ZARA(ザラ)のインディテックス2020年度決算。大幅減収減益も、全世界でECと店舗の在庫一元化が完了し、盤石体制に。
ZARAを展開するインディテックスグループの2020年1月期決算報告 FY2020 RESULTS
に目を通しました。
同社の決算期は2月~翌1月期なので、通期(全四半期)すべてがパンデミックの直撃を受けた1年でした。
但し、営業赤字だったのは、1Q(2-4月期)のみで
通年では、
売上高 20,402百万ユーロ(日本円換算2兆5918億円)と前年比72.9%(27.1%減)
粗利率 は前年55.9%→55.8%とほぼ変わらず
販売管理費 は 前年比83.2%(16.8%減)に抑え、
営業利益 1,504百万ユーロ(日本円換算1,914億円)前年比31.5%(68.5%減)
営業利益率は前年16.9%→7.4%と下がりましたが
営業黒字で着地しました。
インディテックス社の決算発表により、大手3社が出揃い、
2020年度の世界アパレルチェーン売上高ランキングのトップ3は
1位 インディテックス(ZARA) 1月期 2兆5,918億円(1,914億円 営業利益率7.4%)
2位 H&M 11月期 2兆3,752億円(227億円 同1%)
3位 ファーストテイリング 8月期 2兆0,088億円(1493億円 同7.4%)
に確定しました。
2019年度のランキング
とトップ3の順位の入れ替わりはありません。
同社の期末店舗数は
7469店舗から→6829店 と640店舗の純減です。
内訳は閉店 751店 新店 111店 96店改装(うち45店が大型化)です。
これは慌てて閉めた、というより、中長期計画の計画通り。
在庫に関しては、期末在庫は前年よりも9%少なく、
4半期ごとに見ても前年よりも10%少ない在庫水準で回していたようです。
今回の同社の決算の最大のトピックはECの大幅売上拡大と世界全店舗のオムニチャネル体制の完成でしょうか。
EC売上高は77%増の6,600百万ユーロ(日本円換算 8,384億円)
EC売上比率は32.3%と前年の13.2%から急増です。
このEC売上の拡大に寄与したのが、
同社のオムニチャネル施策(Fully integrated store and online platform)のコアにある
SINT(Single Inventory Integration)というコンセプトです。
要は、各国のEC向け在庫と店舗のストックルーム(バックヤード)の在庫を一元化し・・・店舗のストックルーム在庫をEC需要の引き当て対象にできるようにした、という話です。
これをリアルタイムに可能にしたのが、RFIDの全店導入完了です。
このRFIDも、自社開発。
ほとんどの企業が使っているRFIDは、主に、値札や洗濯絵表示に埋め込まれている、安価で使い捨てのチップですが、インディテックス社の場合は、全商品に、スペインの倉庫で取り付けられたセキュリティタグの中に埋め込まれています。
丈夫で高性能、更に、回収することで、何回も再利用ができるという優れものです。(高性能、1回あたりのコスト減、リサイクルで環境にも優しい)
使えるものは、再利用をするという同社のポリシーはこんな最先端のテクノロジーにも活かされているわけですね。
話をSINT(在庫一元化)に戻しますが、
同社によれば、これが、売上高比率32.3%になったEC売上高全体の中の12%分に寄与したとのことです。
通年COVID19の影響を受けても、まだ、世界一の売上規模と利益を確保したインディテックス社。
今後、同じような、ロックダウンで店舗を閉めなければならない事態になっても、商売を継続できる体制が整いました。
さまざまな変化に対して、柔軟な対応ができる、
という世界最強クラスのオペレーション・エクセレンスを見せつけた決算と言ってもよいのではないでしょうか?
近日中に世界アパレル専門店売上高ランキング2020年版も更新したいと思います。
お楽しみに。
最後までお読み頂きありがとうございます。
執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
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