築支援~ZOOMを使ったオンラインアドバイザーサービスも実施中。詳しくはこちら
【オススメ本】業界は溢れ始めた顧客のクローゼットのワードローブに寄り添う取り組みを、そんな姿勢から未来に向けて新しい信頼関係が生まれる時代であること提言しています。
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