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March 29, 2021

ZARA(ザラ)のインディテックス2020年度決算。大幅減収減益も、全世界でECと店舗の在庫一元化が完了し、盤石体制に。

Zara-onlineZARAを展開するインディテックスグループの2020年1月期決算報告 FY2020 RESULTS

に目を通しました。

同社の決算期は2月~翌1月期なので、通期(全四半期)すべてがパンデミックの直撃を受けた1年でした。

但し、営業赤字だったのは、1Q(2-4月期)のみで

通年では、

売上高 20,402百万ユーロ(日本円換算2兆5918億円)と前年比72.9%(27.1%減)

粗利率 は前年55.9%→55.8%とほぼ変わらず

販売管理費 は 前年比83.2%(16.8%減)に抑え、

営業利益 1,504百万ユーロ(日本円換算1,914億円)前年比31.5%(68.5%減)

営業利益率は前年16.9%→7.4%と下がりましたが

営業黒字で着地しました。

インディテックス社の決算発表により、大手3社が出揃い、

2020年度の世界アパレルチェーン売上高ランキングのトップ3は

1位 インディテックス(ZARA)  1月期  2兆5,918億円(1,914億円 営業利益率7.4%)
2位 H&M           11月期  2兆3,752億円(227億円 同1%)
3位 ファーストテイリング    8月期  2兆0,088億円(1493億円 同7.4%)

に確定しました。

2019年度のランキング

世界アパレル専門店売上ランキング2019 トップ10

とトップ3の順位の入れ替わりはありません。

同社の期末店舗数は

7469店舗から→6829店 と640店舗の純減です。

内訳は閉店 751店 新店 111店 96店改装(うち45店が大型化)です。

これは慌てて閉めた、というより、中長期計画の計画通り。

在庫に関しては、期末在庫は前年よりも9%少なく、

4半期ごとに見ても前年よりも10%少ない在庫水準で回していたようです。

 

今回の同社の決算の最大のトピックはECの大幅売上拡大と世界全店舗のオムニチャネル体制の完成でしょうか。

EC売上高は77%増の6,600百万ユーロ(日本円換算 8,384億円)

EC売上比率は32.3%と前年の13.2%から急増です。

このEC売上の拡大に寄与したのが、

同社のオムニチャネル施策(Fully integrated store and online platform)のコアにある

SINT(Single Inventory Integration)というコンセプトです。

要は、各国のEC向け在庫と店舗のストックルーム(バックヤード)の在庫を一元化し・・・店舗のストックルーム在庫をEC需要の引き当て対象にできるようにした、という話です。

これをリアルタイムに可能にしたのが、RFIDの全店導入完了です。

このRFIDも、自社開発。

ほとんどの企業が使っているRFIDは、主に、値札や洗濯絵表示に埋め込まれている、安価で使い捨てのチップですが、インディテックス社の場合は、全商品に、スペインの倉庫で取り付けられたセキュリティタグの中に埋め込まれています。

丈夫で高性能、更に、回収することで、何回も再利用ができるという優れものです。(高性能、1回あたりのコスト減、リサイクルで環境にも優しい)

使えるものは、再利用をするという同社のポリシーはこんな最先端のテクノロジーにも活かされているわけですね。

話をSINT(在庫一元化)に戻しますが、

同社によれば、これが、売上高比率32.3%になったEC売上高全体の中の12%分に寄与したとのことです。

通年COVID19の影響を受けても、まだ、世界一の売上規模と利益を確保したインディテックス社。

今後、同じような、ロックダウンで店舗を閉めなければならない事態になっても、商売を継続できる体制が整いました。

さまざまな変化に対して、柔軟な対応ができる、

という世界最強クラスのオペレーション・エクセレンスを見せつけた決算と言ってもよいのではないでしょうか?

近日中に世界アパレル専門店売上高ランキング2020年版も更新したいと思います。

お楽しみに。

最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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March 22, 2021

在庫情報を可視化すれば、商品チーム、販売チームが自走組織に変わる

Ministry-of-supply-pos何度かオンラインセミナーに登壇させていただいている、在庫問題を解決するクラウドサービスを提供する「フルカイテン」さんのシステム導入事例セミナーを視聴させていただく機会がありました。

3月11日のその回は通販大手フェリシモグループでhaco!を運営する株式会社cd.社の葛西社長が
同社のシステムを導入して半年で会社の在庫への取り組み姿勢がどう何か変わったのかを語る内容でした。

システム導入前までは、担当者が商品の売上・在庫判定データをExcelで加工するのに
朝から夕方まで、ほぼ丸1日かけていた作業が・・・

導入後は、データ出力が1時間程度でできるようになり、営業時間の多くが、資料の作成業務ではなく、判断とアクションを中心に時間が割けるようになった、という話から始まりました。

帳票づくりに半日以上かけている企業さんって結構あると思います。

同社によれば、
以前は当シーズンに仕入れた商品在庫こそ見ていたものの、

前シーズン以前に仕入れて売れ残った在庫は、わざわざ出力努力をしなければ、見ることができず、いわゆる塩漬けになっていたそうです。

これに対して、全在庫データが稼働状況に応じて分類された上で、販売と在庫に関わっている担当者たちに見えるようになって、
何が変わったか?というと・・・

「奥にしまってあったものが手前に出て来た」イメージで

そうすると、担当者たちに、何とかこれも販売できないか、在庫を減らせないか、という気持ちが芽生え始め、

今シーズンでも十分に着ることができる旧在庫商品を積極的にコーディネート提案に使うようになったり、

また、そんな思いと活動が、お客様への商品出荷を担っている倉庫で働く方々にも伝わり、

倉庫スタッフの発案で、倉庫発信で売れ残り在庫を売り切るためのユーザー向けライブコマース(オンラインの即売会)が開催されるようになったとのことです。

その結果、会社としては、仕入れを減らした年であったにもかかわらず・・・売上は減らず、在庫がみるみる減って行ったそうです。

今では、仕入担当者の在庫に対する意識が高まり・・・

毎年、売り逃しをしないように、ただ、たくさん仕入れるという考えたではなく、
必要な仕入れのありかたを考えるようになった。

とのことです。

haco!の葛西社長はシステムを導入すれば問題が解決する、という話ではなく、

●システムには面倒な計算をしておいてもらって、
●人がそのデータを活用してどんな判断をするか?

の役割分担だ、と話を結びます。

そして、在庫を売り切って、増えた現預金を今後、何に投じるか?に触れ、

経営陣の頭は損益計算書(P/L)から貸借対照表(B/S)に移り・・・

お客様のための場をつくり、場を改善するためのシステム投資(無形固定資産)に使いたい、と意気込んでおられるようです。

これからの時代、在庫をしっかりキャッシュに換え、システム投資を行う企業が増えることを期待しています。

実際、多くの世界の大手ファッション流通企業のB/Sを分析していると、そういうビジネストレンドが起きていることに気づきます。

見えないものは、行動に移せない。

状況が手に取るように可視化すれば、現場は工夫を始め、現状の改善が進み始めるもの。

というのは、筆者も多くの現場でビフォア/アフターを体感してきたことです。

少し、筆者の昔話をさせて頂くと・・・

筆者のアパレル小売業でのキャリアの始まりは、服飾雑貨や靴を扱う雑貨バイヤーでしたが、

着任当初は、いきなり、前任者が残した靴の過剰在庫に苦しめられ、新規仕入を全くすることができない「買えないバイヤー」の苦労から始まりました。

そんな状況の中で、週末には全店を巡回して、実際に自ら販売をしながら各店の在庫状況を確認し、

時間をかけて、各店から全店の全商品のサイズ別在庫状況が確認できるようにデータの整備を行ったところ・・・

その後は、各店のスタッフたちがお取り寄せ(客注)を活発化させ、在庫が売上に変わり、過剰在庫がみるみる減り始めたものでした。

要は、各店は在庫を減らすことに協力してくれなかったのではなく、

お客様は欲しがっていても、在庫がどこにどれだけあるかが、わからないため、やみくもに在庫照会の電話をかける訳にもいかず、取り寄せ販売ができなかっただけだったのです。

そんな過去の経験も思い出しながら、haco!さんの事例を聴いていました。

会社の在庫のことを心配しない従業員はいないでしょう。

そして、在庫量やその在処(ありか)が手軽にわかるような環境に置かれれば・・・

社員の中から、考え始め、行動に移すスタッフが出て来るものです。

これは、筆者のその後の事業会社勤務時代でも、また、

独立後に、お手伝いさせていただいた多くのコンサル現場でも・・・

在庫状況の実態の現場担当者への可視化が、変革のきっかけになることを感じて来たものでした。

これから、更に、オムニチャネル時代になって・・・

ECだけでなく、店舗、倉庫を含め、全在庫のデータが可視化され、
在庫のステイタスが、販売チーム全員に手に取るようにわかるようになると・・・

まずは、チーム全員がお客様のお買い物を手伝う情報として在庫情報を活用し始め、続いて過剰在庫の消化方法も考え始める。

オムニチャネル化(販売と在庫のデジタルシフト)の本当のメリットは、

ECという新しい販路ではなく、そんな環境が構築されることではないでしょうか?

業界全体がそんな方法に向かってゆくビジョンを持ち、そんな環境づくりが行われることを、引き続き応援して行きたいと思います。

参考:今回触れさせて頂いた、フルカイテンさんとhaco!さんのオンラインセミナーの内容は、レポートとして、こちらからダウンロードしてお読みいただけます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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March 15, 2021

ファッション&ビューティー市場の変化を見極め、事業ドメイン転換で勝ち残る、米 L Brands(エル・ブランズ)

Bbwアメリカでヴィクトリアズ・シークレットを展開する米Lブランズ社の2021年1月期決算速報が発表されたので、目を通しました。

売上高  1兆2403億円  (前年比92%)
営業利益 1,653億円  (前年比611%)
営業利益率 13.3%
($=104円換算)

コロナ禍のアメリカ市場中心の同社が減収ながら、増益という恐るべき数字をたたき出しました。

実は、前年の2020年1月期、パンデミック前にヴィクトリアズ・シークレットのダイナミックなリストラを敢行して、大幅減益としていたので、リストラを経てのV字回復なわけですが、それにしても、この規模でのこの利益は素晴らしいです。

その理由を探ってみましょう。

まず、主力業態のヴィクトリアズ・シークレットは全体の2割にあたる248店舗の大量閉店および店舗のFC移管で同事業自体の売上高は前年比72%と大幅減。

店舗とオンラインの内訳は、店舗売上高が前年比55%、残った既存店は前年比増収、そして、オンライン売上高は131%と伸びました。

一方、もう一つの主力業態である、ヘルス&ビューティー部門のバス&ボディワークスの店舗売上高は前年並み(100%)、オンライン売上が209%増と倍増し、事業全体としては前比120%の大躍進です。

この結果、ヴィクトリアズシークレットとバス&ボディワークスの2つの事業売上規模が入れ替わり、同時に、見事な復活を果たしたというわけです。
              2019年度 → 2020年度
バス&ボディーワークス      42%  → 54%
ヴィクトリアズ・シークレット   58%  → 46 %

また、この1年で、会社全体のオンライン売上比率は21%から35%となりました。

 

同社は、THE LIMITED STORE(リミテッド)やEXPRESS(エクスプレス)といったレディースウエア業態で、GAP社よりも先にSPA(アパレル製造小売業)ビジネスモデルで全米一位に登りつめたアパレル企業です。

店頭でのテスト販売や生産地からの空輸を駆使した、独自の高速サプライチェーンやQR対応も十八番です。

ヘンリ・ベンデル(今回のリストラで廃業)やアバクロンビー&フィッチ(分社化、別会社)も同社が買収後に規模を拡大したことで知られています。

同社は、2000年にH&Mがアメリカに上陸し、フォーエバー21と競合しながら、全米がファストファッションの渦に飲み込まれると、

2007年に、レッドオーシャン市場になったアパレル事業に見切りをつけて売却し、

一方、ランジェリー&ホームファッションのヴィクトリアズシークレットやピンクに事業の軸足を移し、ファストファッションと競合をせずに営業利益率の高い高収益企業として、

売上規模もGAPに続く全米2位、グローバルでも4ー5位クラスのファッションチェーンとしての企業規模もキープします。

2016年頃から、メイン業態であるヴィクトリアズ・シークレットが時代に合わなくなって業績失速するや、

その事業に執着することなく、ヘルス&ビューティー部門のバス&ボディワークスに軸足を移し、この度、何と、コロナ禍の最中にも関わらず、事業転換を完了させてしまうという、実に見事な変身を成し遂げました。

アパレルからランジェリー&ホームウエアへ、そしてヘルス&ビューティーへ

女性を取り巻く、ファッション&ビューティーマーケットで既存ビジネスに執着せず、顧客にとって、付加価値のあるところに機を見て乗り換え・・・得意のサプライチェーンマネジメントを活かしながら、応用して行く、創業者のレスリー・ウェクスナー氏のビジネスマンとしての商才には脱帽せざるを得ません。

市場の変化に対して、ここまで先を見て事業転換をできる経営者さんは、世界を見渡しても、そうはいらっしゃらないでしょう。

日本を見渡すと、マッシュホールディングスの近藤社長の着眼点がそれに近いかも知れません。

同グループは、常に、顧客のライフスタイルを中心に考え、上手にアパレル→ホームウエア→ヘルス&ビューティと多角的な事業拡大を果たしていらっしゃいますね。

Lブランズ社は日本ではあまり知られていないファッション&ビューティ系チェーンですが、その変遷をたどると、世界のファッション系チェーン企業が見習うべきことはたくさんありそうです。

是非、過去から今後の動向をお見逃しなく。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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March 08, 2021

ユニクロが4月からの税込総額表示の義務化にあたり、実質値下げ。ユニクロらしい価格戦略で更なる市場シェアの奪取を狙う。

Uniqlo-tokyo

ユニクロが4月からの税込み価格総額表示義務化にあたり、これまでの税抜き価格を税込み価格とする、実質値下げ(9%程度)をすることを発表しました。

3月4日の日経新聞朝刊にも全面広告が掲載されていました。

この4月は消費税が上がるわけではありませんが、総額表示義務化で、多くの小売業が価格戦略の姿勢を示す転機になるだろうと思っておりましたが、

関連エントリー‐コロナショック、消費税総額表示であらためて低価格が進むのか?今一度、価格政策について考えよう。

日本のアパレル最大手であるユニクロが、最も「ユニクロらしい価格戦略」を取って来たことに納得すると共に、プライスリーダーであるユニクロの市場シェアはますます高まるだろう、と確信しました。

ユニクロの躍進の歴史は、「ユニクロプライス」と言っても過言ではないプライスポイント(最多価格帯)=1900円(イチキュー)への集中の価格戦略をなくしては語れません。

その昔、多くのジーンズカジュアルチェーンのトップスのプライスが2900円中心、特価で1900円だったころ(2000年代前半まででしょうか)、


1900円のフリースを筆頭に、カジュアルウエアが市場最低価格と言える1900円で買える店という「価格ポジショニング」がユニクロの集客と知名度を高めたことは間違いありません。

イチキューと言えば、アパレル市場では、ある意味、ユニクロの代名詞となり・・・

その後、カジュアルウエア市場でイチキューが多く見られるようになり、ユニクロは低価格ベーシック衣料の品質と価格の常識を変えることになります。

1900円(イチキュー)も、度重なる増税を経て、現在では、1990円(イチキュッキュウ)になりましたが・・・

ユニクロと同様のキュッキュウプライスポイント戦略を取る姉妹ブランドのGU(ジーユー)も、そのブレイクスルーに990円ジーンズなくしては、今のポジショニングはなかったことでしょう。

 

価格表示が変わる時の、店頭価格を見た時の顧客心理は敏感で・・・
わかりやすい価格をつけたところが支持され、売上を落とさず、業績を維持したというのは、

過去数回の増税時に共通することではないでしょうか?

独走が続くユニクロがあらためてアピールするキュッキュウ価格。

日本市場におけるシェアはますます高まりそうですね。

 

その一方で、懸念されるのは、同社の利益の確保のチャレンジです。

売上高については、売上数量を10%伸ばせば、値下げ分の売上高は取り戻せますが・・・粗利高はそう簡単な話ではありません。

売上高から粗利高を引いた売上原価は仕入原価と値下げ額の合算になりますが・・・

もし、売上原価がそのままで、実質9%程度の値下げをしたら、ストレートに同額の粗利高を直撃するので、
仕入原価を下げたり、在庫コントロールをして、値下げ抑制をしなければ、それまでの粗利高は確保できません。

消費税を飲み込んだ実質値下げによる、売上高維持のハードルが、売上数量10%増程度が必要なのに対して、

粗利高に関しては、ユニクロの従来の原価(50%程度)のままだとすると、そのハードルは25%増相当まで上がります。

仕入原価は商社など中間業者を介さない、いわゆる直貿(原産国企業との直接決済)比率を増やして原資にする模様。

そして、それだけではなく、緻密な値下げコントロールが要求されそうです。

あるいは、粗利高はさほど伸ばせなくても、販売管理費を圧縮して営業利益を残すという手もあるでしょう。 

ファストリの20年8月期決算では、

確かに、直貿により仕入原価を抑え(値入を高め)、なおかつ値下げコントロールにより粗利を高め、更に販管費(特に人件費)のコントロールが上手く行ったようなので、同社としては、自信を深めているようです。

今後、実質値下げをするユニクロが、企業としてどう利益をコントロールするのかに注目しておきましょう。

最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARA。共に価格政策にプライスポイント戦略を取りますが、その違いは?両社の比較分析は世界のアパレルビジネスにとって参考になります。

 「ユニクロ対ZARA」 2018年アップデート文庫本

 

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March 03, 2021

3月25日(木)開催 オンラインセミナー~3つの視点を共有すれば、過剰在庫が粗利とキャッシュに換わる!『ファッションストアの在庫コントロールのための組織と業務』

B2【こちらのセミナーはお申込みを締め切りました。次回は5月20日の予定です。】


3月25日(木)開催の、アパレル・靴・服飾雑貨のファッションストアやEC事業を運営されている経営者様や事業責任者様向けのオンラインセミナーの参加申し込み受付中です。

これまで、年商30億円から100億円規模のファッションストアにフォーカスして、20社以上の在庫コントロールのための組織開発プロジェクトに関与し、事業成長の壁の突破、粗利高の向上、最終消化率向上と共に、自走する人財育成を支援して来た講師が

仕入れた在庫を最大限の粗利とキャッシュに換える

在庫コントロールのための組織づくりと業務連携のポイント、そして、実践に向けてのカギをお話しします。

-セミナー詳細-

【タイトル】 

3つの視点を共有すれば、過剰在庫が粗利とキャッシュに換わる!
「ファッションストアの在庫コントロールのための組織と業務」

【開催日時】 

2021年03月25日(木)15:00~18:00(14:45受付開始)

【場  所】 

オンライン(ZOOM)での開催となります

【講  師】 

齊藤孝浩(タカ サイトウ)ディマンドワークス代表 このブログの筆者 プロフィール
       

【主な内容】 

〇 規模の拡大と共に過剰在庫を抱えてしまう理由
〇 ファッション小売業の在庫最適化とは?
〇 シーズン商品の商品管理・販売管理の原則
〇 販売部門が同じ目標に向かって行動するための情報共有ポイント
〇 シーズン商品を売り切るための鉄則 など

【参 加 費】 

お一人 22,000円(消費税込)お振込みまたはクレジットカード決済

【参加特典】

1)実務にも活用できる図表が豊富なセミナースライド
2)在庫コントロールのための組織と業務の進捗度チェックリスト50
3)無料オンライン個別相談:セミナーで気になった課題について、後日、自社に照らし合わせた時の問題点を明らかにするための「オンライン個別相談」(1社様、1回、1時間程度)通常、講師が有料で行うサービスを無料でお受け頂けます。
  
【定  員】 
先着15名様(定員になり次第締め切りとさせていただきます)【お申込み締切ました】


【参加対象の方】
在庫を売り切る組織づくりを目指すファッション専門店チェーンやEC事業者の経営者、経営幹部、事業部長の方々

当セミナーはウェビナー形式ではなく、講義の合間にワークやディスカッションも行い、参加者の方々とも意見交換ができる環境を設けて双方向型で進めるものです。

■次回のセミナーは5月20日の予定です。詳細をご希望の方はこちらにご登録ください。
→ https://17auto.biz/dwks/registp.php?pid=15

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March 01, 2021

アパレル製品のサーキュラーエコノミーの現状と課題

Circular-economy以前、筆者もオフプライスストアに関するセッションで登壇させていただいた、業界の勉強会組織、FashionStudiesさんからご案内を頂き、

 以前の投稿はこちらーオフプライスストアは日本で拡大するのか?

さすてなぶるファッション® オンライン ♯02
衣服リサイクル 基礎編 #02 リサイクル素材をどうマーケットに浸透させていくか 

の公開動画を視聴させていただきました。(リンク先に3本の動画があります)

 

内容は伊藤忠商事が取り組む、回収した古着、裁断くず、残反を新しいアパレル製品・繊維製品にリサイクルするプロジェクト「RENU」についてと、そのプロジェクトに参加するH&Mの取り組みについて、そして、繊維素材のリサイクルの現在と、今後の課題についてでした。

このRENUプロジェクトについて、筆者が理解したところを簡単にまとめると、

・従来から、ペットボトルなどの非繊維原料を繊維素材にリサイクルして、アパレル製品化する試みはあったが、RENUは不要繊維製品から新しい繊維素材やアパレル製品にリサイクルする試みである。

・まずは、アパレル素材で最も使われている原料のひとつである、ポリエステル素材から取り組んでいる。

・主に、中国で回収した古着、裁断くず、残反、を粉砕、分解して、薬品を使って、精度の高いポリエステル原料(チップ)に再生し、それをもとに、ベトナムなど他国も含めてアジアでポリエステル生地を製造し、アパレルおよびスポーツ衣料とする。

・従来のペットボトル原料だと、原色を抜くのに手間がかかったり、希望の色を再現する上で制限があるが、当プロジェクトはバージンポリエステル原料(従来のポリエステル原料)と同じ発色が可能になる。

・バージンポリエステル製造には石油が必要となるが、当プロジェクトでは、すでにポリエステルになっているものが原料のため、石油を使う必要がない。

・従来のペットボトルからのアパレル製品は、リサイクルは1回のみ、その後は、廃棄の対象にならざるを得ないが、このプロジェクト(回収→リサイクル→製品化→使用後→回収)の流れに乗せれば、永遠に繊維製品を繊維製品に再生できる。

とのことです。

実際、日本でも、H&M、GU、グローバルワーク、デサントなどがRENUの素材を使って、アパレルへの製品化と販売を行っているようです。

この、繊維製品から繊維製品のリサイクルの課題としては、

ひとつは、コストです。伊藤忠の方も通常のポリエステル素材よりは、生地値は高め、とおっしゃっています。

これは、現在、業界の中でも、議論が重ねられていますが、

大手、特に上場企業はESG、エンドユーザーへのアピールも含めて、サステナブルなモノづくりが喫緊の課題になっているので・・・多少、コストが高くても、企業姿勢としては、取り組むかも知れませんが、

一方、エンドユーザーである消費者は、ファッション商品は、おしゃれであること、リーズナブル価格であることが前提にありますので・・・

理解あるエンドユーザーが増えているとは言え、価格転嫁されたら、当然、販売(購入)に支障が出ますし、また、高くて、売れ残り在庫をたくさん残してしまう原因になってしまっては、もともこもありません。

伊藤忠の方は、「エンドユーザーがRENUだから買ったのではなく、たまたま、購入を決めた商品の素材がRENUだった」というビジョンを理想としています。

もうひとつは、古着の回収から再生素材にするための国際規制です。

今回のセッションの質疑応答部分で触れていますが、バーゼル条約という国際協定があって、廃棄物のひとつである古着の国際間移動は法律で制限されています。

古着や裁断くずや残反を回収した国または地域で、せめて、繊維原料、ポリエステルの場合、チップにまでする加工を施した上でないと、海外に持ち出せないということになります。(日本の古着を中国に持って行って加工はNGと理解。)

つまり、回収とリサイクルテクノロジーは同じ国または、経済圏の中で完結しなければならない、ということになります。

整理すると、

1)現状は割高となるリサイクル後の生地と製品コスト

2)回収とリサイクル素材(原料)にするまでの技術および加工を現地で完結させなければならないこと

この2つが、今回のRENUに限らず、繊維製品のサーキュラーエコノミー型リサイクルの世界的な拡大に向けての課題になるようです。

以上を理解した上で、あらためて、以前、ご紹介した、インディテックス(ZARA)のサーキュラーエコノミーの取り組みがこの2点を上手く、解決している試みであることに気が付きました。

ファッション業界のサーキュラーエコノミーの取り組み


つまり、スペイン国内(店頭と街頭)で古着を回収したり、裁断工場を持って、多くの製品の裁断をスペインおよび近隣の自社工場で行っているインディテックスは、自ら、原料となる古着や自社裁断工場から出る裁断くずや残反を供給することができます。

これらを原料として、リサイクル素材を製造するレンチング社に供給できるため、出来上がった再生素材は安価に買い戻せるのではないか?(あくまでも、筆者の憶測です。)

次に、回収、リサイクル素材製造までがEU圏内(スペインとオーストリア)で完結するので、バーゼル条約には抵触しない。

それゆえに、買い上げたリサイクル素材を使って、つくられたZARAの製品コレクション「JOIN LIFE」が従来のZARAの商品価格の変わらない価格で販売できる所以なのではないか、ということです。

サーキュラーエコノミー(循環型経済)はアパレル業界が未来に向けて避けて通れない課題。

伊藤忠は再生ポリエステルに続いて、再生ナイロンのアクアフィルとも業務提携をしたというニュースが入って来ました。

今後、日本においても、繊維再生テクノロジーが開発され、日本で回収された古着から始まるサーキュラーエコノミーが実現することを期待しています。

繊維素材・繊維製品のリサイクルに関しての現状を知る上での基礎知識が得られ、問題意識も整理できますので、関心のある方は上記リンク先のfashionstudiesさんの動画の視聴をおススメします。

今後もこのブログでは、サーキュラーエコノミーのテーマにも関心をもって取り上げて行きたいと思います。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【オススメ本】 10年後のアパレル業界でのサバイバルのカギは、服のライフサイクルを意識し、顧客の持続可能なクローゼットのワードローブの循環をお手伝いすること。大量生産、過剰供給時代を超えて、新しい時代の関係構築がテーマです。

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