島精機が進める商品企画のデジタルトランスフォーメーション、ヤーンバンク
11月23日の日経MJにニット編み機大手の島精機が9月に始めた「ヤーンバンク」に関する記事が掲載されていました。
記事によれば、このサイトに糸メーカーが販売するセーターおよびニットアイテム用の糸の情報を登録しておき、ユーザーであるアパレルメーカーのニットアイテムの企画者は、オンライン上で探している糸を検索、絞り込みの上、登録情報が閲覧出来、パソコン上でバーチャルでデザイン中の商品企画に置換えたり、サンプル作成シミュレーションをしたり、気に入った糸があれば、メーカーに糸見本の取り寄せの連絡ができるというマッチングサイトのしくみです。
糸メーカーは無駄になるかも知れないことをわかっていながら、営業用に現物サンプル台帳を大量につくらなくてもよいですし、ユーザー側はわざわざ複数メーカーの大量のサンプル台帳にひと通り目を通さなくても、探している糸に効率よくたどり着けるメリットがあるようです。
10月中旬段階で日本、中国など31社の糸メーカーが参加した、とのことです
(参考:国際展示会に出展する糸メーカーは150~200社あるとのこと)
この「ヤーンバンク」の取り組みは、商品企画の効率化、営業の効率化が図れ、時間や資材の無駄が減る、今後のサービスの広がりへの期待を込めて、ファッション商品生産のデジタル化の良い取り組みだな、と思いました。
その昔、筆者がアパレル生産にたずわわっていたころは、布帛(織物)からニットまで、たくさんの生地や糸のサンプル台帳に囲まれていたのを思い出します。素材メーカーの営業の方々がスーツケース2つくらい持って営業に回っていた姿も思い出されます。
シーズンが終わって、何年か経って、倉庫整理の時に、上司から処分しろ、と言われて・・・頂いた台帳も、とても綺麗な台帳もあるので、もったいないな、と思ったものでした。
話を元に戻して・・・
将来的には、アパレルメーカーのデザイナーさんやマーチャンダイザーさんたちが、バーチャルでサンプルを確認した上で、クラウドでプログラミングが行われ、産地でそのままサンプル作成までしていただけると、いろいろと話が早いことも多いのではないかと思いました。そこまでできれば、量産しなくても、オンライン注文のオーダー生産も出来てしまうかも知れませんね。(以上、勝手な妄想)
記事には、「糸の世界初のプラットフォームになる」、とあります。
布帛(織物)の生地の世界では、すでに台湾を拠点にした、世界の生地メーカーと世界の商品企画者をオンラインで結びつける、こんなクラウドサービスを提供している会社もあるようです。
商品企画開発の現場にも、3D CAD含め、IT企業のソリューションが入り込んで来ているのをよく耳にします。
ものづくりには、人が確認しなければいけない、アナログの部分も欠かせませんが・・・
確かにデジタルに置き換えれば省ける部分もたくさんあるので、効率がよく、無駄のない、そして、無駄な在庫をつくらない取り組みが業界の中で進むことを楽しみにしています。
いつもお読み頂きありがとうございます。
執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
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