国内ユニクロ事業2020年8月度 既存店売上前年比129.8%の驚異
コロナショックの4月を底に回復途上のファッション流通業界ですが、
6月以降の国内ユニクロ事業の売上には目を見張るものがあります。
6月は開業の反動と給付金の支給のおかげで多くのファッション専門店は一旦、前年を上回りましたが、7月、8月は8掛けくらいが平均でしょうか。
それに対し国内ユニクロ事業の既存店+Eコマースの前年比実績は
売上高 客数 客単価
6月 126.2% 113.9% 110.8%
7月 104.4% 102.5% 101.9%
8月 129.8% 126.0% 103.0%
特に、各社が天候を理由に苦戦した8月の実績は、
前年同月が決して落ち込んでいたわけでもなく(前年比109.9%と二けた増)、
コロナがなかった夏、しかも二桁増だった前年よりも飛躍的に売れているわけで・・・
確かに、巣ごもり需要は実用衣料、ベーシック、リラックスが得意なユニクロにとって追い風ではありますが、
年商8000億円規模のチェーンストアがたたき出す数字としては脅威と言わざるを得ません。
ところで、ここ数年、国内ユニクロ事業の8月と2月という半期末の月の既存店売上前年比、特に8月は軒並み伸びている傾向があります。
2月 8月
2018年8月期 105.1% 108.8%
2019年8月期 103.0% 109.9%
2020年8月期 100.8% 129.8%
これは、
・2月や8月は「ニッパチは売れない」言われるように需要が低く(一般的に年間月平均売上の6-7掛け程度)、売上分母が小さいこと
・競合各社はシーズン末、期末ということで、在庫を売り減らして、絞り込んでいる状態であること
そんな条件、環境の中で、在庫を十分に持っていたら・・・顧客の需要はユニクロに集中し、
売上高は大きく跳ねる可能性が高くなることが考えられます。
つまり、シーズン末でも売り逃しをしないことを前提に冬ものや夏ものを仕込んでいて
なおかつ、大量生産のため、次シーズンの春ものや秋もの在庫の頭出しが早期に出来上がって、スタンバっていれば、
気温がどっちに転んでも、2月、8月は確実に売上が浮上することになるわけで・・・
トレンド商品はともかく、ユニクロのようなベーシックであれば、ある程度在庫を残したとしても、
翌年にも十分売れる、あるいは、南半球に持っていけばよい?と考えるのかも知れません。
そんな、在庫が膨らんででも、需要を最後までしっかり刈り取る方針にあるのか、FR社の期末在庫は年々、重くなる傾向にあるように感じます。
さて、コロナショックによる売上高のマイナスに対して、下半期(3-8月)を3カ月で力業で9掛けまで戻した国内ユニクロ事業。
例年ですと、夏に利益を出しづらい、同社の第4四半期(6-8月)について、売上高に対して、どのような利益で着地するのか?公式発表を待ちたいと思います。
そして、年間利益の多くを稼ぐ同社の第1四半期(9-11月)が始まりましたが・・・
引き続き、ユニクロには追い風となるであろう、「巣ごもり需要」や「新しい生活様式」が、今期の業績にどう影響を及ぼすのかを、ウォッチして行きたいと思います。
関連エントリー‐世界アパレル専門店売上ランキング2019 トップ10
【お知らせ】WWDジャパン主催オンラインセミナー「『ユニクロ対ZARA』進化するSPAの研究」に登壇します。
お申込みはこちらから https://wwdjapan-business-seminar.peatix.com/
執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
次のステージに向けての在庫最適化と人財育成を切り口にした業務再構築支援~ZOOMを使ったオンラインアドバイザー・勉強会支援サービスも実施中。詳しくはこちら
【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARAの共通点とアプローチの違いを体系的にまとめ、多くのファッション専門店のブランディング、マーケティング、商品開発、販売戦略、ひいては経営理念の参考にしていただける内容に仕上げました。ユニクロが売上規模も世界2位になるのは時間の問題。ますます、両社の比較分析は世界のアパレルビジネスにとって参考になるでしょう。
「ユニクロ対ZARA」 2018年アップデート文庫本
いつもお読み頂きありがとうございます。
| Permalink | 0